第5話
男が三人。一人の女を囲んでいる。あー、やだやだ。野蛮だねぇ。暴力を奮いたい欲、性欲、金銭欲。黒い赤、黒い紫、黒い銀色。それらの色のモヤが三人の男の身体の周りに渦巻いている。
「えーっと、そういうの、やめましょうよ。醜くて、悲しいからさ」
公園の緑地の奥、街灯の灯りが余り届かない草と土と木々の空間にいた彼らに近づきながら、オレはそう声をかけた。
「なんだ、てめえ」
一番近くにいた男がそう言うや否や殴りかかって来た。だけど、能力をオンにすれば見えるんだ、彼のやろうとしている事が。黒い赤のモヤが彼のやろうとしている事を事前にオレに見せてくれる。ゆっくり後出しジャンケンする事を許されてるようなものだ。負ける訳がない。オレが直前で避けた突進の勢いのままに、一人の男は木にぶつかってそのまま倒れた。あぁ、痛そう。うん、すぐには起き上がってこないな。
「こ、コイツ、ナンマジだ!」
あ、バレた。一人の男がオレを指さしている。
「ま、そういう訳だから、やめましょう。醜くて、悲しい行為は」
オレがそう言うと彼らは去っていった。ノびた一人の男を抱えて。
「あ、ありがとうございました」
襲われていた女が言ってきた。キラキラと眩しいピンク、喜びのゴールド、安心のグリーンが彼女の全身から溢れ出ている。どうにもダメだな。能力を全開にした後はすぐにオフに出来ない。クールダウンの時間をかけないと能力はオフに出来ない。見るつもりのない感情のモヤが見え、読むつもりのない思考が頭に入ってくる。
「無事ですか?」
一応普通の人間を装ってそんな言葉を吐いてみる。
『助かったー』『でも、この人ナンマジみたいね』「はい、平気です」『キモーい』『だけど、上手く利用も出来るのかしら』『見た目的にはアリな男ね』『私の魅力で落としてナンマジ卒業させてあげるとか?』『アリアリアリアリ』『ナシナシナシナシ』「助かりました、本当にありがとうございました」彼女の口から放たれる声になった言葉と、彼女の頭と胸から湧き出る思念が同時にオレの中に入ってくる。うるさくて仕方がない。彼女をとりまくモヤも美しい色だけのものじゃなくなっている。打算の性欲の黒いピンク、蔑みの黒い黄、値踏みの灰色……そんな色のモヤが彼女の周りに纏わりついている。マジめんどい。
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