第49話 傲慢不遜

「んで、お前んちどこよ?」


「こちらですわ、ついてきてくださいまし」


助けた銀髪の女と道を歩く。


銀髪をロールしたなんかいかにもお嬢様っぽいお嬢様だ。


逆に、お嬢様のテンプレそのままで埋没個性って感じ。


バーチャルユウチューバーみたいな見た目をなさっている。


まあ仮にバーチャルユウチューバーだとしたら、かなりファンは多そうだな。


それだけのカリスマというか、人を惹きつける魅力がある。


貴族にしても、相当立場が高い奴であろうことは容易に予想できるな。


こりゃあ儲かりそうだ。いくら吹っかけてやろうかね?


「まだかよ、ドリルちゃん」


「ド、ドリルちゃん?ええと、もう少しですわ」


ドリルちゃん(仮称)に手を引かれ、貴族街を練り歩く……。


そして。


「ここですわ」


たどり着いたのは……。


「あはーん?」


王都の中心、『王城ビルトリア』だった……。


まあ、ここまで来たら大体わかる。


ドリルちゃんは、この国のお姫様って訳だ。


なら、王様とやらから金をもらえばそれで解決。


そういや昼飯食ってなかったな、何食うかな……。




俺は、即座に玉座の前に通された。


跪けとか何だとか小うるさく言われてるけど、自分より弱くて無能な奴に、俺に非がある訳でもないのに頭を下げるとか嫌なんで。


社会人をやめて、社会人の守るべき規範の数々から解放された俺を、もう誰も止めることはできないと言っておこう。


俺は、ホットドッグを齧りながら、コーラ瓶片手に謁見する……。


「き、貴様あ!無礼にも程があるだろうが!」


王様……の隣のおっさんがブチギレてる。


宰相的なアレだろう。


まあ、おっさんに興味はない。


衛生的な美少女にしか興味はないのだ。


今後の目標は、フランちゃん、ユキ、グレイスをよーく洗って衛生観念を叩き込み、その後に抱くことだ。


この世界のきったねぇ女じゃ勃たねえからなあ……。


ん、ホットドッグうんめー。


チリビーンズソースにしたのは正解だったな……。


今日はこう、なんていうか、もったりしたものが食いたかった。


カロリーが脳髄に染み渡るぅ〜……。


「ガハハハハ!面白いガキだ!」


銀髪の巨漢……、王様とやらは、そうやって破顔する。


何こいつ?


そして王は、大きな……、それこそ漫画のようなレベルの特大剣を背負い、こう言った。


「よっし!とりあえず手合わせだ!」


と。


はあ〜?


意味わかんねー。


アホなのかこいつ?


「嫌だね。とっとと、姫様を助けてやった分の報酬を出せ」


金を出せ金を。


「いやあ、それがな?お前は、裏口入学したズル野郎って噂じゃねーか。裏口入学した奴が、どうして、攫われた俺の娘を助けられたんだ?」


あー?


「だとしても、俺がその女をここに持ってきたのは事実だろうが」


「いやいや!娘も騙されているかもしれねーからな!実力を見ておかなきゃダメだろ!」


そう言って、「ワクワクしてます!」という表情をする王。


うっざ……。


まあ、武断派!とか言えばカッコよく聞こえるが、一国の王がこれじゃダメだろ。


いや、こんなのが王をやっているから、この国はクソなのか。あーはいはい、納得したよ。


ま、俺は、相手が王様だろうと何だろうと、こんな風に舐めた態度をしてくるアホに芋引くとかありえんので……。


「よーし!じゃあいくぞ!俺の魔法と剣技を受けてみろや!」


こういうアホは……。


『《マジックアロー》 ラン』


「ぐ、ぐああああーーーっ!!!!」


殺してやるに限るな!


っと?だが、ギリギリで身体を捻って致命傷は避けたか?


流石は武断派!の王様だ、よく動く。


次は避けられるかなー、っと?


「そ、そこまでです!これ以上やっては、お父様が死んでしまいます!」


と、ドリルちゃん……、あー、姫様が出てきた。


んー?死んでしまう?


「剣を向けてきておいて、いざ自分が死にそうになると『死んじゃうのでやめてくだちゃーい!』だ?んなもん通るかよ」


って話だ。


「ですが、王を殺すなど大逆で」


「ああ、そうなんだ。で、それが何か問題?」


「なっ……?!!」


驚くほどのことかね?


ってか、普段からつまらん戦争をやりまくって、「強い奴は偉いです!カッコいいです!」と言ってきたんだから、王より強い俺のことも持て囃してもらえんか?


「……お話は分かりました。ですがやはり、貴方に王殺しの罪は負わせたくありませんわ」


ふむ?


「それは何故だ?何のメリットがある?」


「貴方と会えなくなるなんて、嫌ですもの」


ふーん?


「わたくしは、貴方のファンなのですわ。ゲーム機は楽しませてもらっておりますし、学園での破天荒な活動の数々も見ていて飽きません。それどころか、素敵なお顔は、何をしていても様になりますわ」


へえ、こりゃいいな。プラス五点。


「恐ろしくハンサムで、国一番に強くて、商売にも明るい……。そんな貴方は、この国に必要な方ですわ」


「で?」


「前の呼び出しには応じていただけませんでしたが、あの時も、『ゲーム機発売により、王都に富をもたらした褒美の授与』をするつもりだったのですよ?」


あ、そうなんだ。


そりゃ、行った方が良かったかもな。


エグザス反省。


「少しだけで良いのです、我々王族の顔も、立ててはいただけませんか……?」


ふむふむ。


殊勝な態度の美少女。


悪くない。


「いいだろう、今回はお前らの顔を立てておいてやる。次、舐めた真似したら、王都ごと消し飛ばすからな」

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