第71話 隣国破壊計画

会議室に幹部を集めて、俺は再びホワイトボードを叩いた。


「プロキシア共和国!潰す!」


はいドン!


「「「「えぇ……?」」」」


困惑する幹部達に俺は説明を始める……。


「あいつら、この俺を舐めやがった。なので殺す。殺すのだが、どうせなら奴らが誇る経済を完全破壊してから殺したい。奴らが吠え面かくところを見たいんだ」


「狂ってる……」


おっと、フランちゃんの温かな声援。


「でも真面目な話、フランちゃんに限らず、『家伝の秘術をタダで譲れ!その上で軍権の一部を寄越せ!』とか言ってきたら、相手が王家でも戦争しない?」


そう。


そうなのだ。


事が商売だから軽く見られているが、相手の要求はこのレベルの話をしていることになる。


普通の貴族なら、例えそんなことを言われたら、その言った奴が王家でも即戦争レベルでキレる。あり得ない話し!


こちらの王家も、「所詮は商売の話だろ、何マジになってんの?」という態度だから緊張感が伝わらないがな。


問題なのは、あっちの国……プロキシア共和国のダブスタだな。


自分らが同じことを言われたら猛抗議した挙句大暴れして、戦争と同等レベルの被害を出すくらい攻撃してくるはず。商業国家ならば、「商売の種を寄越せ」と言う要求は、魔法国家の「魔法の秘技を寄越せ」と言う要求と同等レベルの無礼だと分かっているはずなのだ。


それなのにやってくるとなると、まあ完全にこちらをカモにできると、舐めてきているとしか思えない。


故に殺す。


「……お分かり?」


俺は分かりやすく丁寧に説明してやった。


この場に、それが分からない奴は置いてないはずだ。


「む、む、む……。あーっ!その通りよ!その通りなんだけど、アンタが言うと本当にこう……、なんと言うか!自分の中の常識がゴリゴリっと削られてるって言うかぁ……?!」


フランちゃんがくねくねしてる。


かわいいね。


刺激を与えると愉快な音と動きをする人形とか、おもちゃとしての才能があり過ぎるんだよなあ……。


俺が優しく微笑みながらフランちゃんを眺めていると……。


「そっ、その目!その目やめて!アンタがその目をしている時は、大体碌なこと考えてないわ!」


と、びしっと指をさしてきた。


「そんなことないよ」


「嘘おっしゃい!!!私には分かるわ、アンタのその目!決闘の時とか拷問の時とか、いつもその怖い目してるじゃない?!」


んー?


そうなのかな?


自分じゃ分からないが……。


「この前、お仕置きとか言って一晩中……!その、さっ、された時も!そういう目をしてたわ!」


「えー?そう?」


「そうよ!いつか殺されそうでヒヤヒヤするわ!」


可愛がってるつもりなんだがな。


少なくとも、痛いことはしてないはずだが。ああ、膜を破る時以外で。


「フランちゃんのこと、俺は好きだぞ?」


「う、うん、それは……、ありがとう。私も好きではあるのよ?愛してくれてるのは分かるから……」


「フランちゃんほど面白いおもちゃはないからな!一生俺に弄ばれてくれ!」


「もーーー!!!それ!!!それよ!!!女として愛して?!!!」


いや、女としても好きだけど、それ以上に面白さが勝るので……。


それはさておき。


「よし、話はまとまったな!じゃあこれからプロキシア共和国のありとあらゆる産業を陳腐化させて殺すぞ!」


「待って!待って!まとまってないでしょ?まとまってない!」


「ンモー、まだ何かあるか?」


「あるわよ!……良い?アンタが国一つ壊せるのは分かるわ。でもね、それに巻き込まれた民はどうなるの?」


「難民にでもなるんじゃない?」


「そうねえ、国一つ分の難民が湧いたら、この国の政情も不安定になるわよねえ!」


「で?それが何か問題?」


「正気なの?この国にも来るわよ?!そうしたら今みたいに、学園で教師達と語らい、ショッピングモールの新商品を考えて……とか、できなくなっちゃうのよ?!それでも良いのっ?!」


ああ、そのことか。


フランシスは、なんだかんだ言って、今のこの生活を楽しいと思っていてくれたんだな。


それが失われるのが嫌だから、俺に苦情を言うのだろう。


よろしい、説明してやろうじゃないか。


「フランシス、俺はお前を愛しているので、しっかり説明してやろう」


「え、ええ」


「まず、俺は難民を作らない。何故かと言うと〜……」




「……なるほどね。確かにそれなら、消えるのは首脳部だけだわ。統治能力もなくなるでしょうけどね?!」


「まあそこは、共和国が大好きな選挙とやらをやってもらえばいいじゃないか。殺すとは言ったが、皆殺しにはしないとも。恨みがない奴まで巻き添えで殺すのは良くないからな、なるべくやらないさ」


なるべく、な。


まあダメなら深刻そうなツラで「必要な犠牲だった、犠牲の犠牲にな」みたいなことを言っておけば大丈夫じゃないかな。


「本当ね?本当なのね?約束できる?」


「おお、約束できるできる。フランちゃんとのお約束だ」


「そう、そうよ!フランちゃんとのお約束ね?!」


めっちゃ強く手を握って懇願してくるフランちゃん。手汗の量がエグいな。


………………。


ぺろっ。


「あえぁ?!?!!なんで?!なんで手を舐めたの?!!?!?!」


「フランちゃんの手汗が凄かったのでつい……」


「アンタのそういうところ、本当に怖い!!!」


そこが「嫌い」じゃない辺り、フランちゃんは優しくて良い子だなあ。

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