第31話 ツンデレロリは自分より強い奴の前では単なるツッコミキャラになる

神、神か。


いるかどうかも分からない神よりも、魔法そのものを神として崇める宗教というか思想を広めるべきだな。


神官が語る神の奇跡なんかより、魔法の方が余程凄い。


そもそも、いるのか?神ってのは?


俺が神なら、俺みたいな何をするかわからん危険因子は速攻で消すのだが……。


そうなっていないと言うことは、俺がまだまだ神にとっては取るに足らない雑魚なのか、それとも神は存在しないのか、その二つしか考えられないよな?


そして、既に星を消し飛ばすことすら可能になった俺が、それでもまだ取るに足らない存在なのか?と言えば微妙じゃあないか?


いや、それが、神の視点では有人惑星一つが消し飛んだところでノーダメージなんですよ!と言われれば仕方ない話なんだが。


だが少なくとも、この世界の聖書の神くらいなら、真正面から魔法で殺せる自信があるぞ。


やっぱり、魔法を讃えるべきだな。


V8!間違えた、魔法だ魔法。


要するに魔神教団……、的な?


やっべ、厨二病!


でも悪役風味で良いね!


まあ俺も理系オタクだからね、そう言うのは好きだよ。


いや、ファンタジーだから文学か?まあどっちにせよオタクの、ナードの文化だろう。


「すぅ……はあ……、よしっ!分かったわ、よく分かった」


さて、俺がしょうもないことを考えていると、ヤバい顔色のフランシスは、深呼吸をしてから思い切り自分の頬を叩いて、真っ直ぐこちらを見据えてきた。


さっきまで怯えたガキの引き攣ったツラをしていたが、今は目に覚悟の光が灯っている。


「私にはまだ、何の実権もないわ。いかに名門クライン家の娘とは言え、私自身に爵位や実績はないのだから」


ふむ?


「だから私は、私の意志で貴方に降伏します」


んー?


「降伏ってのは?」


「その言葉の通りよ。私の家が何と言おうとも、私は貴方に臣従するわ」


「何故だ?」


「血を残す為。仮に、クライン家と貴方が敵対したら、恐らくはクライン家が負けるでしょう。だから私は、人質兼、クライン家の血を残す為の後継者となるわ」


ほー?


スッゲェな。


何でこんなに天才にエンカウントするんですかね?


エイダも天才だし、弟のシリウスも天才、妹のセシリーも天才。いや秀才かね?そこは良いとして、このフランシスもそうだってことか。


何故か?


自明だよな?


齢十二歳にして、『相手の強さを認められる』ことと、『損切りができる』こと。


この二つは、大人でもできない奴が多い。


ましてや、こいつは侯爵家に生まれた魔導師の子だぞ?増長して相手の力を認められなくてもおかしくはないんだ。


それが、こんな行動を取れる。


ある程度の能力があることは大前提として、じゃあ何が人間を優秀たらしめるか?という問いが有った時、『思い切りの良さ』、つまるところの『決断力』が大きな要因の一つとして挙げられるだろう。


素早く、的確で、大胆な決断。それこそがビジネスマンには肝要だ。


家、血を残すという考え方の根本は正に中世人だがな。


ああ、実に面白い。


クソみたいな世界だが、素晴らしい人間はいるものだな。


「降伏を受け入れよう、臣従も許す。お前が従う限り、お前の実家にも配慮する」


「ありがとうございます、エグザス様」


まあ、何だ。


一言でまとめると、「物分かりがいいガキは好きだ」ということだ。




「とは言え、そう謙らなくて良いぞ」


「そ、そう?」


「俺は、お前のように賢い奴は大好きだ。気安く接してくれ」


「分かったわ、エグザス」


何度も言うが、派閥を作りたいのだ。


優秀な奴はいくらいても良い。


さてさて、パティが焼けたな。


ポテトとナゲットも揚がった。


コーラも生成した……、これには死ぬほど苦労した!スパイスの配合がね!赤いラベルのコーラ社は凄い、あの味のコーラはどうしても再現できなかった……。


それとコールスローサラダも。


俺は指を弾いて、データファイル内のCGデータから、机と椅子を取り出してプリントする。


パッと、まるで最初からそこに有ったかのように生成される机と椅子。


そこに、エイダとフランシスを座らせた。


エイダはいつも通りだが、フランシスは戦慄しているようだった。


そんな彼女達の目の前に……、ドン!


チーズバーガー!


「わーい!いただきまーす!」


「あ、えと……」


「食って良いぞ、フランちゃん」


「え、ええ」


うむ!


チーズバーガーは、美味い!


チーズバーガーもなあ……。


この世にないものを生成するのは難しいし、食品は特に、構成が少しでも違うと味が変わる。


だから、村で何度も様々な実験を繰り返し、様々な食品を作った。


幸い、発酵や混成などは魔法でいくらでも早められるし、一度手にしたものはデータファイルに保存して複製できるとは言え、かなり苦労したものだ。


特にこのチェダーチーズはね!大変でね!


幸い舌には自信があるから、食べればチーズの種類の違いくらいはそれなりに分かるのだが、作った経験は流石にないからなあ。


そもそもこれがチェダーチーズなのかどうかすら分からんぞ……?味と見た目はチェダーチーズになっているが。チェダーチーズの定義は流石に知らん。


分からない、俺は雰囲気でチーズを作っている……。


「な、何これ!美味しいわ!」


だが、フランシスはお気に召したようだ。


口を汚しながらハンバーガーにかぶりついている。


俺は、フランシスに、千切れんばかりに振られる犬の尻尾を幻視した。


餌付けって楽しいな!




「ふぅー」


デザートのショートケーキまで平らげたフランシスは、腹を撫でながら息を吐いた。


「あ、その、ありがと!」


「うん、まあ、お前はもう少し食った方が良いぞ」


「それってどう言う意味よ?!」


「胸が貧相だって意味」


「普通そう言うことはっきり言う?!」


言う。


「むぅ……、気にしてるのに……」


「まあ、需要はあるんじゃないか?変態ウケするよ」


「慰めてるのそれ?!」


「貶してる」


「貶さないでっ?!」


いやー、可愛いなー、こいつ。

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