第33話 夢浮橋
「おお、葵、凄かったな。だが酷い顔だぞ無理してないか?」
「うん、大丈夫。ありがとう。アシュラーボーンの「製法」が垣間見えちゃってね。熱くなっちゃった。」
「二人とも、私たちが追いつくよりも早く決着つけたの?早すぎるわね。」
「特に葵は化け物ネ。いや、エリカもだいぶ無法ヨ。」
「へいへい。葵に関しては嫉妬すら覚えねーよ。ただただ規格外だわ。」
「うん。じゃあ、フローラ救援に行こうか。」
そうしてアナスタシアの死体を検分しようとした時だった。
「はははははは!ひっかっかたね、おばさん。」
奴の懐の中の宝珠
主虹と副虹が両方できている。この大きさで?虹が円を描く?ナイアガラの滝くらいの大きさが必要だ。なんでこんなに小さくまとまっている?
「天国の門は虹でできているのよ。このまま引きずり込んであげるわ、無教養なおばさん。」
「!?」
これだから嫌になる。切ったら死んでほしいものだ。あと、そんなに遠くにある首で話さないでほしい。
「痛い痛い痛い痛い痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛!」
「馬鹿め、ツボを晒して勝てると思ってるのお嬢ちゃん。」
腕の急所を押してあげたら、パッと手を放してくれた。
「くそおお、覚えてなさいよ!」
「あ、やべ。」
死体が動いたので手を放してもらったが、掴んでおかないといけないの私の方じゃん。
「葵、どけ、いろいろぶち込む。」
3人が思い思いに投擲攻撃を行っているが、虹の向こうのアナスタシアには届かない。
「じゃあああねえええ!これで
逃げられた。こんな死に逃げは初めてだ。いや、戦いで負けたことはないから勝ち逃げされたことはないが、普通は追い越せないままで先立たれるのよなあ。
「ごめーん。嫌な気配がしたから突き飛ばしちゃった。」
「いや、それでいいヨ。それより葵!解呪するね。
「え?そんなにヤバかった?」
「濃密な死の匂いがするネ?なんで無事なのカ?」
「【御法】使いまくったからかな?なんでだろうね?」
結局、全部は取り切れなかったらしい。「まあ、悪い影響がないならいいネ!」とのことだ。
「じゃあ、フローラを救出に行くか。」
「おいおいおい、こんなものか?」
「ぐううう、おのれ、」
立っていたのはフローラの方だった。ナオミの方は膝をついている。
「なぜ、なぜ妾の剣が見切られるのだ。」
「簡単だよ、葵がお前の上位互換だからだ。正直、葵と模擬戦してなかったら苦労したとは思うぞ。奴を見ていると分からなかった術理が、お前からなら良く見える。」
葵の情報によればこいつは劣勢と見れば体を霧にして逃げるらしい。神聖魔法の効き目は低かったらしいので、防ぎ方は分からない。
だから、こうしてぼこぼこにする。
「思うに、【
手甲、盾、などでタコ殴りにする。極力血は浴びたくない。どうせこいつは逃げるのだ。少しでも多く情報を吐かせよう。と考えていた時だった。
「お待たせ!」
葵たちが帰ってきた。戦域がガラガラと崩れ落ちる。
「なんだフローラが優勢じゃん。」
「殿を名乗り出るからひやひやしたのよ。」
「お、血の宴?騎士様も結構よい趣味してるんじゃん。」
「馬鹿言うな。これは狩りだ。戦いではない。」
唐突にナオミが笑い始めた。
「ふはははっは、貴様ら、アナスタシアを殺したのだな?力が満ち満ちてくるわ。
「まじか!」って顔でフローラににらまれた。ごめんて。まさか死に戻り機能搭載とは思わないじゃん。
「これで、策は成った。この勝負私の勝ちだな。」
悔しいがその通りだ。どちらが立っていたかではない。目的を達した方が勝ちなのだ。
「ま、魔王軍将最初の捕虜就任おめでとうと言っておくよ。二階級降格されても知らないよお。」
とりあえず煽る。敵は煽っておくものさ戦場ではね。
「【雲隠】!」「【戦域構築:行幸】。」同時だった。
「やっぱり逃げられないよねえ。」
「なんだこの奇怪な技は?逃げられぬ。【行幸】だと。氷雪系の斬撃ではないのか?」
「いや、私もこっちで閃いたんで取り込んでみたんだよ。ナオミのところでは違うのかな。ありがとう研究してみるよ。それより、やっぱり【雲隠】できないでしょ。これを狙ってたんだよねえ。必殺の戦域なんだよ、【行幸】は。」
「必殺。そういうことか。それがこの戦域効果。対象者1名は死ぬまで絶対に逃さない戦域というわけか。」
「そ、イメージ通りの戦域が組めてよかったよ。アナスタシアって子。あれも最初から死体の操り人形なんでしょう。おかげでこの戦域では束縛できなかったよ。既に死んでたら殺せないもんね。」
「やはり脅威だな。葵。」
「お、奥の手見せてくれるの?」
「ああ、お前にこれは見せたくなかったがやむを得ない。【戦域脱構築:夢浮橋】。」
薄紫色の光のベールがナオミを覆うと、瞬く間に消えてしまった。
「え?戦域で捕捉できない?消えた?」
でもほかのメンバーは別の驚きがあったみたい。
「時空間魔法?魔王でもないのに?」
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