第4話

ピロリン♪ピロリン♪


(夢乃からか……)


「もしもし」


『ヤッホー。健次、元気?』


「ああ、元気だぞ」


『あのね。流れるプールのチケットを二枚貰ったから、一緒に行かない?』


「流れるプールか」


『うん』


「わかった。行くよ」


(ラッキーだな)


『じゃあ、二時間後。あたいの家に集合ね』


(おい。そういうのって当日じゃなく事前に言うものじゃないの?)


『じゃあ、またね♪』


(まったくぅ)


 僕はお昼を食べた後、すぐに支度をし夢乃の家へと向かった。


 ◆



ピンポーン


(ガチャ)


「健次、早かったね」

「まあな」


(夢乃さぁ。Tシャツが透けてるじゃん。大きいからクッキリわかるし)


「夢乃。白いTシャツじゃ透けて見えるから、濃い目の色のTシャツ着てきなよ」

「だいじょーぶ! これ水着だよ」

「そのまま行くのか?」

「ん? そうだけど」

「帰るときに着ていくヤツも準備した方がいいんじゃないか? 濡れたままの水着を着ることになるだろ」

「ああ、そっか。心配してくれてありがとう! ノーパンノーブラになるところだった」


(まあ、濡れたままの水着を着ていてもいいんだけれど)


「健次、ちょっと待っててね」


 ◆


 僕らは流れるプールへと向かう。施設に着き、中に入るとウォータースライダーが目に入ってきた。


「健次! 健次! あれやろ!」

「夢乃。その前に、まず体操をしよう」

「大丈夫だよ。早く行こ!」


(はあ、言っても聞いてくれないか)


 僕らはウォータースライダーのスタート地点まで登る。そこに着くと、


「健次……ここって、高いんだね……」

「ん? もしかして高いの苦手?」


 夢乃はコクコクと首を縦に振る。


「大丈夫。ほら、手を繋ごう」

「うん」


(手も柔らかいんだな)


 夢乃と手を繋ぎながら移動すると、僕らはウォータースライダースライダーの入口にいる係員さんに声をかけられた。


「一人ずつ滑ります? それとも二人一緒に滑ります?」

「二人!!」


(一人で滑るの怖いんだな。夢乃)


「夢乃、どっちが前になる?」

「うぅぅ、健次で」

「わかった」


(高いからな。前だと怖いだろう)



「じゃあ、いってらっしゃい」


「しっかり捕まって」

「うん」


(いやー、煩悩が振りほどけない。だって柔らかいんだもん)


「よし!」


「うぉぉぉぉ」「きゃぁぁぁぁ」


 ◆


「ははは、楽しい! 健次、もう一回やろうよ」

「高い所大丈夫?」

「もう大丈夫!」


 ◆


「ははは、気持ちいいね。スピード感最高!」


(僕は別の意味でも気持ちいいんだけど)


 ◆


「ははは、今度はあたいが前になりたい!」

「えっ、もう一回滑るの?」

「おう!」


 ◆


 結局、ウォータースライダーを十二回滑って、夢乃は満足したようだ。


「じゃあ、健次帰ろうか!」


(泳がないの? 流れるプールの方は楽しまないの?)


「そうだね。帰ったら夏休みの課題をやろうか」

「ナ、ナンノコトカナ?」

「問答無用でやるぞ」

「イヤだぁぁーー」


 僕は夢乃の手を引いて、夢乃の家まで帰ることにした。


(ホント、世話がやけるなぁ)

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