第4話 かわいいは最強。あいさつは無敵。

「というわけで、ジョン君の先生になりました。緋川葵ひかわあおいです。よろしくお願いします」


 やはりあいさつは大事。ジョンのパーティーメンバーと顔合わせ。

 ジョンは4人組で行動していたらしい。ジョアンナ、ジャンヌ、ジェームズ、そしてジョン。Jの一族か?と思ったが下の名前なんだよな。


 みんな12歳で村を追い出され、近くの街で冒険者登録をし、今はギルドの依頼達成のために遠征に来ているとのこと。女の子の方が背が高い時期か。いずれにしても、みんな美形だしかわいいんだよなあ。

 というかジョン12歳なのか。女の子と思ってたから年齢低めに見積もっちゃったよ。


「なにか手伝うことあります?」


「じゃあ、ゴブリン討伐をお願いしても? 正直、ジョンを助けてもらっておいてなんですが、信頼しきれないので」


「適切な判断ですね。私もみなさんのこと知らないし、急に近づかれても困りますよね」


 うんうん。よく警戒されている。いきなり出てきた変なお姉さんを信用しないなんていい子たちだ。


「ところでゴブリンですか? どんな奴です? そのゴブリンっていうのは」


「え? ゴブリンを知らない? そんなことある? もしかして理想郷出身の方?」


「すみません。田舎者なので、言葉が違うかもしれないですね」


 なんだかジョアンナの火力が強い。これは、ジョンくんのこと好いてますな。美男美女の良きカップルじゃん。青春アオハルかよ。


「こんな感じの敵ですよ先生」


 そそくさとリーフレットを持ってきたジョン君。「ごぶりん」と平易な文字で書かれていて、注意事項などは全部絵で書いてある。

 なんとなく察しはついていたが、識字率低いなここ。あ、話合わせなきゃ。


「ああ、緑鬼でしたか、なるほどここらではゴブリンっていうんですね。分かりました」


「先生はオオカミを7匹同時に倒してしまうので、ゴブリンくらい楽勝ですよ」


 ああ、今はそのキラキラを向けないでほしいなあ。ほらジョアンナさんの頬が若干膨らんでいらっしゃる。


「分かりました。このリーフレットに載っている敵は見つけ次第切っていいんですね」


 一読して頭に入れておく。敵の情報を知らなくてはならない。古今東西、敵以外を切り捨てると大問題なのだ。




「ただいま戻りました」


 日も傾いてきた頃、荷車を引きずりながら帰ってきた。


「あ、おかえりなさい、先生。って、大漁じゃないですか? どうしたんですか?」


「ああ、ジョン、ただいま。ゴブリン見つけたから、砦まで案内してもらって、殲滅せんめつしたのよ。やつらが蓄えてた物資がこれで、なんか奥にいたでかいやつの首がこれ」


「先生。一言の情報量が多いのでかみ砕いてください」


「おけまる~」


 ジョン君のキラキラがまばゆいので、詳しく説明する。

 まず、ゴブリンを見つけたので辻斬り。このとき、動脈を切らないように2、3か所切る。できれば体の中心に近いほうがいかな。

 そのあとそのゴブリンの視界からは消えるけど、こちらは捕捉しておく。となると、またいつ切られるかも分からない恐怖から、仲間の多いほうに逃げるでしょ。ゴブリンは社会性を持つ動物だから、帰巣本能もあると読んだわけよ。


 で、ゴブリンの砦には入らなかった。いや、一匹目で確信したんだけど、あいつら人間より女性を女性と見抜く能力高いみたいで、私を女と見るや、わらわら追っかけてきたのよ。辻切られゴブリンの手当とかもしないでね。

 いや、そのゴブリンも「数はそろった勝つる」って確信してたんだけど、止血しないとさすがに死ぬじゃない?


「おかえりなさい、ゴブリンの頭に残せる記憶は2,3個が限界らしいですよ。まあ、そのゴブリンは自分が切られたことを忘れたんじゃないですか?」


 と、ジョアンナ参戦。分かった分かった。君のジョン君はもう少しで返すから待ってて。「僕にもできらあ」って言って死んでいく可能性を排除してるんだから。


 で、ゴブリンだけど森に引き込んで先頭の奴から切るじゃん。そのあと奴らの砦に漁ってたら、2mくらいのでかゴブリンがいたから、切ってきた。のこぎりももらってきたからこれで首を切ってきた。


「て感じです。」


「「一番情報が欲しいのは2mのゴブリンなんですけど」」ハモる。仲良しかよ。


「ええ?君たち脅威の判断間違ってるよ。ゴブリン5匹の方が何してくるか分かんないから怖いって」


「はいはい、そこまでですよ。晩御飯にしましょう。みんなお疲れでしょう。」とジェームズ。


 むむ、さっそくジョンに教えるぞ、と思ってたけど、伝わってないな。まあ、明日だな。

 スープが美味そうだ。

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