第80話
メリーが湖の前で膝をつき祈りを捧げると湖が青く輝き出した。そんな光景を眺めながら俺はメロンちゃんに話しかけていた。
「なんかメロンちゃん強いね」
「あぁあれだけの魔法が撃てるのならAクラスは確実だ。どうして隠している?」
俺に同調する様にキングゥもメロンちゃんに問いかけていた。メロンちゃんは下を向き何も答えない。若干怖がっている様にも見えた。
「なんか尋問みたいになっちゃったね。怖がらせてごめんよ」
なんとなくある考えが脳裏に浮かぶがメロンちゃんが何も答えたくないのなら追及する様なことはよそう。
「お前本当にあのヤーナツか?」
昔のヤーナツを知っているキングゥが俺を訝しんだ。
「俺は基本優しいですよ」
キングゥが本当かよ、という目で俺の事を見てくる。
そんなやり取りをしているとやるべき事を終えたメリーが俺達の元に戻ってくる。
「終わった。早く帰ろ」
これでストーリーが進んだって事?案外あっさり終わったな。
「んじゃ帰るか。誰かルードラ使える?」
俺が聞くとメロンちゃんは首を縦に振って、メリーも「使える」と、返して来た。
「俺も使えるが…そうかお前は使えないのか」
キングゥのその言葉に何故か悔しさを覚える。
「いや、俺も使えますよ。当たり前じゃないですか」
悔しかったので嘘をつく。
「お前は剣士なのだから使えんだろ」
一瞬で嘘が見破られてしまう。
いまだによく分かってないんだよな。この世界で魔法が使える奴と使えない奴の違い。剣士でも魔法を使っている奴はいるからなー。リアとか。それこそキングゥとか。なんで俺は使えないと思われてるんだろ。一応ファイアなる魔法を使えるらしいんだけどなぁ。
「こんなとこで駄弁るくらいならもう帰ろうぜ」
嘘がバレて恥ずかしいので、話を逸らす意味も込めて帰る様促した。
メリーのルードラで俺達はダンジョンから脱出し、アリスと合流して馬車で学校へ帰った。
その日の夜俺はベットに寝転がり考え事をしていた。
「どうかしたんですか?」
と、アリスが聞いてくる。
「んーちょっとね」
と、俺は曖昧に返事をしながらメロンちゃんについて考えていた。
メロンちゃんはもしかしたら転生者かも知れない。第二のダンジョンの最奥地を知っていたしやたら強いし。それに湖からモンスターが飛び出すのも知っていたっぽいし。多分これゲームを知ってる転生者だよな?
まぁだからと言ってメロンちゃんに転生者ですか?なんて聞く気はない。今の俺はウツツによって監視されている。ウツツにメロンちゃんが転生者だってバレたらあいつ何するかわからんからな。ここは変に行動に移さず大人しくしてよう。
そんな事を考えていたら部屋の扉がコンコンとノックされた。
「誰でしょうか?」
アリスが小首を傾げた。「俺が出るよ」と、俺は扉を開けた。
制服姿のメロンちゃんが何かを言いたそうに立っていた。なんとまぁタイムリーな。
「どうしたの?」
「は…話が…ありまして…」
「とりあえず中入る?」
メロンちゃんが首を縦に振った。
安易に女の子を部屋に誘うのはどうかとも思ったが、メロンちゃんがいいならいいか。
スタスタスタと部屋の中に入ってくるメロンちゃんだったが、アリスの姿を見てピタッと止まった。
「で、できれば…二人で話がしたいです」
「では、私は退室してますね」
「ご、ごめんなさい」
メロンちゃんがアリスに頭を下げる。「いえいえ」と、アリスが言うと俺の部屋から退室していった。
よっこいしょっと俺はベットに座りメロンちゃんの方を向く。
「話っていうのは何かな?」
「あ…ぜ、前世ってどう思いますか?」
予想通りだ。どうやらメロンちゃんも俺が転生者だと分かっている様だ。でも随分と遠回りな聞き方だ。ならばど直球で返そう。
「いい人生だったよ。例え死んでいたとしても帰りたいと思える程」
不満があるとすれば若くしてその人生を歩めなくなった事だろうか。
「…羨ましい。わ、私は…嫌なことばかりだった」
「そっかぁ。こっちの世界はどう?楽しい?」
「うん…。ヤーナツ君と…メリーのおかげで」
「俺のおかげ?なんか嬉しいなぁ」
俺がそう言うとメロンちゃんがうんうんと二度頷いた。
「ヤーナツ君がイジメを止めてくれたから…。あの時とても…嬉しかった。今も…ヤーナツ君と仲がいいからって…貴族の人達からいじめられなくなった。誰かがイジメを止めてくれるとをずっと願ってた。だから、ありがとう」
メロンちゃんは俺に深々と頭を下げた。前もこんな感じで礼を言われたな。
「ならこれからも仲良くしていこうな」
若干戸惑いながらもメロンちゃんは首どころか体ごと大きく縦に振って頷いた。
俺と仲良くすればいじめられなくなるその理由を知りたかったが、今聞くのは野暮ってもんだ。
「あ、あのね、じ、実はねお願いがあって…。他の転生者には言わないで欲しい…です…」
多分転生者である事を言うなって事だよな。なんかみんな秘密主義者だな。
「分かったよ」
俺は了承した。
でももうバレてるんだよなぁ、ウツツに。それを言うかどうか悩んでいるとメロンちゃんが
「ありがとう…ございます。…夜分遅くにすみませんでした」
と、言って足早に俺の部屋から去っていった。入れ替わる様にアリスが入ってくる。
「メロンさんが出て行かれましたけど、もう終わったんですか?」
言いながら俺の隣に腰をかける。
「終わったよ」
と、返事する俺の首元にアリスが髪を耳にかけながら顔を近づけスンスンと匂いを嗅ぎ始めた。
「え、なになに。恥ずかしいんだけど、どしたの?」
「い、いえ、何でもないです」
アリスが顔を真っ赤にしながら俯く。
今のって俺とメロンちゃんが如何わしい事をしてないかのチェック見たいなもんだよな。アリスって嗅覚もすごいんだなぁ。
「混じり気ない純度百パーの俺の匂いだったろ」
ボンッと頭の先から湯気を出しアリスが「はい」と呟いた。
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