第4話
「嘘だろ……」
コックピットに駆け込んだ私達が見たのは、さっきの奴等とは比べ物にならないほどの大きさのエイリアンだった。三メートルは超えてる長い身体を屈めて、びちゃびちゃと何かを食らっている。
今まで見てきたのとは違って、全身がどす黒い。
コックピットの中は地獄絵図だった。
船長を含め数人はいた人間の乗務員、それをサポートする数体のアンドロイド、それらが細切れになって床に散っている。一人として原型を留めていなかった。
肉片の間を埋め尽くしているのはラグビーボールに似た白い物体で、たぶん、あいつらの卵だ。
「うええ……キモすぎるう……」
姫ちゃんが口を押さえて嫌そうな声を出した。あまりの血生臭さに私も吐きそう。
「あいつが親玉ってところかね」
植木は近場の卵を踏み潰した。粘度の高い音がして、彼の右足はネバネバしたものに塗れた。
その物音に、黒いエイリアンが振り返った、と思った時には視界から消えていた。
声を上げる間もなく、私は姫ちゃんに突き飛ばされた。尻餅をつくよりも先に、立っていた場所にエイリアンの爪が突き立った。速い。残像すら残らない。
姫ちゃんがふわりと白い布のような物を投げた。おしぼりだ。エイリアンがそちらに反応して飛びついたところに、彼女は背後から頭部目掛けて回し蹴りを繰り出す。
「
その台詞を聞くまでもなく、エイリアンがびくともしていないのが見て取れた。
植木が後に続いて踵のナイフを突き立てようとしたけど、乾いた音と共に刃先が折れた。チッ、と大きな舌打ちが漏れる。
頼もしかった二人の攻撃が全く効いていない。
着地した二人を、長い尻尾が薙ぎ払った。
「姫ちゃん!」
思うよりも先に身体が動いて、同時に私は後悔した。しまった。あいつは動く物に反応してたじゃない。
私、動いちゃった。
頭上に影が差す。大きく開いたエイリアンの口の中は、宇宙よりも暗かった。
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