第2話
今すぐにでも君のいるアパートに向かいたいところだが、あいにく僕らは遠距離恋愛で、今日は水曜日だということもあってすぐには動けなかった。どうせまた、スマホを壊したとか返信をするのを忘れていたとかそういう類のものだと勝手に決め込んでいた。
僕の人生で1番後悔をしたのはこの時だった。
2日経った、2023年2月24日金曜日。君からの連絡は誰を通してもなく、僕は君のアパートへ行くことを決意した。
荷物は少なく、財布に携行食に水。スマホの充電器に着替えを一式リュックサックに詰めた。
僕のアパートから君の家までは、飛行機を使えば3時間くらいで着くが、今の僕にはそんな余裕はない。それに、飛行機なら最短で明日の朝、07時45分発の便になる。夜行バスを使えば時間はかかるが安く、飛行機で行く時と同じくらいの時間に着くことは可能だ。ただ、飛行機も夜行バスも地元の1番大きな駅まで時間で、君のアパートはそこからも随分とかかる。それを考慮した時、僕が君のアパートに着く頃には11時ごろになる。バイトが入っているかもしれない君が、そんな時間にアパートにいる確率は低いと考える。入れ違いになるのは避けたい。地元に帰るのが夜中になるけど仕方ない。新幹線と夜行バスを使って、できるだけ早く君の元へと向かう。
現時刻は18時50分。19時04分発の新幹線には乗れそうだ。その新幹線が21時24分に駅に着き、そこからはバスに乗り替える。このバスが21時29分発の最終便だから駅に着いたその瞬間から走るのは確定だ。もしこれを逃してしまえば、次は明朝の05時15分発のバスが最短。このバスは、飛行機や夜行バスと地元に着く時間はたいして変わらない。だから、乗り遅れたならお金を無駄にするだけじゃない。時間も大いに無駄にする。なんとしても乗らなければならないバスだ。
新幹線が駅に着いたそれと同時に僕は座席から立ち上がり、新幹線が完全停止する前だったからバランスを崩しながらも、我先に先頭で扉の前に立ち、開くと同時に走ってバスターミナルへ向かった。
僕らの地元は田舎だから、たとえ金曜日だとしても空席は必ずある。予想通り空席が8席も残っており、運転手に話を通すと快く乗せてもらえた。このバスは僕らの地元の駅に23時35分に着く。その駅の最終電車は23時42分。またしても走らないといけないが、この電車に乗れたら君のアパートがある最寄り駅に0時32分に着く。
真夜中に君のアパートを訪れるのは君に迷惑がかかるから、近くにあるホテルで夜が明けるのを待つ。
もちろん僕はホテルの予約なんてしていないから、こんな日の夜中から泊まれるホテル。一人で入るのは少し寂しいが田舎だということもあって泊まれる場所はそこしかない。
僕以外にこんな経験をしている男子がいるなら教えて欲しい。ラブホテルに男一人で宿泊なんて世にも珍しい体験だ。
僕の乗っている夜行バスは大きな橋を2回渡り、朝と夕方だけ大渋滞を起こす国道を南に走った。
もうすぐ僕らの地元で1番大きな駅へ着く。少し早いが降りる準備を始める。持ってきた水と半分食べた携行食をリュックサックに詰め込み体の前に抱えた。
バスが駅に着くと僕は誰よりも早く座席から立ち上がり、乗客の中で1番にバスから降りた。
それから僕は20秒くらい走った。田舎でバスのロータリーから駅までが徒歩でも1分圏内でとてもよかった。今だけは田舎であることを褒めよう。
券売機で切符を1つ買い、改札に立つ人に手渡しハンコを押してもらい、停車している電車に乗り込んだ。
現時刻は23時37分。5分も余裕があるということは、バスから走らずとも間に合っていたのかもしれない。まあいい。これで君のアパートにに確実に近づくことができた。
電車に揺られること約1時間。0時32分、予定通りに電車は君のアパートの最寄り駅に到着した。ここからは空きのあるラブホテルを探す。と言ってもこの街にあるラブホテルは2つだけ。どちらもネット上では空きがあるそうだが、真偽は不明だ。
さすが田舎といったところだろうか。
空きの心配をしていたが、埋まっている部屋が少な過ぎて経営の方が大丈夫なのかと心配になる。僕としては空きがあるからそれはそれでありがたい。
現時刻は0時56分。君のアパートには7時ごろに着けばいいから、5時間は寝られる。でも寝坊はできないから確実に起きられるよう頭は高く、目覚ましは5時半から2分おきに鳴らして、音量は最大。電源が切れないように充電器に差しっぱなしで、置く場所は枕元。早めに起きられたら朝風呂に入る。眠い目もそれで一気に覚めるだろう。
そう考えながら眠りについた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます