1.属性について(S、M、リバ)

1.1 Sについて



 Sとは何か。

 「あの人はドS」とか、サディスト、と言うのと同じで、俗な言い方をすると、他人を痛めつけることに(性的な)快楽を見出す人間またはその傾向が、Sの定義である。

 Sとは、BL用語で「攻め」と表現されることも多い。あるキャラクターとあるキャラクターの、性的な交わりの中で、ある者が男性的な役割、つまり挿入する側を演じる。それが、BLで言う「攻め」である。

 挿入する側。これを英語にすると、ペネトレーションする側、となる。ペネトレーションには性器を挿入する、という意味以外に、侵犯する、という意味がある。相手の領域を侵す性質または行為が、ペネトレーションする、ということになる。

 まとめると、S=攻め=挿入する側=ペネトレーションする側。となる。いずれも同じ意味で使う。

 さて、では、相手の領域を侵す性質または行為とは、具体的には何であろうか。

 分かりやすい例を引用すると(そしてBL用語の原義に沿って引用すると)、性的交わりをする相手に、性器を挿入することが、S(攻め)である。因みに、サディストの意味を応用するならば、スパンキング等も、Sの行いである。性的交渉の場面で、どちらかはSの役割を担う(なお、MとMが性交するホモ百合に関しては筆者は知識が無いので論じない)のである。

 性的交渉の場面で挿入する側となるのは、攻めの役割を担うのは、どちらかというと男性である。故に、男性はSであることが非常に多い。理由は、性交渉時に担う役割がS的であるから、若しくは男性器の形状の問題、かもしれないし、全てはテストステロンの攻撃性に支配されてのことかもしれない(トランスジェンダーの男性等を調べると性器やホルモンに由来するのかそれとも性的役割に由来するのかある程度明らかにできるのではないだろうか)。

 話を戻そう。

 Sは性的交渉の場面で選択される、攻めの挙動のことである。それは真である。しかし、「はじめに」で述べた通り、世の無生物もSかMかに大別できる。つまり、無生物にもSはいる。相手の領域を侵す行動はできないが、そういう性質を保有するならば、それはSなのである。であるから、性的交渉の場面以外でも、Sなるものは存在する。

 無生物でもSの性質を持つものはいる。「はじめに」で引用した青鬼院蜻蛉は、石に対しては「硬い。頭をぶつけたら痛い。お前はS!」と分類していたように記憶している(要出典の確認)。この記憶はあやふやでねつ造の可能性もあるが、とりあえず、無生物のS性に関しては、そのように判断すれば良いものとする。

 さて、無生物の内には概念がある。観念がある。これらをいちいちSかMかに分けるのは難しい課題なのだが(実際、中立のものが多くて仕分けるなど不可能かもしれない)、中にははっきりと相手の領域を侵す性質を持つ概念、もある。例えば。

 権力。権力は相手を屈服させ、服従させる。これは、S的な概念である。権力を身に纏う権力者も、Sなのである。

 権威。権威もまた権力に同じ。相手を屈服させ、服従させる概念であるからSなのである。

 美。美は美しいだけの、中立の存在であるかのように錯覚しがちだが、真なる美を見た時、我々は圧倒される、それを畏怖する。つまり、屈従させられているのである。相手の領域を侵す性質、ということで、美もまたSとなる。

 秩序。これは、混沌の対義語で、何かしらの法則性の元に混沌が整理されることを意味する。つまり、法則性が、天然自然を屈従させるのである。であるから、これもSである。

 他にもSを担う概念は存在するだろうが、筆者が理解しているSの概念は概ねこの四つである。これ以外に関しては他の者の研究を期待する。

 Sとは相手の領域を侵す性質や行動、と説明したが、分かりやすく説明すると、支配、が適切な単語となるだろう。相手を支配すること。それは最上の、最もtypicalなSである。

 まとめると。

 Sとは相手の領域を侵す性質や行動のことである。分かりやすく言うと支配である。それは性的交渉の場面で、明らかに表れるが、性的交渉を持たない無生物でもSの性質を持つものは存在し、また、S的性質を持つ概念も、いくつか存在する。この世はSとMに分けられる。のかもしれない。

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