第20話
「あなた達が記憶喪失のフリまでして親密な関係を隠したいのは理解できますが、ちゃんと話してもらいます。パーティーの日何があったのですか」
変な誤解で勝手な解釈をしてるが記憶喪失のフリをするのは無理そうだな。ある程度真実を話そう。
「アリスさんと二人で話してるとこいきなり悪魔団の人が現れて、転移魔法で僕が連れ去られたんですよ。それでアリスさんが助けに来てくれてなんとか二人で命からがら逃げたものの全く知らない場所まで逃げてしまったものでここに来るまでにすごい時間が掛かっちゃいました」
「転移魔法なんて聞いた事がありませんわ。それに何故二人してアリスの部屋にいたのです?服も失踪当時とは違うものになってるわ」
「実はですねお母様。私も転移魔法を使えるようになったのです」
アリス母が「まぁ」と口に手を当て驚く。
ここはアリスに話を合わせよう。もしかしたら服の話は有耶無耶にできるかもしれない。
「そうなんですよ。結局徒歩で帰るのは無理だ、てなって、試しに転移魔法を使おうとした所アリスさんが使えたんですよ」
「転移魔法をアリスが…。アリスあまり人前で使ってはなりませんよ」
「どうしてですか」
「悪魔団が使っていた魔法だからです。用心に越したことはありません」
「分かりました」
「ふー。大体の経緯は分かりました。ではヤーナツさん馬車を用意させるのですぐにでも帰った方がいいでしょう」
「どうしてですか?」
アリスがアリス母に聞いた。
「お父さんは過激な人です。アリスを守るためならなんだってするでしょう。脅しをしてようが恋仲になってようがどちらにしろヤーナツさんは首切りです。サンザンベル家の次男だからと容赦はしないでしょう」
「冗談ですよね」
そんな事もすればお家同士確執がうまれない?
「お父様ならしかねないかもです」
「マジか。よし今すぐ帰ります」
「では、行きましょうか」
俺はアリス母について行き、用意されてた馬車で屋敷を後にした。
頬杖をつき窓の外を見ながら馬車に揺らされていると電車に乗っていた事を思い出す。ボケーっと何も考えずに外を眺めながら電車に揺らされるの好きだったなー。
「護衛も付けず移動とは異世界に対する危機感が足りねんじゃねーか」
「うぉびっくりした」
何やら急に声がしたかと思いきや、隣にはウツツを膝に乗せた幼い少女が座っていた。
どうやってこの場に現れたのだろう?ウツツは確か魔法を使えないはずだ。
「坊っちゃんどうしたんですかい」
俺の大きな声に反応し御者が心配してくれる。
「いやなんか変な人が隣に座ってます」
素直に答えた。
「それは急に乗り込んできたって事ですかい?人影なんて見えませんでしたぜ」
「おい」とウツツが小声で語りかけてくる。
「気のせいだったと言え。御者が死ぬぞ」
「分かったよ。すみません寝ぼけてたみたいです」
「そうですかい」
改めてウツツ達を見る。ウツツを膝に乗せた少女は、少女とは思えないほど露出の多い服に黒髪ツインテールと言った危ないと言う感想しか出てこない女の子だった。ウツツはいまだに頭だけのようだ。
「にぃこの男ムカつく。ここで殺しちゃおうよ」
ボッと少女が手のひらから炎を出す。その瞬間この異世界にくる前のことがフラッシュバックする。
「うわぁぁぁあ。やめろ、やめてくれ。火を消してくれ」
顔を覆い馬車の隅で縮こまる。
「お客さんなんかあったんですかい。一旦馬車を止めますぜ」
やばいこのままじゃこの人が殺されるかも。
「すみません大丈夫です」
「本当ですかい。ではこのまま進みますぜ」
深呼吸をして気分を落ち着ける。どうやら火は消してくれてるようだ。
「にぃこの男やばい奴だよ」
少女が奇異の目で見てくる。
「流石にビビりすぎだろ。何があったんだよ」
「この世界に来る前にちょっとな」
「なるほどな」
ウツツは何か納得したようにそれ以上は何も聞いてこなかった。
にしてもウツツは何をしに来たんだろう。
「何しに来たん?めちゃくちゃ怖いんだけど。殺しに来たとか言わないよね」
「いいじゃんにぃこいつ殺しちゃおうよ。にぃの首、切ったやつでもあるんでしょ」
この子怖すぎでしょ。
「お前は黙ってろ」
「にぃはもうミファより弱いんだから命令は一日一回までって言ったじゃん」
ミファって言うのか。
「いいから黙ってろ」
「もー仕方ないなぁ。今日だけだよ」
お兄ちゃん子と言うやつか。ていうかウツツに兄弟なんかいたんだ。アレでもそれなんかおかしくね。
「でもさにぃ、こんな弱っちそうな奴がにぃの首を切ったなんて信じられないよ」
この子全然黙る気ないや。
「この子がウツツの言ってた悪魔の姫?」
ミファが喋ってる最中にウツツに聞いた。
「いやちげー」
「あ、そうなんだ。で、何しに来たん」
「お前に言い忘れた事があってよ。転生者に俺のことは言うんじゃねーぞ」
俺の事殺す気は無さそうだ。
「分かったよ。殺されたく無いしね」
「ちょっといまミファとにぃが話してるんだから黙ってて」
いや、なんなんこの子。
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