第70話 第二王子からのありがたい忠告

ああ、そうそう。


一番売れたやつが勝ち!みたいな話をしていたが、勝ったのはベティだった。


やはり、安くて早くて美味いファストフードの類は、店の回転率が違った。


売っているのも飲食物で、安価だったので門戸が広く、多くの人が買って行ったのだ。


特に、飲食物はジェネレートマジックで生成してもあまりコストがかからなかったのも強みの一つだろうな。


ショッピングモールの各所には、来店者及び地脈などから魔力を吸い上げて、その魔力で稼動するジェネレートマジックの魔道具を使って、資材や商品を呼び出している。


地脈エネルギーを吸って云々と言うと、ライフストリームを吸い過ぎて最終的には謎のヤンデレイケメンがメテオを落とすのでは?などと思うかもしれないが、この世界の魔力は超高効率エネルギーであり、大地から自然に発散している程度の魔力エネルギーを吸うだけでも食べ物くらいは余裕でできる。


よく考えればそうだよな、一般魔導師もごく普通に水だの土だのを出しているのだから、食品を出すのも大して変わらんだろ、と。


生成するのに消耗が激しいのは情報量……即ち魔力を多く含む物質なので、ミスリルだのオリハルコンだの、その辺りは俺が直々に俺の魔力で生成している。非効率だからいずれ代替システムを考えるが、まだその時ではない……。


で、まあとにかく、飲食物を生成する程度のコストは大したもんじゃないから、コスパと回転率でフードコートの優勝って訳だ。


まー、平民の皆さんは普段から大したもん食ってないからなあ。


うま味調味料ドバドバのジャンクフードがバカ売れだったわ。


特に売れたのは、香辛料ドバドバ塗した肉の塊を店頭で焼いて出すケバブとかだな。


後はハンバーガーとか鉄貨一枚(60円くらい?)で売ったらバカ売れしたわ。アホ安いからって。


一方でビリはフランちゃんだ。


まあ常識的に考えて、重機なんてこの世界で売れるはずがない。そもそも、一般市民が買えるような値段設定でもなかったしな。


そもそも、土木を軍事活用しよう!って思考回路がまずないんだ、この世界には。フランちゃんの実家でのみ、土木で塹壕掘って戦うと強い!みたいなノウハウがあるだけ。


軍事兵器なんて誰も買わないし、というか値段設定が高過ぎる。いや、妥当なんだけどね?買うには貴族でも、道楽じゃ済まないレベルの値段はねえ……。強いのは分かるんだが。


土木用の重機は、誰も価値を分からなかった。「奴隷にでもやらせりゃよくね?」みたいな思考が当たり前だからなあ。


しかも、ジェネレートマジックで生成するのが困難な魔法金属を多く含む重機は例え売れたとしても利益率がよろしくなく、コスパが悪かったってのもある。


宣言通り、ベティと一日デートしてやり、フランちゃんはグチョグチョに犯した。


因みに、他の店舗は、と言うと……。


エイダの高級志向カフェは、まあ確かにお忍びの貴族などを感嘆させたが、利益はそんな出してなかったな。


ハイソな趣味はあんま流行らんのだ、この国、この時代では……。


アランの魔道具品店はそこそこいい線行ったかな?


