第84話

 第三のダンジョンを出て最寄りの村に向かう。きっとそこにキングゥ達がいるはずだ。まずは俺の無事を知らせなければ。

 俺の予想通り、最寄りの村にキングゥ達はいた。俺を見るや否やギョッと三人は目を見開いた。


「お前無事だったのか?」


「なんとか」


「まさか、倒したのか?」


「いや…」


 キングゥからの問いに俺は短く首を横に振り否定した。だって倒したの俺じゃないからね。


「そうか。やはり冒険者ギルドや騎士団に報告するしかないな。明らかに異常な魔物だった」


 難しい顔をしながらキングゥが言った。


「報告した後ってどうなるんっすか?」


「討伐隊でも出るんじゃないか?」


 それは不味いな。俺たちを襲った化け物の代わりに今はモンスター化したアリスがダンジョンの中にいるからそれだけは避けたい。


「俺が倒した訳じゃないけど、なんか勝手に蒸発しましたよ。あの化け物」


 口から出まかせでなんかめちゃくちゃ適当な事を言ってしまう。


「それ実質お前が倒したって事じゃないか。つくづくお前との差を感じてしまうよ」


 ガックリとキングゥが肩を落とした。


「ヤーナツが倒したならもう一度最深部まで行こ」


 とメリーが言った。

 もう一度行こう、と言ってもダンジョンに入ってすぐ近くにアリスはいるからばったり出くわす可能性もある。これもできれば避けたい。


「いや後日にしよう」


「なんで?」


 メリーが首を傾げた。


「俺が疲れてるから。だから後日にしよう」


「あ…私も…ヤーナツ君に…賛成」


 と、メロンちゃんが右手を挙げ賛同してくれる。

 メリーが納得してなさそうな様子で「ムムゥッ」と口をへの字に曲げた。


「そういえば、アリスさんがいないのだがお前何か知ってるか?」


 辺りをキョロキョロと見回しながらキングゥがアリスの事を尋ねてくる。俺は「分かんないっすね」と、答えた。


「探した方がいいんじゃないか?」


 探しても無意味だが俺は「そうしますか」と、答えた。

 各々ばらけて村中を探し回る。その際俺はメロンちゃんと二人っきりで話したい事があったのでメリー達にバレぬようこっそり接近した。


「メロンちゃん、聞きたい事があるんだけどいいかな?」


 メロンちゃんが「はい」と、首を縦に振った。


「魔物をダンジョンから出す方法ってあるかな?」


 一応、アリスの名は出さずに質問する。


「アリスさんの事…だよね?」


 どうやらメロンちゃんはアリスがモンスターだって知っているようだ。ならば下手に隠さず全て言ってしまおう。


「そう、アリスの事。実は第三のダンジョンにアリスが閉じ込められちゃったんだ。出す方法をしらないかな?」


「一つだけ…でもおすすめはしないかも」


「それでも教えて欲しい」


 俺がそう返すと一泊置いてメロンちゃんは口を開いた。


「ダンジョンを崩壊させるの。つまりメリーにダンジョンを攻略させなければアリスさんは出てこれると思う」


 ダンジョン崩壊?もしかしてリアで言うところのダンジョン暴走か?だとしたらおすすめしたくない気持ちもわかる。


「ダンジョン崩壊ってどうなるの?」


「異界からモンスターがなだれ込んでくるの。第三のダンジョン崩壊なんてゲーム内でも起こらないから何が起きるか…どんな魔物が押し寄せてくるか、未知数かも。それにいつ崩壊するかも分からないかな。もしかしたら数百年後って可能性もある…かも。でも私の予想だと、第三のダンジョンはそろそろ崩壊すると思う」


 やっぱりダンジョン暴走の事だったか。

 受動的すぎるしワンチャン人類滅亡だしあまりにも分が悪い賭けだ。他に方法はないだろうか?


「ダンジョン崩壊以外にも魔物がダンジョンから出る方法はあるよね?現にアリスは赤ん坊の頃、異世界からこの世界にやってきた。多分その時ダンジョン崩壊は起こってない」


「ごめんなさい。私には分からない。アリスさんの出生についてもゲーム内じゃ書かれてないから分からないの」


 申し訳なさそうにメロンちゃんが答えた。

 やはりウツツに聞くしかないようだ。

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