第11話 記憶に浮かぶ人物
認証の段階が難解を極めるため、本人と異なる人間の生体情報だと弾かれる可能性がある。ゆえに、
そんな時、まるでタイミングを見計らっていたかの如く、球体の隙間から流れてきた微かな匂い。それはどこか懐かしくもありながらも、なんとも異様な感覚だった……。
「たしかに、掌紋も解除するには難しい。でも最先端技術だったペンタスがだよ、紋様認証を使うかなぁ……?」
認証装置の形状は、タッチパネルではなく掌を密着させるような固定式のタイプ。これに疑いを持つ
「おそらく機械の構造からして、これは掌紋ではなくDNA認証。本人と完全に一致しなければ、解除することは難しいかな。だったら残念だけど、諦めるしかないかも……」
システムには様々な種類があり、別の生体認証が使用されている可能性もある。もしそうであるならば、さすがの
「まあ、ここで考えても仕方ないし。駄目元でポッドを開けてみるしかないよね」
――ところが、暫く状況を見守るも、球体は微動だにせず何の反応も示さない。
「やっぱ無理だよねー、そうだよねー。もしかしたらと思ったけど、僕って何やってるんだろう……」
またしても、
その瞬間――、扉が開錠されたような音が周囲に響き渡る。
「えっ、もしかして開いたの? 本人じゃないと駄目なはずなのに、どうして……」
まさかの出来事に、驚きを隠せない
ここで諦めるのは惜しく、とりあえず中の状況を確認することにする。こうして次第に露になる過去の遺物。開口部からは霧のようなものが溢れだし、機械全体が白っぽい蒸気に覆われた。
「うわっ、霧で中が何も見えないよ」
視界を遮るほどの蒸気が充満しているせいか、
そして次の瞬間――、
「あれは…………なに?」
脱出ポッド内に見えた人影を目の当たりにした凛。そこには、座席に倒れ込む女性らしき人物。風貌は凛と似たベージュ色の艶やかな長い髪に、透き通るような白い肌。男性であれば、心奪われ魅了してしまいそうな美貌。
この姿を捉えた途端――、
「いまの記憶は…………」
それは一瞬の出来事。あたかも走馬灯のごとく、女性らしき人物に既視感を覚える。けれども、その出来事を思い出そうとするも、記憶が再び蘇ることはなかった。自身にも分からないことではあるも、記憶に浮かぶ人物と目の前の女性は同じ容姿。
脱出ポッドにいる者が誰なのか、
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