第33話 早速の仕事

寝る前、エイダに誘われたので抱いた。


なんでも、月のものが来たから、とのことらしい。


要するに初潮だな。


この世界は中世の世界なので、男は十五歳くらい?まあ働ける年齢になれば一人前で、女は初潮が来れば一人前みたいな制度と言うか慣習になっている。いや、法律で成人年齢とか定められてないからね。


そんな訳で、一人前になったと自認したエイダは嬉しそうにその事を俺に報告してきて、抱かれたいと言ってきたのだ。


貞操観念とかもなあ、不貞は良くないとされてはいるが実際には……。田舎とかやる事ないしね、ヤりまくりだよ、うん。


多分俺に兄弟が多いのも、親に娯楽がセックス以外あんまりなかったんだろうな。今思えば……。


また、エイダとしても、俺に抱かれて愛人を名乗らなければ居場所がなくなると焦っているのも要因としてあるだろうな。


女の立場が低い世界だもんよ。魔法使いとは言え平民の出で、身内との縁も全切りしてきたエイダには最早、俺に捨てられたら生きていく道はない。


俺の愛人ポジションに収まるのが一番得で安全だと、エイダにも打算があるってことだ。


恋だの愛だのだけで結婚ができる奴は、この世界は平民でも滅多にいないんだ。そう言うもんなんだ。


そんな訳で抱いてやった。


もちろん、魔法で避妊はしたがね。


因みに、フランシスがこっそり覗いていたのも気付いている。


朝食を食べてから、俺とエイダは街を見て回ることとした。


フランシスは、旅の疲れがどうこうなどと言っていたが、実際のところは俺とエイダの行為を覗き見していた興奮から眠れなかったのが察せられる。


二度寝するフランシスを他所に、俺は街へと繰り出した……。




王都。


確かに、実家の村落と比べれば……、いや、比べるまでもなく栄えている。


戦国時代の京都のような感じかな?と思えばそうでもなく、かなり煌びやかだ。


とは言え、裏路地には物乞いや野良犬が転がってるし、スラムには死体が転がっているのもおかしくないみたいだが。


栄えている理由として、ミクロフ川という、この国でも屈指の大河川がまず挙げられるだろう。


川は運河としても給水地としても使える。


そして、ミクロフ川と繋がる淡水湖のエイプル湖という湖もある。


土地も比較的豊かな土で、近隣には自然の恵みをもたらす森もある。


つまり、この都市は、シミュレーションゲームなどで例えれば『神立地』というやつなのである!


つまり、アホでも栄える訳だな。


王家が有能とかそんなことは一切ないです。


そんな煌びやかな王都を歩き回る。


とりあえず、例の商会を探すか……。


道行く人に地理を聞く。


話しかける相手は女がいいな。


「すみません」


「え?ワアッ……!」


俺がイケメンなので、大抵の女はこうなる。


「『ビークス商会』の場所ってご存知ですか?」


「は、ははは、はいっ!あ、あっちです!あっちの道から右へ行って、白い看板のところです!」


「ありがとうございます」


そして仮面の微笑み。


「ひゃうん……」


イケメンスマイルによって轟沈した女を放置して、商会に向かう……。




ビークス商会。


白看板に烏の横顔が社章らしい。


俺はここに入る。


そして、カウンターに並んでいる人々を無視して、列に割り込んで、受付にあるものを叩きつけた。


「これは……、カーレンハイト辺境伯家の書状?!」


そう……、俺はあらかじめ、マーガレット先生を通して、辺境伯家から書状を貰っていたのである。


道中に言ってたろ?


ゲーム機を販売するって。


「しょ、少々お待ちください!」


商会の受付嬢は、手紙の紋章を確認してから、すぐに奥へと引っ込んでいった。


そして二、三分後。


「失礼致しました、レイヴァン様」


すんげぇ笑顔の中年が現れた。


「レイヴァンの名は捨てる予定だ、エグザスで良い」


「はっ、では、エグザス様と……」


中年は、まん丸に太ったビール腹で、髭を蓄えた紳士だった。


椿が何かの油を塗られた髪のテカリが鬱陶しい。匂いも、おっさんの加齢臭を覆い隠そうとする強い香水の香りで、色々と激烈だ。


「わたくし、ビークス商会の会長を務めさせていただいております、バックスと申します」


「エグザスだ。こっちは弟子のエイダ」


「これはこれは!可愛らしいお嬢さんだ、エグザス様が羨ましいですな!いやはや、よろしくお願い致します!」


「あーあーあー、前置きも世辞も要らない。ビジネス……、仕事の話をしよう」


「……ふむ、よろしいでしょう」


テカテカした顔面、人当たりの良い笑顔。


それらを引っ込めて、仕事人の顔になるバックス。


ああ、良いね。


久しぶりに見る、ビジネスマンの顔だ。


俺は、プリントした資料を渡し、製作したパワーポイントを魔導具のモニタに表示した。


「……これを販売するのですか?」


モニタを見てそう言ったバックス。


「いや、これの販売はまだだ。これを売るとなると、結構な高値になるからな」


「確かにそうでしょう。察するところ、任意の絵を映し出す魔導具……、でしょうか?」


「そうだ。今回は、これに近い技術を使った、『ゲーム機』というものを販売したいと思う。まず、手元の資料の1ページ目を開いてもらいたい」


………………


…………


……


「然るに、こちらからの希望小売価格は2スウ(銀貨二枚)としたい」


「ふむ?それほど低くてよろしいのですかな?」


「目先の利益を追うばかりで、もっと大きな利益を掴めない奴は商売人として失格だ。今の段階で一番必要なのは宣伝だからな」


「なるほど、よく理解できます。本体を2スウで売り、ゲームソフト、というものを一つ1スウで販売し続けるのですな」


「そうだ、それにより、長い期間利益が見込める。更に、本体自体にも通信ケーブルなどの拡張アイテムと、プレミアム版などを用意することにより……」


………………


…………


……


「……という訳だ。以上、ご質問は?」


商談を終えた。

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