ハリネズミのハリー 冒険編第6話

@peacetohanage

第1話

三人合わせて釣れたのは三匹。

三匹ともヤーマが一人で釣りました。

勝敗の軍敗はヤーマに決まり、ハリーと蝶のお姫様はささやかな拍手を送ります。

ヤーマがバケツを持ち上げると、海の家を指差します。

「釣れた魚はあの家で食べる事が出来るのさ!一人一匹ずつ、余りは無し」

ハリーと蝶のお姫様はもっと拍手をします。

三人が連れ立って桟橋から降りると、さらさらの砂浜に再び足を埋めました。

ゆっくりと太陽は傾き、空は少しばかりオレンジ掛かっています。

「潮風が変わったな?早く魚を焼いて食べよう」

ハリーは竿を持っていない方の手で二人を急かします。

「魚を食べたら、後は帰るばかりさ?忘れ物はするなよ」

「私、バスケットに一杯貝を拾ったわ!釣りをしているフリをして、こっそり集めたの」

「家に帰ったら僕にも見せてね!」

ハリーにとっては宝物の匂いがぷんぷんとします。

海の家に戸口は無く開けていて、平たい木造の屋根の下にはテーブルが等間隔に並んでいました。

天井のプロペラがゆっくりと回り、お客を歓迎します。

奥にはカウンターが有り、数人の人達はカクテルを楽しんでいました。

カウンターの奥にはカメの店主が居て、ヤーマは彼にバケツを手渡します。

「塩焼きをお願いします」

「良いとも。次いでにカクテルも如何?」

「ありがとう!僕はいつものシャーリーテンプルにするよ」

「じゃあ、僕はブルーハワイにするよ!今はそう言う気分なのさ」

「私はレインボーにするわ?私にぴったりでしよ」

三人は空いているテーブルに座ると、夕陽に染まり行く太陽を眺めます。

波の音は次第に強まっている気がしました。

遠くの沖の上を一艘の海賊船が滑って進みます。

「海賊だ!旗を見て」

「人間の髑髏だ。怖いな、こちらへ来なけりゃ良いけれど」

「まぁ!素敵。私、海賊にも憧れが有るのよ?」

蝶のお姫様は海の世界で有名だったフランシスロロノワの話しを始めます。

ヤーマもハリーも胸をどきどきさせながら聞いていました。

その内に海賊船は、水平線の向こう側へと姿を消してしまいます。

「さぁ、お待たせ!塩焼きとカクテルだよ」

カメが運んで来てくれました。

色鮮やかなカクテルに、蝶のお姫様は大はしゃぎ。

ハリーも大人ぶっていましたが、内心ではわくわくを抑えています。

三人がカクテルを味見すると、乾いていた喉が一気に蘇ります。

塩焼きも出来立てで、いつもの塩焼きとは一味違いました。

お腹も喉も一杯になった三人は、忘れ物チェックをして席を後にします。

もうお客はほとんど見当たらず、次第に夜が訪れる予感がしていました。

「さようなら、潮風」

ハリーは囁きます。

ヤシの木が三人に手を振り、お別れを言います。

階段を上り、駐車場に着くと荷物を仕舞ってそれぞれの席に乗り込みます。

「また来よう!次はビーチバレーさ」

「良いね!魚釣りも良かったけれど」

「私はのんびり日焼けもしてみたいわね?」

エンジンが勢い良く掛かると、オープンカーはゆっくりと発車をします。

波の音はまだ、鼓膜に寄せて返してを繰り返していました。


続く

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