第30話 邪神降臨★
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紅蓮の中から現れる “
自らを奉る神殿を穢した不埒な僕たちを誅殺すべく降臨した、邪神にして魔神!
“
魔界の七二柱に列せられ、固有の
「あ、ああ……」
口から絶望の呻きが零れた直後、猛炎の渦が集束して、恐怖と禍々しさ、さらには美しさまでもを兼ね備えた、絶対の姿が具現化した。
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「“
レ・ミリアの呟きも、やはり絶望に彩られていた。
それでも彼女は、自分の中にある勇気と闘志を振り絞って、魔剣を立てた。
「今の地震……あんたがやったの?」
“然り。おまえたちの言うところの “
レ・ミリアの言葉に呼応して、いきなり頭の中に声が響いた!
脳味噌を鷲掴みにされて揺らされたような激烈な不快感!
(そ、それにしたって――)
“対滅” だって!?
魔術師系
「信者と神殿を燃やされて、よほど腹が立ったみたいね……」
“
「な、なに!?」
“あのような豚と豚小屋が燃えたからといって、それがなんだというのだ?”
苦悶を浮べる僕たちの頭に容赦なく響く、“大悪魔” の声!
「豚……ですって……!?」
“愚かな豚と豚が争い片方が滅しただけのこと。そのような些事で我が激するだと? 笑止”
ゾッとするほど端正な鼻先で冷たく笑い飛ばす、傲岸不遜!
なんとも思ってない!
この悪魔は、自分を崇拝していた信者たちが死んでいっても、
「こ、心はないのか……!?」
“我ら高次元生命体の精神と矮小なおまえたちのそれとを比較するなど、片腹痛い。そも、あの豚どもを殺したのは、おまえたちではないか”
冷笑する “大悪魔” に、ぐっと唇を噛む!
確かに、彼らを殺したのは僕たちだ。
彼らの
でもそれは生け贄にされかけていたタマさんと照男さんを助けるためで、こちらの命か向こうの命かだったからだ!
誰が好き好んで殺すもんか!
「腹を立てていないなら、なぜ昇ってきたの? 高次元の住人のあんたからしたら、わたしたちなんて醜い豚なんでしょ?」
“戯れよ。かつてこの
“大悪魔” の顔に明らかな失望が浮かんだ。
“とんだ無駄足だったわ。
いったい、なにをいってる!
「それならさっさと魔界に戻ったらどう? 別に引き留めはしないけど」
“多少なりとも楽しませてみるがよい”
レ・ミリアの言葉に、悪魔の口元に浮かぶ、酷薄な歪み!
“おまえたちに我の余興たる栄誉を与えてやろう。この無駄足をせめて暇つぶし程度にはしてみせるがよい”
「どうせ最初から見逃すつもりなんてなかったんだろう!」
僕は
叫ばなければ、絶対の畏怖に押し潰されてしまうから!
「――こいつのレベルは10! 殺って殺れないレベル差じゃない!」
レ・ミリアも恐怖を振り払うように叫ぶ!
日本を出てから迷宮に潜るまでの間に、僕たちはエバさんやリーンガミル政府からこの “
情報によれば “大悪魔” のモンスターレベルは10!
レ・ミリアの言うとおり、勝ち目の全くないレベル差じゃない!
でも迷宮探索者としての、人間としての、生物としての本能が告げていた!
この “大悪魔” には絶対に勝てないと!
この “大悪魔” からは絶対に逃れられないと!
違うのだ! 聞いていた話とは明らかに、すべてにわたって!
だいたいが、そもそもが、この迷宮に出現する “大悪魔” は “対滅” は使えないはずなんだ!
レ・ミリアも当然、気づいてるはず!
それでも叫ばなければならないほど追い詰められ、押し潰されかけていた!
ギチッ、
砕けるほどに奥歯を噛みしめ、レ・ミリアが魔剣を構える!
「――あの地震が “
“ほう、我が
「実際に、そうなんでしょ? 知ってるわよ、この迷宮であんたが使える魔術師系の呪文は、第六位階までだって」
そういうことか!
僕は彼女が叫んだ理由が、恐怖を打ち払うためだけじゃなかったことに、ようやく気づいた!
挑発し、わざと詠唱の長い “対滅” を唱えさせて、その隙に斬りかかる!
そして僕らを見くびり、人間を見下している悪魔は、必ず挑発に乗ってくる!
『
機内のレクチャーでエバさんがいった言葉が、鮮やかに甦る!
“よかろう、そこまでいうのなら見せてやろう! 我が力の片鱗を!”
