第27話 五、後、GO!

 イカレたメンバーを紹介するぜ。


 王・茉莉ワン・モーリー。僧侶。パーティーの回復役。多少殴る蹴るも可能。三節棍も持っているので、自衛も可能。身のこなしが僧侶としては抜群。何とは言わないがグレートだ。


 次に、クバラ。魔法使い。火と水の大火力魔術が使える。王国内でもトップクラスの魔術師。水の魔術から派生した水薬で回復も可能。南の海以南の出身で、黒い肌が綺麗。髪が赤いのは水泳訓練のせいらしい。とてもノーブルな感じ。ルナといい、魔術師はこんな感じ?


 次に前衛。フローラ=パール。攻撃をいなしたり受けたりするいわゆる受けタンク。守るより殴る方が早いタイプだったのにできるのかよ!と突っ込みたくなったが、かなり頑丈なプレートアーマーを着ているので、敵の攻撃を迎撃するように守ってくれそう。うーん、ブリリアント。


 エリカ。クバラと組んでいた前衛で、二人まとめて採用した。斧と弓を使う遠近両対応の戦士。金髪碧眼で一番背が高い。地属性魔術も使えるので、武器の予備をあまり持たなくてよい。豪放磊落の避けタンク。けっこう肌の露出が多い。金髪碧眼のお姉さま。エクセレントだ。


 そして私。私もエリカ同様、攻撃を避けるタイプなので、後衛は流れ弾に対処できる二人にしたのだ。なかなかいいバランスじゃないだろうか。あと、アマゾネスですね、って言ったやつは切る。


「では、とりあえず今日は連携強化のために迷宮1階層を探索しましょう。」


「アタイ達なら、迷宮は散々潜ってるから、大事をとったとしても地下7階でいいんじゃないか?これがあれば、すぐ入り口まで戻れるしな。」


「え?そんなものあるの。」


「ええ、この戻り石アリアドネイトは、迷宮地下10階を踏破すると得られるんだけど、これに魔力を込めるとこの迷宮の入り口に戻ってこれるのよ。」


「そうネ。私も持ってるヨ。」


「なるほどねえ。こんな神秘が転がってるのか。この迷宮。」


「その桔梗ききょうもこの迷宮のドロップ品です。迷宮のドロップ品には何らかの効果がある場合が多いのですが、桔梗の持つ特殊効果は現在分かっていません。切れ味がすこぶる良いくらいなのです。」


「なるほどね。それとフローラ、丁寧語は止めようよ。」


「癖ですので、お気になさらず。」


「私が気になるの。」


「努力します。あ、努力する。」


「堅い。」


「まあ、騎士ですので。あ、」


「ふふふふふ。仲良しなのね。」


「アタイ達も負けてられないな。」


「ああ!?仲間外れはよくないネ!」


 賑やかでいいじゃない。こんな感じだが全員A級冒険者でも上位の実力者だ。悪くないじゃない。


 ギルド迷宮前線支部で手続きを済ませ、迷宮に入る。


「地下迷宮って暗いのかと思ってたけど、こんなに明るいんだね。」


「そうだな、ここらは天井やら壁やら床やらが全部光ってるんだ。」


「そうなのよ、私も初めてここに入ったとき照明魔法が要らないんだってびっくりしたのよ。」


「たまに消えたりするところもあるから注意ネ。」


 迷宮の通路は、天井は高さ3mくらい。道幅も10mくらい。たしかに5人一組が上限だな。戦闘の邪魔になる。部屋となると高さも広さもまちまちらしい。


「葵、敵の出現ネ。よく見るヨ。」


 茉莉の警告の先を見ると、光の玉が一か所に凝集し、魔物が生じるところだった。あれは、骸骨剣士?腕が6本、ブロードソードも6本。


「カタカタカタ。」


「ふんふん。お嬢さん、お綺麗ですね。僕と一緒に踊りませんか?か。意外と紳士な魔物なのかな?」


「葵殿、冗談を言ってる場合ではない。」


「ふざけてる場合ちゃうネ。あれはアシュラーボーン。普通なら地下36階に出現する敵ネ。」


「燃やすか、祓うか、清めるかですがどうします?」


「ああ、アタイの故郷じゃ、ヴァルハラに行けなかった戦士の末路と言われてる。永劫徒花を咲かせ続けるのさ。できれば清めてやりたいが、さて、誰かできるか?アタイもクバラも清めるのはできねえ。」


「私ならできるネ。でもあいつ強いネ。隙を作る必要あるヨ。」


「そうか、ならこれでいけるかな。【御法みのり】。」


 袈裟切り。鎖骨、肋骨、脊椎と、骨はスコンと真っ二つ。

 これは悲愛の斬撃。助かる見込みのない仲間を無意味な痛痒から救済する介錯の一振り。

 名もなき戦士よ。その遺志私が継ごうじゃないか。安らかな眠りを。


「「「「え?」」」」


「効いたみたいね。霧散して消えちゃった。あ、剣は置いていくんだね。」


「ちょっと待つね、なぜあの剣衾けんぶすまに突っ込めるネ。というか、いつのまに剣を抜いたネ。」


「え?切ってくれとばかりに隙を作ってたから飛び込んだだけよ。倒してほしかったのかな。咲き誇っても仕方ない徒花を散らせてほしいというのは本当かもしれないねえ。」


「私にはさっぱりだったわ。さすが前衛さんね。」


「一緒にしないでくれ。アタイも隙は見えてたけど、あれは誘ってる動きじゃねえのかよ。」


「ふふん。まあ、私の実力は信じてくれた?ま、油断せず行こう。」


「ああ、葵にはいつも驚かされますね。ですが、事態は結構切迫してませんか?階層にして35層分は虹の宝珠プリンキパールが上がってきているのでは。」


「そうね。今まではほんのり強くなってきたかなって感じだったのに、ここにきて急に強化のペースが上がったわ。」


 しかし、この懸念は失当だったかもしれない。ゴブリン3体5セット、オーク1体2セット、月歯ウサギ3体4セットと比較的浅い階層特有のラインナップが続いた。


「うんうん。じゃあ連携の確認はこの辺にして、明日から本格的に探索しましょう。」


「ええ、では戻り石アリアドネイトを。」


「おお、本当に一瞬。」


「では、今日はここの3階で宿泊です。それと出発前にギルドの方に遠征用装備を組んでもらったので、要不要の判断をお願いします。」


「さすがフローラ。仕事ができる。」


 フローラは、「騎士ですから。」と言って荷物のチェックを始めたのだった。

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