第47話
その日の夜、というよりは日を跨いだ深夜。寝ていた俺はガサゴソと部屋の外から物音が聞こえ目を覚ました。何やら話し声の様なものまで聴これる。少なくとも部屋の前に二人いる。安心して眠れないのでベットの上で部屋の前の人が消えるのを待ったが、どうやらそいつらは俺に用事があったらしく部屋を無理やりこじ開けて侵入してきた。俺は慌てて身構える。
黒い外套を着た二人の男女。女の方は中学生ぐらいだろうか、男の方は二十代前半と言ったところだ。
不意の侵入者に恐怖心がどんどん溢れてくる。
「こいつがそうかよミファ」
不機嫌そうに男が言った。
ミファって言う名前どこかで聞いたことがあるぞ。誰だったっけ?
「んー?どうだったかなー?お前名前はなんて言うんだ?」
「ヤーナツだけど、ミファってもしかしてウツツの妹さんだっけ?」
朧げながらもなんとか思い出す。あの頃より背が伸びている様な気がする。
「兄貴の名前を知ってるたぁこいつっぽいな」
男はそう言うとその場でしゃがみ地面をどんどんと叩いた。すると地面からニョキッとウツツの頭を抱えた女の人が飛び出してくる。
肌の白いスレンダーな女性。地面まで届く黒髪は前髪の部分だけびっしりと揃えられておりホラー漫画などで出てくる日本人形を連想させる。急に出てきたもんだからそんな姿も相まってビクッと体が跳ねてしまう。
「こんな弱そうな人間がウツツの首を切ったなんて信じられないんだけど」
俺ってそんな弱そうかな?
「姫は出てくんなっつったろ。面倒くさい事なんだろ」
ウツツだ。そんな久しぶりでも無いけど久しぶりは気がする。とりあえず一発文句でも言っとくか。
「ウツツさんやこんな大勢引き連れて来んのやめて来んね。しかも今深夜だぜ」
俺が言い終わった瞬間、目の前に寝巻き姿のアリスが急に現れた。転移魔法を使ってきた様だがなんで俺の今の状況を分かったんだ?
「ナツくんから離れてください!」
バッとアリスは両手を前に出し戦闘態勢をとった。
「人間風情が!面白いじゃない。ぶち殺してあげる」
黒髪の女性もまた戦闘態勢をとる。ついでにミファも「ミファもやるぞー」と戦闘態勢をとった。俺の部屋で暴れるのやめて欲しいんだけど。
「これどうすんのウツツ」
ウツツは舌打ちをつき「だから姫には出てきてほしくなかったんだ」と小さく呟いた。
「お前らその辺にしとけよ。アリスにはお前ら三人が束になっても勝てねーよ」
「はぁ?!この私が人間風情に負けるわけないでしょ!」
「そーだそーだ!ミファ達が負けるはずがない」
ウツツが仲裁に入ったが逆に焚き付ける形になってしまう。黒髪の女はプンプンだ。見た目の印象とは違ってすごい怒りっぽい。
「こんな事してる暇はねぇ。分かってくれ姫。すぐにヤーナツを俺の体のもとまで連れていく」
「そうだった。ちょっと頭に血が昇っちゃった。シド達と影に潜んどくわ」
そう言うと黒髪の女とミファそれにシドと呼ばれた男がスーッと床に消えていった。にしてもこんな強引に俺に会いにきてもしかして緊急性が高いのか?聞いてみるか。
「なんかあったの?」
「俺の体が死んだ。しかも混沌魔法をかけたまま死にやがった。俺とお前以外誰も近づけねぇ」
マジか。
「手を貸せって事?蘇生の手段でもあるのか?」
「ああ、ある。お前には蘇生のアイテムを使ってもらう。今すぐいくぞ。俺の頭に手を乗せろ」
アイテム使うだけなら危険も無さそうだし協力してみるか。
「ナツ君、私も…」
アリスが俺の裾口を掴んだ。
アリスもついてきてくれるなら心強い。
「アリスも一緒でいい?」
「別に構わねーよ。それよりもさっさと行くぞ」
「分かったよ」
と、返事をしアリスの手を握った後ウツツの頭に手を置いた。
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