深夜の背徳日記

@hato_kun_

第1話フォンダンショコラ

深夜2時、夜も更けてきて近くの県道を通る車の数も減ってより一層静かになる。

目の前に、羊のような巻き角を生やした自称”悪魔”を名乗るそいつは、見た目は15歳程度の男?女?どちらともつかぬ、ゆるくパーマがかった白い髪で”ふわふわ”と言う擬音が具現化したかのよう中性的な見た目をした誰が見ても100点をつけるような美少年がそこに居た。


深夜に突然現れた悪魔サンとやらは突然ワケの分からないことを言い出した。

「オニーサンさ?ボクとイケナイことしない???」

そう言うと悪魔は俺のことをベッドに押し倒してきたドクンっと心臓の音が高鳴る


いや俺ノンケだけど!?でもだれもが認める絶世の美少年ですよ????てかまつ毛長っ…それにミルクみたいないい匂いがする…


悪魔の瘴気?のせいだろうか、つい色気にクラッと来てしまった。


俺は虚勢をはり、押し倒されかけた身体を跳ね除けた

「ッハ?せっかく悪魔が来るなら美女なサキュバスがよかったんだがねぇ?

ヒョロガキな悪魔さんが独身男の一人暮らしの部屋に何用で?」


悪魔を名乗るそいつはニカリっと笑いながらこう答えた

「今からさ?イケナイことしない?一緒に作ろう……ネ?」

「一体何を?」

「ふふふ…2人で罪を重ねちゃおうか…」

(ゴクリ…これは思わず生唾を飲んだ…)

いや、俺ノンケだけど絶世の美少年にそんなふうに言い寄られたらね?期待しちゃうじゃない?ちょっとだけエッチなこと。

そいつは寝惚けた頭を覚ますついでにシャワー浴びて手を洗ってこいと言うのでいつもより念入りに洗った、石鹸で2回洗った。あと言われたので爪も短く切り揃えた。



「えーっと、ココアパウダーと卵とバターと…

へぇ。お兄さん一人暮らしなのに凄いね、あっバニラエッセンスもある。」

……………?


なんだ?台所に戻ると悪魔はエプロンを着ている。

全然事態が飲み込めなかった。


「本当は製菓用のチョコがあれば良かったんだけど、まぁ仕方がないよねでも純ココアがあるのは感心しちゃったナ!」


「じゃあ一緒に作ろうっ♡フォンダンショコラ」


「なぜ!WHY?こんな深夜に製菓!?」

思わず驚いて近所迷惑になる大声で聞き返した。


「ウルサっ…いやーボクね、インキュバスなんだけど人の背徳的な行いをした時のエネルギーを糧に生きてるの

たださ、最近は多様性とかでいろんな生き方を認めろってことで成人男性だけターゲットにして性欲を集めるより他に効率的に背徳エネルギーを集める方法を模索してたワケ。


そこで目につけたのが”深夜の背徳的な行い”に対するエネルギー。」


「背徳的な行いって…例えば…?」

「え〜色々あるでしょー???深夜だからって色々制限したり我慢したりすること。

ぼくはそう言う背徳的な行動から発生するエネルギーを糧にしてるんだ。分かった?」

「分かったような…分からんような…。」

「深夜に食べるカレーヌードルって背徳的な美味しさだよね?」

「それは分かる。」

「つまり、まぁそう言うこと。オニーサンには悪いようにはしないから」



「じゃあまずは粉物振るいと、計りものしちゃおうか。後で便利だからね。」

「バター130g & 砂糖130g!?このレシピ間違ってないか?」

「そうだよね〜製菓ふだんしない人って油脂や砂糖の量にビビっちゃうよね〜。でもコレが美味しさの秘訣だからケチったらダメだよ〜?」

「うひぃ。だから太るわけだ。」

「カロリーは正義だよ〜。」


「ベーキングパウダーないから今回はホットケーキミックスで代用してっと…。ダマにならないようにほい、コネコネっと」


「型になるようなものは…おっシリコン型があるじゃん?どうしたのコレ?」

「あぁそれは弁当用のオカズカップで、昔買ったやつだな。最近は昼食はもっぱら外食で済ましちまうから使ってなかったな。」


「耐熱対応してるし大丈夫だね…念の為引っ付かないようにシリコンカップにもサラダ油塗って180度で予熱したオーブンに17分間ブン!

洗い物も今のうちに済ませちゃおうか、先に済ませて濡れた布巾もオーブンの取手に掛けとけば乾くからね。」



やたらこの悪魔製菓の手際いいし人懐っこいな、懐かれて嫌な感じはしない。

「おにーさん、結構マメなんだね!お弁当とかも作ってたんだー。」

「ん?まぁな、最近仕事が多忙のせいで全然作れなかったけど。筋トレとかも含めてまぁ凝り性なのかも。」

「筋トレ?あぁ通りで、一般的な男性よりガッチリしてると思った!ヘェ〜腕フット!!胸板あつい!!!すごーい触っていい???」

指先が胸に触れる…ンッ…微かに気持ちよさの電流が走る

無邪気にこいつ無遠慮に触りやがるが的確に気持ちよくなるように撫でてきやがる。くそっ俺はノンケだぞ!インキュバスめ。


甘い香りが部屋一面に立ち込める

「くっ…なんか殺人的に腹が減る匂いなんだが…」

「この時間にバターとチョコの匂いヤバイよねー。もしこの匂い一生我慢しろって言われたらボクなら思わず銀貨三十枚でイエスをユダヤ教に売り飛ばしちゃうかも。」

「突っ込みづらいから宗教ジョークはほどほど話にしような?」


グゥ〜〜〜おもわず匂いに耐えきれず腹の虫を鳴らした。

我慢できん…さきに飲み物でも用意しておくか。

「オマエ何飲む?」

「あっぼく!ホットミルク〜♡」


その瞬間「ちーん♪」


待ってました!!!


「なぁ!悪魔食べていいか??」

「火傷するからダメだよー????トングで網の上に移動させて粗熱取ってからのほうが、生地が落ち着いて美味しいからね。それまでがーまーん!

それよりもオニーサン悪事に更に手を染める気概はあるかい???(ニカリッ」


「は……話を聞こうか…なっ…オマエ犯罪スレスレの行為じゃないか?そんなことが赦されていいのか??」

「カロリーは正義だよ(ニカリッ」


「はい出来たよー。」




〜焼きたてフォンダンショコラ ハーゲンダッツ添え〜




「こんなんさ〜深夜に食べさせるなんて背徳行為そのものでしょ!!フォークで軽い生地をサクリと割るとアツアツの垂れてくる中のショコラに冷たいハーゲンダッツ!!!」

「おいしい〜!コレすこし残して、冷やしてから食べても絶対美味しいよ〜」

「おい悪魔よ、こんな美味しいもの残ると思うか?」

「わかる〜無理だよね〜」


俺と悪魔とで6個フォンダンショコラペロリと平らげてしまった。

「おにーさん!コレからもっと一緒に深夜に背徳的なコトしようね〜(ニカリッ」


あかん…この満足感…この背徳感はヤバい……。争えない……。


そんなワケで俺と悪魔との深夜の戦いが始まった訳で、そんな初夜のお話。

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