第27話

 学校内の訓練施設で私とラウドは一通りの特訓を終え二人して休憩をしていた所ラウドが話しかけてくる。


「リア私はフレードに決闘を挑もうと思う」


「決闘ですか?」


「もし私が勝てばこれ以上リアに関わるなと条件をつけて決闘をする」


 この数ヶ月間私はフレードに付き纏われ、腕を引かれるがままに剣の練習に付き合わされたり、学校近くの初心者用ダンジョンに共に潜らされたりしていた。

 フレードのそう言った振る舞いはゲーム内とまんま同じで、転生者がなりきってるとは考えにくかった。


「でもフレードは強いですよ」


「私だって強くなった。きっといや絶対にリアのために勝ってみせる」


 絶対にラウドじゃ勝てない。そう思ったがそれを口に出すのは失礼だ。

 そこへフレードがやってくる。


「その決闘今すぐにでも受けてやっていいぜ」


「き、貴様リアの周りをうろちょろしおって。いいだろう決闘だ。私が勝てばリアには近づくなよ」


「いいぜ。その代わりこっちも条件をつける。俺様が勝てばリアは俺のものだ。お前は近づくな」


「な!それは無理だ。リアは私の従者だぞ。そんな条件飲めるはずがない」


「別にずっとリアといようってわけじゃない。ちょっと一緒にダンジョンに潜ったりするだけだ。その間お前は近づかないでくれって話だ。リアにだって立場はあるしな。それにあんたが勝てばいいだけだろ。それとも自信がないか?」


「いいだろうやってやる」


 私が口を挟む間もなくどんどん話は進んでいく。男とはなんと勝手な生き物だろう。

 にしても攻略対象二人が私を取り合うなんてまるで夢に見たような光景。まるで主人公になった気分だ。


「おいリア。どうする?このままコイツと戦っていいのか?」


 うっとりしてる私にフレードがまるで何かを確認する様に話しかけてくる。


「…私はラウド様を信じてます」


 フレードはニヤッと口角を上げた。


「リアは健気だなぁ」


 何よ!私は別にあなたの勝ちを望んでる訳じゃないのよ。私を取り合って戦う男が見たいのよ。

 そう心の中で言い聞かせた。


「それじゃあ始めようぜ。負けた時、稽古をしたばっかで息が上がってたなんて言い訳はなしだ。いいな」


 フレードが私の近くにあった木剣を拾いつつ確認する。


「当たり前だ」


「いいね。その男気に免じてあんたのタイミングで始めていいぜ」


「舐めやがってぇぇぇ」


 ラウドが咆哮と共にフレードに斬りかかる。

 そんなラウドにカウンターをするような形で木剣を横に振る。

 カァンッと音が鳴り木剣が一本、空を舞いカランッカラッと音を立て地面に落ちる。


「俺様の勝ちだな。リアはもらってくぜ」


 フレードが私の横まで来ると肩に腕を回して抱き寄せる。そのあまりの力強さについつい身を預けてしまう。


「クソッ!クソッ!リア、リア!そいつから離れるんだ」


「おいおい見苦しいぜ。でもそうだな少しリアの意見無視して話を進めすぎた。別にお前が俺のものになりたくないなら言ってくれたら解放してやるよ」


 「どうするリア」と耳元でフレードが囁いてくる。

 フレードに耳元で囁かれたり命令口調で何か言われたり逞しい腕でこっちに来いと引っ張られたりすると逆らえない自分がいる。

 今だってそうだ。

 ラウドの事を思えばあなたのものになどなりませんとフレードを突っぱねればいいのに何故かそれができない。

 私は何も言わずにただ息を荒げ立ち尽くす。


「沈黙か。本当に可愛い奴だなリアは」


「リア何故離れない。なんとか言ってくれ!」


 ラウドが叫ぶ。


「うるさい奴がいるからダンジョンにでも潜ろーぜ」


 そう言って私の手を取りフレードは歩き出した。やっぱり逆らう事ができない。

 手を引かれるがままに私も歩き出す。

 このまま私はフレードのものになってしまうのだろうか。それともラウドが躍起になって私を取り戻そうとするか。

 でも正直に言うと私はラウドよりフレードに惹かれてしまっている。ゲームだと野蛮なだけの男だと思っていたのに、現実だと逞しくかっこよく感じてしまう。

 ラウドが私の事を一心に思って劇的な行動を見せてくれない限り逆転はきついと言ってもいいぐらいだ。

 これから先私をめぐってどんな事が起きるのかドキドキが止まらないわ。

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