第30話 偉そうなロリを凹ませるのは気持ちが良い

「え?ダルい」


フランシスなる女がなんか偉そうに話を聞かせろと言ってきたので、とりあえず断る。


知っているがお前の態度が気に入らない。


「え?!普通ここで断る?!ここは快くお話ししてくれるべき時じゃないかしら?!」


えー?


「ほ、ほら、ディナーを出すから!」


「いや自分で作るし」


「えーっと、えーっと……、じゃあ、チューしてあげる!」


「臭そうだし」


「なあっ?!!く、臭そう?!!」


俺は、フランシスを捕まえて匂いを嗅ぐ。


うわ、汗臭い……。


「うーん、やっぱり臭いな」


「しょ、しょうがないでしょ?!旅の最中に沐浴なんてできないんだから!」


あー、そうね、それもあるか。


「でも、俺は毎日風呂入ってるからなあ」


魔法で。


「くんくん……、本当ね……。アンタ、すごく良い香りがするわ……」


俺の髪を一房手に取り、匂いを嗅ぐフランシス。俺はロン毛だ。


ふと、至近距離でこちらと目が合う。


すると、フランシスの顔は、一瞬で真っ赤になった。


「う、えと、あ、アンタ!その……、い、良い男じゃない!」


あーはいはい、顔ね。


顔良いんだよ俺。


どれくらい顔がいいかというと、漫画ならバックグラウンドに花が咲くレベル?


マジな話、顔だけなら、少女漫画のイケメンキャラなんて目じゃないくらいにイケメンだ。「おもしれー女」とか言っても余裕で許されるレベル。


身綺麗だし、顔も良いから、女にはモテる。


服も新調したから更にイケメンは加速した。


実際の話、村の若い女達はほぼ全員俺に惚れていたらしく、魔導師だと露見する前から追っかけがいたくらいだ。


で、だ。


フランシス。


可愛くはある。


洗えばまあ、抱いてやっても良いかな?


俺は指を弾く。


「きゃっ!」


フランシスは、びくりと身体を硬直させた。


「ん?ああ、お前が臭いから、汚れを消してやっただけだ」


デリートマジックで体表の汚れを消してやった。


「そ、そうなの。消されるかと思ってびっくりしたわ……」


「大丈夫だ、消そうと思わなければ消えないから」


「そ、そうなの……?え?!じゃあ、何かあれば消されるってこと?!」


「まあその時は、目撃者全員を消して『なかったこと』にするから……」


「邪悪?!」


そんなん言われましても……。


「安心しろ、存在の根源から消してやるから、痛みを感じる間も無く一瞬で消えられるぞ!」


「安心できないわよ?!」


「それは良いからとりあえずチューしてくれ」


「えっ、あ、うん……」


頬を染めて、俺に触れたか触れないかくらいのキスをしてくるフランシス。


あらまあ、可愛いね。


だが俺はそういうお遊びみたいなキスは許さない。


「にゃ?!んんっ……?!」


俺は、フランシスを抱きしめて、思い切りキスしてやった。思いっきり舌も入れた。


「な、な、な……?!」


エラーを吐いているフランシスを無視して、俺は飯の準備を始める。


今日はハンバーガーにするっかー。




俺がハンバーガーのパティを焼いていると、再びフランシスが寄ってきた。


「えっと、えっと、その、ね?」


「どうしたフランちゃん」


「フ、フランちゃん?!そ、その、ファーストキス……」


「ん?ああ、気にするなよ」


「逆ゥー!私が言うべき台詞よそれ?!」


「で?どうした?飯でもタカリにきたか?」


「い、いや、それは……、あっ!美味しそう!」


パティが鉄板で焼かれて、豊かな肉と香辛料の香りが広がる。


「なんだ、やっぱりタカリか。まあ、顔がいいから恵んでやるよ」


「ち、違くて!その、ファーストキスが!」


「えっ?処女もくれる?」


「あげないわよ!!!」


「いくらだ?」


「お金の問題じゃないわよ?!ってか、ちゃんと話を聞いて!」


ンモー、めんどくせぇなあ。


「何なんだ?」


「乙女の唇を無理矢理奪った責任を取りなさい!」


は?


何だそれ?


「どうしろって?」


「騎士爵の子程度に手篭めにされたと言えば、父上はお怒りになるわ……。だから、私と正式に婚約できるくらいの手柄を立てなさい!」


「やーだよめんどくせぇ」


「なっ……?!」


「国や教会から認められずとも生きていける方法はある。俺はそうするだけだ。最悪、領地に戻れば暮らしていける」


「そ……、そんなの、無理よ!」


「何故無理なんだ?」


「国家に牙を剥くような逆賊、早々に討滅されるわ!」


「討滅?そんなことをする奴らはこうしてやればいい」


俺は指を弾く。


すると、無限に広がるような野道が削られ、地平線の彼方まで何もない空き地ができた。


もし、十万の軍勢がここにいたとしても、俺には敵わないのだと示したのだ。


「ッ……!」


顔を青くして息を呑むフランシス。


赤くなったり青くなったり、忙しない奴だ。


「あ……、暗殺は?」


「こうすりゃいい」


俺は指を弾く。


すると、鋼のゴーレムがゾロゾロと生み出され、俺の周りを固めた。


「た、食べ物は?」


「こうだな」


俺は指を弾く。


パン種を生成して、エイダに渡した。


息が上がっている、興奮している、恐怖しているフランシス。


「あ……、アンタは、神様なの?」


「違う。だが、魔法を使いこなせれば、人は神にでもなれるんだよ」


尤も、真に神などという存在がいたならば、それは俺ですら勝てないだろう。


俺は、人間が想像できることは大体できるようになったが、神ならば、「人間が想像すらできない圧倒的な力」があるはずだからな。

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