第61話 コミュパートは主人公の特権

エイダだけじゃなく、フランシス、ユキ、グレイスにも話しかける。


「お前らは、勉強はどうした?」


「「「やってます」」」


「だろうな。やってなかったら校門の前で肛門をブチ犯してるところだ。俺が聞いているのは進捗の話だよ」


「魔法学基礎Bのeラーニングまで……」


そう言ったのはフランちゃん。


んんーん。


これは処刑ですね。


「フランちゃん、俺のことをまだ舐めてるなんて結構余裕だねぇ!そんなに後ろの穴をガバガバにされたかったなんて気付かなんだわー!」


「ひっ……!ち、違うの!聞いて?!私、お父様からも軍略や領地運営の課題を出されていて……!」


「そっかあ……。じゃあこの実習中は暇だね!」


「え?」


「今週中に応用Aを終わらせんと、街のど真ん中で前後の穴がガバガバになるまで犯すから覚えておけよ」


「は、はい……」


そう言ってフランちゃんは、懐から学習用のタブレットを取り出した……。




「ユキ」


俺はユキの方を見る。


「ひえっ……。せ、拙者は応用Aまでなら……」


「うん。じゃあ今週中にBまで終わらせようか」


「ご、ご無体な!応用Aなんて、毎日夜なべしてやっとだったのだぞ?!」


「で?」


「だ、だから、その……」


「で?」


「う、うぅ……」


「で?」


「やりますぅ……」


無論、無理矢理叩き込んでも苦手意識ができてしまうからな。


「安心しろ、俺が目の前にいるんだから、質問し放題だぞ」


「はいぃ……」


「ユキ。悪いが、今は苦労するしかない時期だ。人間、子供の頃には、よく考えて勉強しなきゃいけない。何故だか分かるか?」


「さ、さあ……?存じ上げぬが」


「前提となる知識がないからだ。お前らは今、自分なりの勉強の仕方すら分かっていない。だから手こずる」


「は、はあ……」


「だが、今のうちに苦労しておけば、それが将来的に大きな財産になることは間違いない。今お前が苦戦している、魔法応用Bだって、大人になったお前が見れば、『なんだ、こういうことだったのか』と吐き捨てられる程度のことなんだよ。それくらい、お前達には可能性があるんだ」


「えっ、えっ……?エグザス殿、珍しくも拙者を慰めてくださっている……?」


「何言ってんだ?俺はお前らにかなり期待しているし、期待するだけの能力があると思っているぞ?むしろ、だからこそ目をかけているんだ」


「そ、そうだったのか……。拙者、ただ単に見た目が好みだからと、情婦としてそばに留め置かれておるものだとばかり……」


「まあそれもあるけど」


「さ、左様か……」


「うーん、誤解されているみたいだから言っておくけどさ。俺はさ、『できないこと』そのものは怒らないんだよ」


能力のない奴に仕事を割り振ったマネジメント能力がない奴の責任でもあるからな。


問題なのは……。


「問題なのは、そもそもやる気がない奴なんだよ」


「や、やる気?理屈っぽい貴殿が、よくそんな台詞を言うな……?」


「やる気ってのは喩えだ、喩え。例えば、『同じ失敗、同じ質問を何度もする』とか、『失敗を改善しない』とか、そういう奴をやる気がないと評価している」


「なるほど……。確かに、剣術の稽古でも、何度も同じ失敗を繰り返す者は成長せんな。考える気がない奴はダメだということか」


「そうだ。だが、お前らは考える頭がある。だから、期待しているんだ」


「承知した。努力するので、ご指導のほどをよろしく頼む」


「ああ」




「で、グレイスは?」


「私は、応用Bをつい先日に終えました」


「お、偉いなー」


「えへへ……。ですが私は、軍略などの勉強をしているフランシスさんと、剣術の稽古をしているユキさんと違って、普段は暇ですから」


「なるほど。じゃあそうだな……、グレイスには医学関係の研究でもしてもらおうか」


「医学、ですか……?」


「ああ。外科も内科も薬学も、全部だ」


「外科……。外科は下賤で……、いえ。違いますね、外科も素晴らしい仕事です」


洗脳ヨシ!


