第69話
この別荘に来て十日以上が経ち流石のアリスも人状態を保てる様になってきた。いよいよ学校に帰るのだが、ちょっとだけ不安だ。
本当に人の状態を保てているのかどうかテストする為、不意にアリスに顔を近づけてみる。
「ど、どうしたんですか!」
アリスは顔を真っ赤にしながら逸らした。
髪や肌に変化はなさそうだな。
「いやぁ寮に帰る前にキスでもしたいなーみたいな」
「え、でも今そんなことしちゃうと…か…帰れなくなっちゃいます」
アリスの肌がみるみる内に変色していき、髪もどんどん変質していく。アリスは一体何を想像したんやら。
「アリスってさ凄い分かりやすくてめちゃくちゃ可愛いや」
「そんな事言われたらもう無理です」
アリスは完全にモン娘化し、変質した髪が俺にシュルシュルと絡まってくる。服の中にモゾモゾッと入ってくる。
今回巻きついてくる髪の量はちょっと少なめだ。これはあることを意味している。
「これは動いてほしいだな」
アリスがキョトンとし、小首を傾げる。
「どういう事ですか?」
「巻きついてくる髪の量で動きたいか動いてほしいかが分かるんだよ」
アリスの顔とついでに髪もボンッと赤くなる。本当にわかりやすい子だ。結局この日も帰れず別荘に滞在することになった。
そして次の日。
「今日こそ帰るので私をドキドキさせないで下さい」
人の状態のアリスに念押しの注意をされてしまう。素直に俺は首肯する。
「では手を」
スッと差し出してきたアリスの手にちょこんと触れる。俺が手に触れた瞬間アリスが転移魔法を唱え俺達は森の中に転移した。
ここは確かイチカさんとの待ち合わせ場所だ。
「ここからは歩きましょう」
「そうだね」
ここから寮まではそう遠くなく、十分もしない内にまず街に着く。そして寮に着く。
「アリスはどうする?一旦自分の部屋に戻る?」
「いえ、別に置いてくる荷物などもないのでナツ君といます」
「じゃあとりあえず俺の部屋行こっか」
自分の寮部屋に入って早々俺はベットにダイブする。アリスも空きベットに腰を下ろした。
「今からどうする?やっぱ学校に顔出した方がいいのかな」
普通に考えて俺達は学校をサボり過ぎてる。というかそれ以前に失踪扱いされている可能性だってある。なんか俺の寮部屋にも誰かが入ってきた形跡があるし、結構問題になっているのではないだろうか。
「その前に…ナツ君を刺した師匠という方はどうするんですか?」
「あーそれはウツツに相談にしようかなって思ってる」
ウツツの体殺した奴見つけたぞーって適当吹いたら案外ウツツがどうにかしてくれるかもしれない。
「ウツツさんですか。大丈夫でしょうか?」
楽観的な俺とは裏腹にアリスは顔を曇らせた。あんまりウツツと関わりたくないんだろうな。
「取り敢えず学校に行こっか。学校の奴らにヤーナツの帰還を知らしめなくては」
話を逸らすかの様に俺は言った。アリスも肯定してくれたので制服に着替えて二人で学校に向かった。
校内には生徒が散見しており今は昼休憩だと言うことが分かる。道行く生徒達が不自然な程、俺というよりはアリスを見ている。ヒソヒソとまるで陰口の様な話し声が聞こえてくる。
何日も顔を見せてなかった奴が急に姿見せたらこんな反応になっても仕方がないのだろうか?んー、にしてもアリスだけ注目され過ぎじゃね?アリスも肩身が狭そうに身をすくめている。
「おい、もう逃げなくていいのかよ悪魔が!」
その時一人の生徒が声を上げた。ビクッと悪魔という言葉にアリスの体が過剰に反応する。どうやらオウミの言った事を信じている奴がいる様だ。
「アリスは回復魔法が使えるから悪魔じゃないでーす。というかそもそも悪魔なんていませーん」
ここにいる全生徒に向けて俺は言い放つ。しかし
「その女が悪魔だって事はみんな知ってんだよ」
先程とは別の方向から声が聞こえてくる。オウミのあの話を鵜呑みにした奴が何人もいるという事だろうか?こりゃ言い返しても無駄だな。
「面倒くさいしもう帰ろっか」
チラッとアリスの方を見ると体が震えていた。だから俺はアリスの手をギュッと握った。そのまま寮に帰ろうとした時俺の兄であるラウドが俺達の元に駆け寄ってきた。
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