第51話 お貴族パーティー

名誉男爵とかいうのになった。


本当の男爵とは違って、貴族としての義務はないけどメリットも薄いんだと。


あのクソ親父よりも一瞬で偉くなったとか割と笑えるから、爵位ってのもアリかもしれんな。


まあ政治とか宮仕えとかそういう実務的なことは一切やるつもりがない。




さて、そんなこんなで、十一月。


学園は、一学期が終わって、二、三週間ほどの休日が始まった。


前も言ったかもしれんが、ここは欧米の学校のような形になっていて、具体的には、九月から十一月が一学期、十二月から三月が二学期、四月から六月が三学期で、七、八月は長期休暇となっている。


今は、一学期が終わって、しばらく休みだ。


しかし、貴族は休めない。


貴族の生徒達は、この秋の休暇を利用して、王都でパーティーをせにゃならんからだ。


パーティー。


秋は収穫の時期。


十一月、秋の暮れ頃には、収穫を終えた作物がちょうど王都にたくさん届く時期なのだ。


この時期に、時の王が、収穫を祝ってパーティーを催したのが事の始まりで、毎年この頃には国中の貴族が集まってパーティーをすることになっている。


また、学園に多くの貴族の子弟が集まるので、これを機に、新米子供貴族達のお披露目というか、社交界デビューもやっちゃおうぜ!ということらしい。


無論、ダルいので不参加!


「お願いだから出席して!ねっ!ねっ?!フランちゃんのお願いよ!」


フランシスが土下座してきた。


この女、最近、土下座の動作に澱みがなくなってきたな……。


凄まじい土下座力だ。


「え〜〜〜?でもな〜〜〜!」


俺がそう言って難色を示して見せると、フランシスは俺に半泣きで縋り付いてくる。


「お願いよぉ〜!毎年恒例の秋パーティーに未出席となると、本当に拙いの!」


「ん?何で?フランちゃんは無関係だろ」


「アンタは私のパートナーでしょ?!!私だけじゃなくて、ユキとグレイスもアンタを指名してるのよ?!!」


ふーん?


「つまり、俺が出席を拒否れば……、フランちゃんは男に振られたウーマンとして話題になる……ってコト?!?!?!!」


「そうよ!だからお願い!助けて!」


いやーーー、俄然面白くなってきたな……。


俺の匙加減一つで、かわいいかわいいフランちゃんを陵辱できるとか、最高のエンターテイメントじゃん。


フランシスはこうやって、半泣きで喚いている姿が一番可愛いからなあ。


萌え要素というやつだ。


「お願いよー!ただでさえ、アンタのパートナーって時点で、立場とか色々が拙いの!このままじゃ虐められちゃうわ!」


「オッ、良いねえ!」


「良くないのー!それに、私が舐められたら、アンタも舐められるようになるのよ?!」


「別に良いかな。問題あれば実力行使で消し飛ばすし」


「ほんっっっとに!やめて!!!」


うへへ、フランちゃん虐めは楽しいなあ!


「パートナーに捨てられた女とか言われれば、男の人にどんな目で見られるか……!強姦とかされちゃうかも……!」


何?


「俺のペットであるフランちゃんをレイプだと?!許せんよなあ!」


「え、えーっと……、そう!そうなのよ!フランちゃんが酷い目に遭うから!助けてダーリン!」


「よーし良いだろう!その秋パーティーとやら、ぶち壊しにしてやるぜ!!!!」


「ぶち壊しちゃだめえええ!!!!」




結論。


フランちゃんがあまりにも無様で可愛かったので、出席してあげた。


エイダ、フランちゃん、ユキ、グレイスの四人を侍らせる。


……にしても、この国ではまだ手掴みでの飲食がメジャーなんだな。


カトリーヌ・ド・メディシスがドン引きしたというのも分かる気がする。


あまりにもキモくてついていけないので、パーティー会場のすぐ側に調理台を出し、自分で料理を作ることにした。


というか最早、勝手に作った料理を、勝手に空いてるテーブルに広げてみた。


いや、コックとか周りの貴族とかどんな反応すんのかなーって。


「「「「何だあいつ……」」」」


総ドン引きであった。


まあそらそうなるわ。


「ああもう……、悪目立ちしてるぅ……」


フランちゃんかわいそう!


「おおっ、これは美味ですな。拙者はこれが気に入りましたぞ」


ユキは、我関せずと俺の作った唐揚げを頬張る。


「え、ええと……、その……」


グレイスは狼狽えている。


俺とエイダ?普通に飯食ってるよ。


唐揚げうめー。


やっぱり揚げたてしか勝たん。


すると、何人かの貴族のおじさんがこちらに来る。


「貴公……」


毎回思ってんだけどさ、その二人称やめてもらえない?ダクソかよ。


致命短剣もってぐるぐる回ってケツ掘り合戦とか絵面が汚いのでやめていただけます?


「何だ?」


「エグザス・フォン・ザナドゥ殿とお見受けするが?」


あー、はい。


貴族になったから名前を考えろって言われてさ。


反射的にザナドゥって答えたんだわ。


楽園を作るつもりなんでね。


え?いや、クソ長プロジェクトは関係ない。World Wide Webにお株を奪われたアレは関係ないのだ。


「いかにも」


「私は、アルザール・フォン・クラインだ。娘と仲が良いそうじゃあないか……」


おっと、赤いカイゼル髭のハゲ親父が、バチバチにキレながら現れたぞー。


「お、お父様!」


フランちゃんが叫ぶ。


そうか、この髭親父がフランちゃんのパパか。


「フランシスからよく聞いているよ……、凄まじい少年だとねえ……!」


オッ、俺の肩を叩く要領で、フルパワーで握ってきたな。


生半可な奴なら肩が砕けてるぞこれ。


舐めてんなー、殺すか?


と、俺が思ったところで……。


「……ん?んんん?ふむ、これは……」


と、俺の服装やアクセサリをよく見て、言った。


「……すまないね。ただの破落戸ではないらしいようだ」


ほう?


俺のスーツの高価さに気付いたのか。


フランちゃん談だが、俺のスーツはこれ一式で王都の一等地に館が建つレベルらしいからな。


「隣に座っても?」


「えー」


「では失礼する」


うわ、座ってきやがった。


えー、って言ったのに。


空気読めよカスが。


「ふむ……?この、金属のハサミ(トング)のようなもので、最初から小分けに調理された料理を自らの皿に運ぶのか」


と、驚いているフランパパ。


あー、確かに、その辺だと肉をナイフで切り分けて、手掴みで食べてるもんな。


キモいわー。


「しかし、肉を切り分けるのは上位者の役目だ。これは、論功行賞の意もある。下位者に肉を切り分けて渡すのは、上位者の務めであるのだ。そこはどう思うかね?」


あー?


つまり、誰にどれだけ美味しい思いをさせるのかは上司の仕事だよってこと?


「くだらねーな。俺は欲しいものは欲しいだけ手に入る。下僕共も、俺に傅く限り、飢えることなど絶対にないんだよ。だから、欲しい奴が欲しいだけ食えば良い」


そう言って俺は、指を弾く。


すると、減っていた唐揚げの山に、隣で自動調理している揚げ物鍋から追加の唐揚げが降ってきた……。


「く……、ははははは!面白い少年だ!分ける必要のないくらいに配下を満足させるとは!」


なんか気に入られたらしい。


貴族とかいう前時代な連中が考えることはよう分からんね。


「ほら、貴公らも来てみろ!ザナドゥ殿の料理は美味いぞ!」


で、フランパパは仲間を呼んだ、と……。

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