“大悪魔” が乗った!
人間には決して発音できない言語で、人間と同じ呪文を詠唱し、天文学的な純力を解放するために精神を統一する!
乾坤一擲! 起死回生!
これで素っ首を落とせなければ、僕たちは
必殺の間合いを計るレ・ミリア!
それが
なら
この状況で、この限定された戦いで、僕に出来ること――僕にしか出来ないことは なんだ!?
なんだ!?
「ッッッッーーーーーーーーー!!!」
盾を投げ捨て、レ・ミリアが突進する!
持てる脚力、敏捷性を最大限に振り絞り、一瞬で肉薄!
必殺の間合いで放たれた横薙ぎの一閃が、“大悪魔” の命を断つ!
パアアァァァァンンッッッ!!!
だが最も無防備になる呪文の詠唱中に、“大悪魔” ほどの魔神がなんの手も講じていないはずがなかった!
不可視の壁に阻まれ、レ・ミリアの魔剣は粉々に砕け散った!
魔界の先住者である混沌系の魔族との、激烈な生存戦争を戦い抜いた “大悪魔” の防御障壁の前には、+2程度の魔法の刃など何ほどの脅威にもならなかった!
飛び退ったレ・ミリアが、それまで愛用していた予備の魔剣を引き抜くより速く、“大悪魔” の詠唱は完了しようとしていた!
最後の韻を踏み、印が結ばれる!
僕がバックアッパーとして役目を果たしたのは、まさにその直前だった!
右手に握っていた “とっておき” を悪魔目掛けて投げつける!
炸裂する “
“
“魔法封じの間” の中でも効果を発揮するのが、迷宮の
閃光が視界を覆う中、レ・ミリアが僕に抱きついた!
例え跳ばされる先が冷たく固い岩の中だったとしても、離ればなれは嫌だ!
強く抱き合う僕らは素粒子に分解されて、
・
・
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・
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……繰り返す微かな潮騒が、意識を引き戻す。
真っ先に感じたのは、血と汗に塗れているけど、それでも心地よい匂いと温もり。
全身に広がる安堵。
助かったからじゃない。
生き延びたからじゃない。
離ればなれにならずにすんだから。
意識の焦点が戻ったあとも、僕たちはしばらく抱き合ったままだった。
やがてどちらともなく顔を離して、見つめ合う。
汚れて疲れた酷い顔に、互いに泣き笑う。
ああ、レミー……僕は本当に……心から君が……。
妖気が甘美な空気を斬り裂いた!
吹き荒ぶ熱風!
燃え盛る紅蓮が形作る “
地底湖の岸辺に、絶望を告げる邪神が再び降臨する!
“かつて数百の豚どもを造作なく
人間が作った小賢しい “
絶望。
命も、未来も、愛さえも……すべてを押し潰す、圧倒的な絶望。
それでも僕とレ・ミリアは立ち上がった。
武器もなく、勝算もなく、それでも僕とレミーは立ち上がった。
人間の矜持。
探索者としての意地。
違う。
そうじゃない。
そんなんじゃない。
レミーが立ち上がったから、僕も立ち上がった。
僕が立ち上がったから、レミーも立ち上がった。
ただ、それだけのこと。
でもただそれだけのことが、僕はとても嬉しく、とても満足だった。
そして、レミーも同じだとわかったことが、なによりも嬉しかった。
心は、とても穏やかだった。
“死する覚悟は出来ているようだな”
そうさ。
覚悟なんてとうの昔に出来ている。
共に生きる覚悟も、共に死ぬ覚悟も。
もう僕に恐れはなかった。
愛する人と不思議なほど穏やかな表情で、命の幕を下ろす “大悪魔” を見つめる。
「――いえ、その覚悟をするのはあなたです」
絶望を斬り裂く、希望の声。
輝く粒子が形作るは、純白の僧衣に身を包んだ迷宮の申し子。
豊かな髪と同じ黒い瞳に決戦への意思を固めた、女神の化身。
「さあ、最後の戦いの幕を上げましょう」
茫漠たる迷宮湖の
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エバさんが大活躍する本編はこちら
https://kakuyomu.jp/works/16816410413873474742
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第一回の配信はこちら
https://kakuyomu.jp/works/16817139558675399757
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第二回の配信はこちら
https://kakuyomu.jp/works/16817330665829292579
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実はエバさん、リアルでダンジョン配信をしてるんです!
エバさんの生の声を聞いてみよう!
https://www.youtube.com/watch?v=k3lqu11-r5U&list=PLLeb4pSfGM47QCStZp5KocWQbnbE8b9Jj
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