第72話 プロキシア共和国へ

はいそんな訳で。


俺達、秘密結社アウロラ団は、プロキシア共和国に出向いて「弁明」を行うことになった。


いや、一応は「交渉」らしいが、プロキシア共和国側はそう思ってはいないってことだ。それくらいに舐められている。


なので殺しに行く。




「実際、別に、多少侮られたところで怒ったりはしないんだよ。そんな小さなことでイライラしていたら、フランちゃんは既に百回は死んでなきゃおかしいだろ?」


移動中のキャンピングカー(作った)の中で、俺は、ハンドルを握りながらそう言った。


「ま、まあ、それはそうよね。私も、なんだかんだ言って、アンタには結構失礼なことを言ってるもの」


助手席に座るフランシスはそれに頷く。


……「うわああああ!!!」「助けてえええー!!!」


「別に怒ってない。怒ってないけど、目の前でそうも調子に乗られると、殺したくなる」


「そこが分からないんだけど……?!」


「目の前で珍妙な格好をした道化師が、こちらに向かって尻を振っていたら、蹴り飛ばしたくなるだろう?そんな感じだ」


「例えの意味は分かるけれど、外国の挑発をそう捉えるのはおかしいんじゃ?」


そうかね?


「俺からすれば、殴られ待ちとしか見えないって話だ。なので殴る。死ぬまでな」


「うう……。本当に、流民の大量発生はさせないのよね?!大丈夫?約束できる?!」


「おっ、フランちゃんとのお約束か」


「そう!そうよ!フランちゃんとのお約束!」


……「死ぬうーーー!!!」「揺れる!!!」


必死だなあ。


まあ俺としても、流民が大量に発生して、物売るってレベルじゃない状態になれば多少は困ると言えばそうなんだよな。


中世の土人共にハイクラスな現代人生活を見せつけて喧嘩を売りたいのであって、土人共が土人以下の生活をし始めたら若干面白くない。


それに、この世界にも知識人や高技能者はいるので、そういう奴らの支援をしたい気持ちもまあ多少はある。


あまりにも土人過ぎるとそれはそれで引くしな。


俺は適度に他人を見下して煽って破滅するところを見たいだけであって、本気で骨肉の争いを続けるマジモンの餓鬼道修羅道を見たい訳ではない。色々あるのだ、俺にも……。


……「ひいいい!!!」「あああああ!!!」


「……って言うか、さっきから外がうるさいんだけど、何?」


「ん、ああ……。ビルトリア王国の使節団なんだが、『キャンピングカーには追いつけない』とか『早過ぎる到着は先方に失礼』とかごちゃごちゃうるさくてな。かと言って、俺の女……」


チラッとアランの方を見る。


凄い良い笑顔だ……。


俺に女扱いされて喜んでいるらしい。まあ美少年だから良いとしましょう。


「げふん、俺の女達が乗っているこの車に、薄汚いおっさん共を乗せるのは嫌だったんでな。奴らの馬車をキャンピングカーの後ろに繋げて、牽引してやってるんだ」


「……バカーーー!!!!」


何やってんのよアンタは?!とキレながらキャンピングカーを止めようとするフランちゃん。


無駄だよ、この車は俺の止まれという声にしか反応しないのだ。




そんなこんなで、旅程を十分の一に短縮し、プロキシア共和国に到着。


プロキシア共和国は商人達の議会によって運営されている共和国で、その首都であるプロキシアの街は港町だった。


比較的寒い地方であるビルトリアとは異なり、カモメの声が聞こえ、生暖かい海風が頬を撫でてくるような土地だった。


海の香りと、そして照りつく太陽。


しかし南国ってほどでもないな。


地球で例えるなら……、ナポリとかか?


ブイヤベースなんかが美味しそうな土地だった。


「ブイヤベースはナポリじゃなくてマルセイユだろ?」


「えっ何の話?!」


俺はフランちゃんを無視して、キャンピングカーの後ろにくくりつけてある馬車から、ビルトリア王国の使節団を取り出した。


魔法を走らせて水を生み出し、へばっている馬鹿共にぶっかける。


「ひいっ、ひいっ?!」「やっ、やめ、やめろ!」「ゔあっ?!」


使節は……、十二人か。


貴族二人と、その護衛と世話役だな。


本当なら百人程度の護衛兵や世話役がいたのだが、面倒臭いので詰め込めるだけ馬車に詰めてあとは疾走した。


「お、おまっ、お前!お前ーーーッ!!!」


キレ散らかしている使節団代表を名乗るなんちゃら伯爵。


「黙れ」


「へぶぁ?!」


こいつを魔法の衝撃波で殴り、ビルトリア王国の証明書類を取り上げた。


そしてそれを、俺は門衛に提出。


「な、何事だ?!」


「ビルトリアからの使節団だ。これが証明書類」


「い、いや、この男……この貴族は、何故殴られているん……だ、ですか?」


「ああ、ムカついたから」


「えっ」


「は?」


「あっ、いやその、お、お前は何者だ?!他国の貴族とは言え、我が国の門前で暴力沙汰など……!」


「秘密結社アウロラ団の『導師』、エグザスだ」


「なっ……?!あ、アウロラ団だって?!アウロラ団って……、あの、アウロラ団か?!」


「何であれ、俺は呼ばれた。だから来てやった。帰れと言うなら帰るが?その場合、責任を取るのはお前だろうが……」


「ちょ、ちょっと待て!いや、お待ちください!確認をとってきます!」


まあ色々言われたが、とりあえず手続きは終わり、無事にプロキシアの街に入れた……。

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