第2話 いじめ


 それから1週間は大変だった。『京介にケガを負わせた悪魔』という噂が一気に広まり、私はいじめをうけるようになってしまった。加藤グループには暴力をふるわれたし、教科書が無くなっていたりした。数少ない友達からは無視されるようになり……。

(はあ、京ちゃん。私、もうつらいよ……)

 そんな私を勇気付けたのは例のキーホルダーだった。私はそれをカバンに付けて大事にしている。不安な時はそれをぎゅっと握って目を瞑る。すると、不思議と不安は薄れていった。


 しかし

 しかし、ついにそのキーホルダーにまで影響がおよび、バスケットボールのキーホルダーはどこかに消えてしまった。

(京ちゃん、ごめんなさい……。っ! ごめんなさい!)

 私は泣きそうになりながらも必死に耐え、涙が流れないように空を見上げた。

(京ちゃん、空はとっても広いよ。私なんかちっぽけな存在。私なんかがいなくても世界はまわる……)

 否定的な考えが頭の中を支配して、どんどんもやもやとした感情が溢れ出す。

 学校帰り。いつもの公園のブランコに座り、空を見上げ、そして目を瞑る。


 幼い頃のふたりがそこにいた。

 公園を駆け回るふたり。私は転んで泣いてしまう。泣き叫ぶ私に京ちゃんは「……」と、何も言わない。でも、ブイサインを作った。

(どこがブイなんだよー)

 そう思いながらも、なぜか私は笑っていた。

 ふと京ちゃんが言った。

「……まもって……やるよ……」

 なんだか恥ずかしくなった私は目を逸らし「おねがい……します……」と応えた。

 しばらく気恥ずかしい時間が流れたが、私達は手を繋いで家に向かっていった。


 キーコー、キーコー。

 ブランコをこぐ音が聞こえる。

(誰だろう。なんで私の隣に……)

「って、京ちゃん! なんでここにいるの!?」

「……」

 無言のままブイサイン。

(何がブイだか分かんないよー)

「退院した」

「えっ! ほんと!?」

 ふたたびブイサインを作り、笑顔で応える。

「良かったー。ほんっとに良かった! 退院祝いに何かご馳走するよ」

 そう言う私に京ちゃんは「それよりかはボール拾いやって」と言った。

「シュートの練習? 無理しないでよね」

「分かってる」

 それから約1時間公園のバスケットコートでシュートの練習をした京ちゃんは「学校、来いよな」と心が負けそうになっていた私にそう言った。一応頷いたが不安は拭えなかった。

 私はこの1週間の出来事を京ちゃんに伝えた。すると「まもってやるよ」と、いつか聞いたセリフを聞いた。その言葉は私を一歩前に突き動かした。



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