第41話
「これはこれは王子様。如何なさいました。まさか王子様ともあろう者がこの平民の女に何か御用でも」
金髪の男、フレードが気取ったセリフを吐きながらまるで隠すかのようにメリーとキングゥの間に立つ。
「フレードもう少しメリーの気持ちを考えたらどうだ。今は授業中だろ。メリーが退学にでもなったらどうする」
さすが殿下。こんな怖そうな男にも怯まず立ち向かう。
「そうなったら俺様が養うから気にすんな。それに何か勘違いしてるみたいだが、メリーを連れ出したのは俺様じゃない」
「何?まさかヤーナツか!」
キングゥに物凄い形相で睨まれる。なんでこっちにまで飛び火してくるのだろうか。メリーの取り合いはお前らだけでやっとけ馬鹿野郎。
「いえ僕じゃないです。メリーさんは自らの意思で授業をサボってます」
穏便にこの場をやり過ごす為に出来るだけ物腰柔らかく言った。
「お前の言うことが信じられると思うか。メリー本当のことを言ってくれ。ヤーナツに何かされてるのか?それなら俺がどうにかしてやる」
「なんだラウドの弟は無能ってだけじゃなく屑でもあるのか。それなら俺様がどうにかしてやる。ボンボンの王子様には任せておけねぇ」
そう言ってキングゥとフレードが俺に詰め寄ってくる。襟を掴まれてる俺は逃げることもできない。まさに追い詰められたネズミ。
「メリーさんなんとか言って僕を助けておくれ。もしくは襟離して」
「やだ。ヤーナツがなんとかして」
酷いや。俺このままボコられるのかな?
こうなったら一か八かだ。
「そこまでだぁ!俺を使って意中の子に男らしさをアピールするのはやめて下さい。そんな小学生みたいなことをして好きな子の前で格好つけてまるで馬鹿みたいじゃないですか。男なら!当人同士、拳で蹴りをつけろよ!くだらない見栄張り合戦を俺とメロンちゃんに見せてくんな」
「何を言っている。俺は別にメリーに恋心など抱いていない。平民だから辛いだろうと親切心で助けているだけだ」
明らかに狼狽しあたふたとするキングゥ。
平民と言うならメリー以外にもメロンちゃんがいるじゃないか。なのにメロンちゃんはずっと蚊帳の外。可哀想じゃないか。
「メリー以外にもここに平民がいるじゃないですか。メロンちゃんのことも助けてあげてくださいよ。なのに殿下はメリー、メリー、メリー、メリー。メリーのことしか助けようとしないじゃないですか。筋の通ってない言い訳をするぐらいなら好きだと叫びましょうよ」
キングゥは苦い顔をして一歩後ろに後ずさる。
「こいつはしてやられたなぁ王子様。追い討ちと言ってはなんだが、俺様はラウドの弟が言った拳で蹴りをつけろって言うのに賛成だ。王子様の返事次第だけどな」
フレードは余裕の笑みで俺の提案に乗る。自分の強さに自信があるようだ。さぁどう出るキングゥ。
しかし、キングゥの返答がある前に
「こんな所で何をしているんだいメリー」
赤髪の男が現れる。確か入学前の試験で的を真っ二つにしていた男だ。
ビクッと一瞬メリーが震えた気がしたが、そんな事気にかけている場合じゃない。誰かこの状況をどうにかしてくれ。もう新しい男を追加しないでくれ。というか授業はどうしたんだお前ら。さっきまでそこで剣を振ったり魔法を撃ったりしてたんじゃないのか。抜け出してくんな。
「アンタは初めて見る顔だな。アンタもメリー狙いか?」
赤髪の男にいち早く反応したのはフレード。しかし赤髪の男はフレードの横を通り抜け無視しようとする。
「無視すんなよ」
と言ってフレードは赤髪の男の腕を掴んだ。赤髪の男はやれやれと言った感じで息を吐いた。
「メリーその男から離れなさい。金輪際その男には関わらない方がいい」
その男とは俺のことだよな?どうやらこの人もヤーナツのことを知っているようだ。
「俺様の事を無視すんなって言ってんだろ」
フレードはデコに青筋を立てている。まさかこの場で始まってしまうというのか?喧嘩が。
赤髪の男はもう一度息を、というかため息を吐いた。
「私はこの男の相手をします。その間ヤーナツから逃げておきなさい。終わったらすぐに駆けつけます」
まるで俺がメリーに悪さをしているみたいに言うじゃないか。
「痛ぶりがいのありそうな奴じゃないか。こっち来い」
フレードと赤髪の男が運動場のような場所に行こうとした所キングゥが呼び止める。
「オウミ正気かフレードはこの学校屈指の実力者だぞ。冒険者学校に入ったばかりの俺たちじゃ敵わない」
オウミと言われた男がキングゥに振り向く。
「相手が強いからと戦わないのは弱さです。たとえ強かろうと私は立ち向かいます」
そう言ってフレードの後を追った。
何やらキングゥが落ち込んでいるように見える。キングゥは多分攻略対象だ。この先重要なキーマンとなるだろう。心のケアこの俺が努めます。
「ま、俺は普通に逃げるけどね。相手が強かったら。だって怖いもん。平和が一番」
この言葉果たして慰めになっているのだろうか。
「逃げられない時はどうするの?」
キングゥではなくメリーが俺の言葉に反応する。そんな事よりもメリー、君はいつまで俺の服の襟を掴んでいるんだ。
「答えてほしくば襟から手を離せ」
「逃げられない時はどうするの?」
なるほどね。実践してみろ、ということね。手強い子だ。
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