「俺も専門じゃないからそこまで詳しくは分からんが……、実家にあった医学書の聞き齧りの知識くらいなら教えられる。地球の情報のサルベージ術は、来年までには目処がつくから、それまでは基礎の勉強をしような」


「はい!」




三キロほど歩くと、グレイスとドリルが音を上げた。


三キロぽっちでこれか……。


いかに子供とはいえしょぼすぎる。


要訓練だな。


フランシスとユキは、何も言わずとも身体能力を鍛えるトレーニングを欠かさないので、そこは偉いよ本当に。


俺はとりあえず、バイク車載の折りたたみ椅子を出して座らせる。


魔法素材はすげえなあ、ほぼ割り箸くらいの細さで家具としての強度が維持できるから、折り畳んだ時の大きさがクッションと変わらない。


座らせてから、俺は、チョコレートヌガーを渡す。


「移動するとカロリーを消費するからな。ちょこちょこ、オヤツとか食べておくと良いぞ」


「何だ、これは?」


ユキが、チョコレートの塊を見て訝しむ。


「ヌガー」


「ぬがーとは……?」


「オヤツ」


「オヤツか……。まあうん、はい……。おっ?!これは……、甘くて美味だ!」


「これはかなり高カロリーでな。一本でちょっとしたパン一つ分くらいのエネルギーがある」


「カロリーって滋養みたいな意味でしょ?この小ささと重さでパン一つ分は凄いわね。味も美味しいし、糧食としても間食としても良い感じね」


フランシスがそう言って、よく噛んで食べる。


よく噛むのは、吸収効率を高めて胃に負担をかけないようにする為だろう。


流石軍人の家系だ、食事法一つとってもよく躾けられている。


「他にもいくつかのオヤツを持ち込んでいるから、その都度、感想を聞かせてくれ」


孤児共は普段から生ゴミみたいなもんばっかり食ってるから、何食わせても美味い以外の台詞を吐かなくて参考にならんのよね。




そしてまたしばらく歩ってから……、昼食の時間だ。


小分けで冷凍された肉を、切った野菜と煮込み……。


これだ。


「ルーとパネトーネ種パン」


「……これは?」


クルジェスのジジイが訝しむ。


「ルーは、スープに使うスパイスと塩などを固めて乾燥させたもの。年単位で保存可能。パネトーネ種パンは、特別な製法で作られた長期保存用のパン。これも一年くらい腐らない」


クルジェスのジジイは頭を抱えた。


「しれっと糧食の常識覆すのやめてくれない????ウチの軍がビスケットと干し肉で行軍してるの、馬鹿みたいじゃない????」


そしてフランちゃんの熱いマジレス。


そんなん言われてもなあ……。




そして、カレーを食う。


「「「うっっっま……」」」


好評。


「これだけ味が濃いと、質の悪い肉や野菜でも食べられるわね。臭みの強い魚や野獣の肉なんかも……」


「というか、これだけのスパイスをどこから?この塊一つで商店がひっくり返るのでは?」


「具も美味しいですね!お肉もお野菜も、柔らかくて、ほのかに甘くて……」


まあ、カレー粉は臭み消しとして優秀らしいからな。


この世界の食品はとにかく臭くてな……。


ジビエなんてアレ、本来食えたもんじゃないんだよ。


ジビエの名目で売られている鹿肉とかは、アレはちゃんと単一の餌だけを与えられた家畜の鹿の肉だから。


本当に、山の中にいる何を食ってきたのか分からない鹿の肉なんて、臭くて不味いぞ。


そんな時でも、カレー粉をぶっかければまあ食える味になるというのだから、スパイスは偉大だ。


そんな話をしながら、カレーを食い、しばらく休憩した……。









—————————


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サイバーパンク学園 〜元伝説の兵士がサイボーグ女子校で教師生活〜

自作です。

作者がブルアカをやりながら書いた、学園ハートフルコメディですね。

元大戦の英雄が、サイボーグ女子校で教師をやるというベタな内容の日常ラブコメディになってます。

ジャンルはSFだけど実質的には能力バトルものみたいなもんなので肩とケツの力を抜いて読めるんじゃないですか?

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