第25話 “牙” の奥へ★
『タスクさん。あなた方が向かうタカ派の
出発前にエバさんはそういって、あるだけの “とっておき” を持たせてくれた。
“
“
雲霞の如く湧き出て、機関銃のように即死の加護を唱えてくる邪教の聖職者たちと対峙したとき、エバさんが持たせてくれたこれらの “
特に “聖職者殺し” はハト派の階層に危険な
(本当に凄い人だ。まるでこうなることを予知してたみたいだ)
もちろんエバさんは
最悪の中の最悪の事態を想定して、備えをしてくれたのだ。
でもだからこそ、余計に凄いと思う。
エバさんは他にも “ガス爆弾” や “スタナー” なんかも持たせてくれたけど、
だからもしも奴らに見つかってしまったら、この“聖職者殺し” と “
(エバさん、僕たちを守って)
僕は腰の雑嚢に手を突っ込んで、“とっておき” に触れながら祈った。
僕にとっては
レ・ミリアと身体に “
ジリジリとした時間が過ぎていく。
やれることはすべてやった。
“
それなのに仕掛けた “
魔法のサイレンが鳴って正門が開かなければ、神殿には入れない。
(ケイコさんのように罠の専門家じゃないから、
不安が徐々に思考を侵食する。
悪い考えばかりが浮かび始める。
レ・ミリアは――落ち着いている。
姿も見えず、衣擦れの音すら聞こえないけど、気配でわかる。
僕は大きく息を吸い、身体の中の汚れた空気と一緒に不安を吐き出した。
足手まといになるわけにはいかないんだ。
そんな僕を察して、見えないレ・ミリアの肩が竦められたような気がした。
深呼吸と頭に浮かぶ彼女の仕草が、僕の集中力を甦らせる。
ジリリリリリリリリリリッッッッ!!!
“警報” が迷宮の静寂を切り裂いたのは、その時だった!
直後に、まるで申し合わせていたかのように、間髪入れずに開かれる正門!
緋色の僧衣に身を包んだ “邪僧” の
その数、最低でも二〇人以上!
https://kakuyomu.jp/users/Deetwo/news/16817330669707509209
“邪僧” の一団が出尽くすと、レ・ミリアが駆け出した!
空気の微細な揺らぎを感じて、間髪入れずに僕も走り出す!
ふたりだけならロープで結ばなくてもはぐれたりはしない!
大きく開かれた、禍々しい巨大な門扉!
近づく者を鋭い牙で噛み砕く
ギギギィィィ!!!
“海賊の要塞” と同様に警備の人数を吐き出すと、正門が閉じ始めた!
前回はここで足がもつれて、危なくペシャンコになるところだったけど――そんな美味しい役どころは一度で充分!
(南無三!)
正門が閉じる直前、胸中で思わず叫んだのは帰依する “男神” への祈りではなく、古いロボットアニメの主人公のセリフ!
結局、探索者になっても僧侶になっても、どこまでいっても僕はやっぱり日本人のヲタク少年だ!
間一髪身体を滑り込ませた刹那、激しい音を立てて “牙の顎” が閉じられた!
(はぁ、はぁ、はぁ――やった!)
ど、どうにか、侵入成功!
わずかな距離だったけど、全身に汗が噴き出して肩が上下していた。
正門の奥は邪教徒たちが異形の神を奉る聖域で、邪神を奉る神殿と、聖職者や信徒たちが寝起きする居住区に別れている。
居住区は一×一
衛生状態は最悪、栄養状態も極悪。
だが信仰を糧に生きている連中はまったく意に介さない。
腹が減ったら死んだ仲間、あるいは死にそうな仲間を喰らって、あとはひたすらに数珠を握って邪神を拝んでいる。
かつてこの聖域の最奥に奉られている
ここから直近の区域に、やはり神殿を築き別の神を信奉する教団がいる。
旦那さんは周到な “
彼女が嘘を言うとは思えないので真実なんだろうけど……正直、実感がない。
そんな三国志の軍師みたいな真似が、現実の地下迷宮できるのか。
少なくとも僕には絶対に真似できないので、“警報” におびき寄せられた邪教徒が戻ってくる前に、増尾照男さんと神宮タマさんを見つけ出さなければならない。
雑居部屋の扉はどこも開け放たれていて、中はもぬけの殻だ。
“押っ取り刀” ならぬ “押っ取り
空気が揺らぐ。
見えないレ・ミリアは、連なる雑居部屋をずんずん通過していく。
プランBを実行する直前、“
祭壇に打ち立てられた杭に縛り付けられ、今にも生け贄にされようとしていた。
(時間との勝負だ! でも居場所がわかってるだけずっといい!)
いくつあるかわからない雑居房のどこかに囚われている――なんて状況よりよほど動きやすい。
薬と加護が効いてる間にふたりの元に行って、そのあとは――。
いくつめかの開かれた扉を抜けた直後、不意に視界が開けた。
雑居部屋から、ついに神殿に抜けたのだ。
そこは東西に長い歪な形の広間で、北の壁際に祭壇と思しきものが築かれていた。
北側の壁に禍々しい姿の邪神像が奉られていて、祭壇と広間を
増尾さんと神宮さんは祭壇に打ち立てられた
さらにふたりの周りで蠢く、緋色の
誰も彼も枯木のように痩せ衰えていながら、目だけが異様な輝きを放っている。
“警報” の効果も、ここまでは届かなかった。
そして魔法のサイレンで近くの魔物を呼び寄せる罠はもうない。
空気が揺らぎ、レ・ミリアが動いた。
雑居部屋に小さな明かりが瞬く。
音はしないけど、カチッカチッ、という百円ライター特有の着火音を、僕は確かに聞いた気がした。
鼻のひん曲がる毛布は湿っていてなかなか燃え上がらなかったけど、それでも直に嫌な臭いと煙を上げ始めた。
“警報” がないなら他の方法で目を引くだけだ。
寝床が火事になって神殿の信徒たちは動揺し、狼狽えながらも消火に向かった。
祭壇周辺がエアポケットになる。
姿の見えないレ・ミリアが走り、僕も続く!
祭壇に辿りついた瞬間、タイミング良く(悪く)水薬と加護の効果が切れた!
「な、なんだい、おまえさんたちは!?」
神宮タマさんが突然目の前に現れたレ・ミリアと僕を見て、目ん玉をひん剥く!
「助けにきました! 今、縄を切ります!」
叩き付けるように告げて、タマさんを後ろ手に縛り付ける荒縄に
レ・ミリアは照男さんだ!
雑居房の火事に気をとられていた信者たちが、祭壇の異変に気づき怒号する!
「行くよ!」
レ・ミリアが、頭に嵌めた頭部用のリング―― “転移の冠” に触れる!
ここで “
でも依然として “転移” による跳躍が封じられたままなら、足の覚束ないお爺さんお婆さんを連れての “邪神の神殿・強行逆走” ――まさしく
そして――!
「状況、最悪の中の最悪! “とっておき” 一個目! 行きます!」
僕は叫び、群がりよる “
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エバさんが大活躍する本編はこちら
https://kakuyomu.jp/works/16816410413873474742
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第一回の配信はこちら
https://kakuyomu.jp/works/16817139558675399757
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第二回の配信はこちら
https://kakuyomu.jp/works/16817330665829292579
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実はエバさん、リアルでダンジョン配信をしてるんです!
エバさんの生の声を聞いてみよう!
https://www.youtube.com/watch?v=k3lqu11-r5U&list=PLLeb4pSfGM47QCStZp5KocWQbnbE8b9Jj
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