家電はあまり売れなかったが、ライターとか水生成器とか、そう言う小物がかなり売れていた。


しかし、コンロだの冷蔵庫だのが売れるのはこれからだろう。長期的に見れば一番稼げるのが魔道具屋なのだが、短期的には美味い飯や食材の方が稼げたな。


そうそう、ベティの飲食店は実は一位じゃなくて、本当の一位は俺提案のスーパーなんだよね。


まあこれは結果が見えていたので仕方ない。


都市の住人が、季節外れの野菜も果実も肉も全部新鮮な状態で手に入るなんて、普通に考えてこれが一番なのは決まっているからな。


ユキの武具屋は……、うーん、まあまあかな。


貴族や冒険者にいくらか売れた程度か。


グレイスの本屋もそこそこ。


そもそも、この世界の平民層には文字が読めない奴が多いからな。


しかしそれでも、王都故に知識層が多く、その知識層の連中が根こそぎ買いまくったとか。


俺が適当に書いた初等教育レベルの教科書が結構売れたらしいよ。




そうして、ショッピングモールをやり始めて数日後。


どうやら、うちの商品のネガキャンをする商人がいるらしい。


プロキシア共和国の奴らなんだとか。


かなしいなあ。


なので全員拷問して殺した。


おっと、ちゃんと殺す前に、この国の各地に強制設置したラジオで「全てプロキシア共和国の陰謀でした!ショッピングモール・アウロラの商品は実際安全!」と強制的に言わせてから殺したのでOKです。


そうしたらまた、第二皇子のギルバート君がうちにやってきた……。


「やあ」


「おう」


館の応接室で、上座のソファにふんぞり返る俺の前に、ギルバートが現れた。


一応、ホムンクルスメイドが案内をして、側に控えているようだ。


そいつに命じて、俺は茶を淹れさせた。


「今日はどうした?」


「君が殺したプロキシア共和国商人の話だよ」


あー?


「その男は、どうやらプロキシア共和国の『議員』と言って、政務に携わる…‥この国で言う貴族のような存在だったらしい」


「へえ」


で?


何が言いたいんだ?


「外交問題、と言うやつだね」


「あっそう」


知らねーよ。


いや、言いたいことは分かるよ?


一応、この国の貴族である俺が、他国の貴族相当の身分の人間をぶち殺して死骸を相手の国に送りつけたんだから。


普通にそれは、宣戦布告としか思われないだろうな。


けど、なんで俺がそんなことで譲歩とか我慢とかしなきゃならないんだ?


辛いこと苦しいことがあっても我慢するのが美徳なのですと宗教屋やバカ教師はよく言うが、それは典型的ないじめられっ子の思想だな。まあ支配層からすると、下々が総じていじめられっ子気質の方が都合がいいからそうするんだろうが。


加害されたら即報復が、俺のような強者のスタイル。侍の本懐とは、舐められたら殺すことである。


そんな訳で、舐めたことをしてくれたプロキシア共和国商人とやらは殺すし、殺した。


問題があるのは分かるが、あえて聞こうじゃないか。


「何か問題でも?」


とな。


「抗議の為に上院議員が来ていて、賠償としてゲーム機の技術開示とショッピングモールの権利の一部を求めてきているね」


「うんわかった殺すね」


「ははは、まあ待ってくれ。いや本当に待ってくれ」


うん。


「確かに、普段から隣国のドメイニア帝国とバイナル連邦との戦争に明け暮れているこのビルトリア王国には、更に別方面であるプロキシア共和国と戦線を開くような余裕は、金も資材も人員もないだろうな」


「ああ、そうだよ」


「で、それって俺に何か関係があるか?」


さっきも言ったが、舐められたら殺すぞ。


それに、殺す価値もない相手だが、生かして返す価値は尚更ないのだ。殺し得なら殺しとくだろ?


「もちろん、君ならばそう言うと思っていたよ」


「ほう、じゃあどうするんだ?」


「君に……、いや、アウロラ商会には、我が国の使節と共にプロキシア共和国に行って、今回の事件の事情の説明と申し開きをしてほしい」


ふーん?


「ギルバート、お前は、お前の親兄弟みたいなバカじゃないよな?じゃあ、それは何かしらの交渉で、対価を渡せると思ってのことだな?」


対価というほどの話ではないかもしれないが……、と。


ギルバートは軽く前置きして。


「商売の上手さが誇りの商業立国を、武力を使って力尽くで捻り潰して屈服させるのは楽しいかい?」


と、そう訊ねてきた。


ふむ、ふむ……。


中々言うね。


だが、それは俺のことを「分かっている」提案だ。


居丈高に権力で押さえつけようとしてきたんなら殺すが、こうして面白い煽りを入れられると、俺もこうなるというもの。


「面白い、やってやろうじゃないか!」

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