第50話 やりたいことやったもん勝ち
どうやら、王城には凄腕の治癒魔法の使い手がたくさんいるらしい。
王様は速攻で治療され、血塗れ穴だらけの服を着替えて、俺の前に再び現れた。
「いやー!参った参った!強えなあ〜、お前!」
へえ、まだ懲りてない。
いや、懲りるとかそういうタイプじゃないな。
本当にアホなんだろう。
少年漫画の主人公みたいな奴だ。
「ほら、早く褒美を出せ」
「おいおい!もうちょっと話を聞かせてくれよ!あのすげぇ魔法についてとかよお!」
「褒美を出せ」
「ッチ、分かったよ。それじゃあ……、我が娘を救った功績から、エグザス・レイヴァンに『男爵位』を……」
はあ?
「要らん要らん!ゴミを投げつけてくるな!金を寄越せ金を!」
このクソみたいな国の爵位とか、それなんて罰ゲーム?って話になるだろ。
沈みかけの船の乗船券もらっても嬉しくないんじゃカスゥ!
「ふむ。爵位が要らないと?」
「ゴミは要らねーって二回言わなきゃ分かんない系?」
「それは、この国を軽んじての言葉か?」
「え?寧ろ今まで軽んじられてないとお思いで?頭大丈夫?」
「貴公……、流石にそれは侮辱が過ぎるぞ。爵位というものは、貴公が思うよりも尊く、重いのだぞ」
少年漫画の主人公みたいな態度から一転、真剣そうなツラと喋り方をしている王だが、その重い爵位とやらを軽々しくパスしてくる時点で言葉の重さがヘリウム級なんだよなあ。
ってか何?そっちの態度が素なの?
バカのふりしてるけど実は威厳に満ちた王なんだ!みたいなキャラ作り?キモ。
まあ、偉そうにしても馬鹿そうにしてもどっちにしろ取るに足らないカスだからどうでも良いけどさ。
「だから何だ?また殺し合うか?……ああいや、殺し合うではないな。一方的に嬲り殺しにされたいのか?と問うべきか」
「貴公……、確かに貴公は強い。だが人間は、一人の力で成せることには限りがあるのだぞ」
「それには完全に同意しよう。人とは、協調してこそ力を発揮できる生き物だからな。俺の技術や知識も、先人達の研鑽があってこそだ」
まあそれはそう。
俺は、大抵のことができる自信はあるが、この世の全てのことができる訳じゃない。
万能の自認はあるが、世の中は万事を恙無くこなせる程度では回らんのよ。
「なら」
「だが……、お前らは全員、俺に一方的に協力をさせる側じゃねーかよ!協調?するとも!俺が自分で育てた部下とな!なーーーんで無能で足引っ張るしか能のないカスの皆様方に手を貸さにゃならんのじゃ!」
って話なんだよなぁ〜!
言ってやった言ってやった!
あー、気持ちええ!
ずっとね!言いたかったんだよ俺は!
俺が今まで無駄な苦労をしてきた元凶にさあ!!!
俺がガキの頃に苦労したのは、大体無能親父のせいだが、元を辿ればその無能親父を貴族に任命した馬鹿王のせいだ!
お前みたいなカスが送り込んだバカのせいで苦労に苦労を重ねたのは俺だけじゃなく、あの領地に住む国民全員だった!
それが、それが!
今ちょっと、魔法を使った「ケンカ遊び」で、「決闘ごっこ」で!少しばかり強いという雑な理由で、実務能力も考えずにその『尊き爵位』とかいうクソを投げつけてきやがる!!!
こおーーーんなアホアホマンのせいで、これから更に苦労しますだあ?
やっっってらんねーーーもんね!!!!!
アホ吐かせカスゴミが!!!!!
俺がそう言って気持ちよくなっていると……。
「そうは言わずに、貰っていただけないだろうか?」
と、銀髪のイケメンガキが俺に言ってきた。
イケメンランク的には俺の方が上だが、こいつもまあそこそこにイケメンだな。
「失礼。第二王子のギルバート・シルバーン・ビルトリアだ」
ふむ。
「君の意見は理解できる。だが、こちらにも事情というものが……。いや、やめよう。こういう話は嫌いだろう?」
「ああ、嫌いだね」
「はっきり言おう。まず、爵位は名目上のもので、利益も損もない」
ふむ、それならまあ、いいんじゃないだろうか。
「理由は分かるだろうが、君ほどの魔導師に爵位を与えねば、周囲に示しがつかないからだ」
確かにそうだな。
有能なのに無位無冠な奴とか、おかしいもんな。
「そして、そういう者は、外国の手出しの原因にもなるし……、与し易いと思い込んだ貴族共が群がる原因にもなる。……蝿が群がるのは嫌だろう?」
なるほど、全くもって当然のことだ。
「であれば……、どうだろうか?虫除けとして、爵位をもらってはくれないだろうか?お互い得をする話だろう?」
ふむ、確かに。
「契約書を作成しろ。それを精査してからだ」
「分かってくれて嬉しいよ、エグザス殿」
なるほどね?
話が通じる奴もいるってことか。
が、しかし。
「待て!俺は認めていないぞ!」
と、横から声が。
「この、第一王子であるエミリアンを通さずに……、それどころか、王の頭越しに勝手な交渉をするとは、何様のつもりなのだ!ギルバート!」
銀髪の巨漢その二。
王は、銀髪を短くして髭が生えている中年だが、こちらの方は若いし髭がない。
「第一!その態度はなんだ?!王は寛容だが、この俺はそうではないぞ!何が爵位だ、抗命罪と不敬罪で厳罰を……」
まあ言っていることは正しいが……。
「お前の態度が気に入らない」
「貴様!ぐあっ?!」
俺は、キネティックマジックで第一王子を釣り上げた。
首を抑え、真っ赤な茹蛸みたいな顔色の第一王子は、まるで、見えない巨人に首を掴まれているかのようにもがいている。
「王様さあ、二つだろ?俺には二つの功績がある。『ゲーム機による経済の活性化』と『姫様救出』の二つ」
「あ、ああ」
「で、『姫様救出』のお礼が、『男爵位』な訳だ。なら、もう一つの褒美はこれがいい」
「な、何だ?」
「今から俺がする無礼を許してくれや」
俺はそう言って、キネティックマジックの力場の弾丸を、第一王子に叩きつける。何度も、何度も。連打で。
「ぼがぼがぼがぼがぼがががががあああああああっ!!!!!!」
そして、精神ヴィジョンで殴り合いする能力ものバトル漫画のラッシュを食らった悪役のように、ボロ雑巾になった第一王子に……。
チャックを下ろして……。
ボロン。
ジョボボボボ。
っと。
うーん、ガキの身体はいいなあ!キレがいい。
中年になってくると、出しても膀胱に残っている感じがして辛かった……。
早く、加齢を止める魔法を作らなきゃなあ……。
よし、じゃあ、帰るか!
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