第12話 ターニング・ポイント★
ガシャン!
ガシャン!
ガシャン!
タスクとレ・ミリアが一
《――現在の座標は、“
タスクたちは階層の北端にある、エバから教えられた “
回復効果のある水を汲み、付近にいるはずの増尾照男(82)と神宮タマ(79)のふたりの遭難者を捜すのだ。
《もう少し北上すると内壁が見えてくるはずです――あ、見えてきました。ようやくシャッター
なんの情報もないまま探索を強いられた以前のエバに比べて、今回のあたしらには当のエバを含めた完全な攻略情報が揃ってる。
各階層の構造、特徴、罠の位置、
すべてチャーター機の機内や米軍の前進基地で、短いながらも入念な説明を受け、想定できるあらゆる事態に対応した救出プランを、エバ自身が立てていた。
上層への
「? どうかしましたか、ケイコさん?」
地図を確認していたエバが、あたしに見つめられてることに気付いた。
「あんたはあたしら全員の命綱なんだから、絶対に無理は駄目だかんね」
それだけですべてを察したんだろう。
微笑み、うなずくエバ。
「タスクたちはもうすぐ “聖水” の泉に着きそう」
「三階は玄室が少なく
エバが言った側から、スマホからタスクの歓声が弾けた。
《――着きました、“聖水の泉” です! エバさんが言ったとおり、奇麗な水が湧き出ています!》
そこは二×二区画の玄室で、“聖水” は南東の角に
《早速飲んでみましょう――んぐっ、んぐっ! ――ぷはーっ! これは五臓六腑に染み渡ります!》
《ちょっと、あんた馬鹿!? 毒味もしないでなにやってるのよ!》
《平気だって。だってエバさんが平気だって言ってたから》
《なによ、その頭の悪い構文》
《いいからレ・ミリアも飲んでみなよ! こう
「彼のあのキャラクターは迷宮ではとても貴重ですね。良いパーティには必ずひとりタスクさんのようなムードメーカーがいるものです」
「ただ脳天気なだけっしょ」
不本意ながら画面のレ・ミリアと同じ表情を浮べたとき、そのレ・ミリアの顔色がサッと変わった。
《――タスク、これ見て!》
タカ派の女戦士が泉の淵を指差す。
彼女のカメラの先、半ば乾き半ば湿ったの埃だらけの床にあったのは――。
《足跡だね。それもごく最近の。なによりとても小さい。 “
タスクが試すように聞き返す。
“人間型の生き物” とは、“
《この迷宮に生息する獣人は “
《だとするなら増尾さんと神宮さんだね。数も合う》
我が意を得たり、とばかりにタスクがうなずく。
カメラを通して確認できる足跡はふたり分。
子供のように小さな足跡だ。
《変》
《うん、変だ》
《《遭難者が水場から離れるのは変》》
レ・ミリアとタスクがユニゾンする。
《他の魔物が飲みにくるから離れたのかな?》
《魔物は “聖水” は飲まないでしょ。これそのまま
整合性の無さに、タカ派のふたりが首をひねる。
目前に湧き出ているのがただの
魔物が飲めば逆に喉が焼けただれ、味わうのは筆舌に尽くしがたい苦痛のはず。
言うなればこの泉の淵は、天然の
《仮にも迷宮愛好会の人が、“魔除けの聖水” を知らないとも思えないし……変だ》
《考えてても仕方ない。水筒を満たしたら跡を追うわよ。手がかりを得られたのに、ウダウダしてるのは馬鹿のすること》
レ・ミリアは “
タスクも慌てて水を詰めて、後に続く。
小さな足跡は玄室を出ると、まっすぐに北に向かっていた。
《迷いがない。迷宮を、魔物を恐れていない……どういうこと?》
《まるで何かに導かれてるみたいだ》
二区画進んだ先で足跡は左に折れて、西側の壁にある扉の奥に消えていた。
《……あの先には》
《……
《……絶対に変だ。おかしすぎる。遭難者がどうして迷宮を上っていくんだ?》
張り詰めた声で囁き合う、レ・ミリアとタスク。
異常を告げる探索者のセンサーがそこかしこで警報を発していて、自然と声が低くならざるを得ない。
《……縄梯子のある玄室に転移しただけで、五階には上ってないのかも。お年寄りがあの長い縄梯子を上れるとも思えないし》
《……それを言ったら、一階からの縄梯子だって二階をスルーしてるんだから、同じ長さじゃない。そもそも年寄りがあの要塞を抜けられたこと事態、異常よ》
《……それは》
レ・ミリアの正論に、タスクが言い淀む。
この “ニューヨーク・ダンジョン” は最下層の一階から最上層の六階までの、六層構造。
最初のタカ派の階層である三階へは、ハト派の二階を抜けて、二階層分の縄梯子を上らなければならない。
縄梯子は普通の梯子を上るよりも、コツと体力がいる。
素人の高齢者が上り切れるもんじゃない。
《……と、とにかく扉の奥を調べてみようよ。そこにお爺さんたちがいれば、それですべては解決――》
ズンッ!
「……ヤバい」
カメラを揺るがす地響きに、タスクたちが反応するよりも早く震える声が漏れた。
「どうしたのです、ケイコさん?」
「ヤバいよ、エバ……またあれだよ」
「え?」
「迷宮が……殺しにきてる」
西の扉が吹き飛ぶような勢いで開き、真っ青な肌をした単眼の巨人が現れた。
https://kakuyomu.jp/users/Deetwo/news/16817330669761032854
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エバさんが大活躍する本編はこちら
https://kakuyomu.jp/works/16816410413873474742
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第一回の配信はこちら
https://kakuyomu.jp/works/16817139558675399757
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第二回の配信はこちら
https://kakuyomu.jp/works/16817330665829292579
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実はエバさん、リアルでダンジョン配信をしてるんです!
エバさんの生の声を聞いてみよう!
https://www.youtube.com/watch?v=k3lqu11-r5U&list=PLLeb4pSfGM47QCStZp5KocWQbnbE8b9Jj
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