第17話

 翌朝、目を覚ますと知らぬ天井。

 どこだここ。別荘の中だろうか?

 起きあがろうとするが、体を動かすことすらできない。横を見ればアリスがスヤスヤ寝息をたてながら寝ている。その姿はいまだにモン娘のままだ。

 そういえば昨日の夜中、アリスに着替えさせてもらっていたんだっけ。で、アリスの髪にまとわりつかれてなんか心地よくて眠っちゃったんだ。

 どうしよう、このままアリスが起きるまで動けないのかな?

 アリスがいる方とは逆の方に首を回してみれば、そこには俺が履いていたであろうブリーフがあるではないか。

 これはもしかして一線超えてしまったのか。昨日会ったばかりの子と。いやでもちょっと待て、俺もアリスもまだ十代前半の子供だぞ。向かうの世界でも叶わなかった事だ。流石にあり得ないよな。

 ていうかよく考えたら兄の婚約者と一つ屋根の下の同じベットってやばくね。

 そこでアリスが「んぅ…」と色っぽい吐息を漏らしながら目を覚ました。


「あ、おはようございます。ヤーナツ君」


「や、やぁおはようアリス」


 可愛らしい寝巻きを着ているアリスにぎこちない笑顔で返した。


「よく眠れましたか?」


「おかげさまで」


「良かったです」


 この子寝ぼけてるからこの状況に気付いてないのか?もしかしたらとんでもなく純粋という線もある。


「アリスこの髪なんだけど…」


「そ、そうでした!私昨日、急にまとわりついちゃって、ごめんなさい。今外しますね」


 慌てた様子でまとわりついた髪を外そうとする。しかし待たれよ。


「ちょっと待てい。もしかしたら俺は全裸かもしれない。あれを見るんだ」


 俺がブリーフに視線を移すと、アリスもブリーフに視線を移した。


「えぇ!どういう事なんでしょう?!私、脱がせた覚えはありません。はっ!ということは私は今触ってる、てことでしょうか」


 凄まじい慌てようだ。


「まぁそういうことになるかもね」


 髪の色が赤色に染まり輝き始める。ついでにアリスの顔も真っ赤になる。


「なんか輝いたね。ま、いいや。だからさアリス。髪を退ける時さ見ないようにしてくれるとありがたいかな」


「分かりました」


 バッとアリスは自分の顔を手で覆う。

 なんか指の隙間から見てね。いや俺の体なんか見てもしょうもないし自意識過剰か。

 「では行きます」とアリスが言うと体に巻きついた髪が徐々に緩んでくる。思った通り丸出しだった。すると急に、また髪が絡みついてくる。


「み、見えました!何故か見えてしまいました!しっかりと裸ん坊でした!つ、ツルツルでした!!」


「恥ずかしいから言わんでいい。アリスもう見てていいから締め直さないでね」


 この子むっつりなのかもしれない。

 やっとの思いでアリスに見られながらブリーフを履くことができた。


「さてとアリス。今の俺たちの状況どう思う」


「遭難扱いになってると思います。お父様もお母様も心配していると思います。早く帰ってあげたいけど…」


 アリスは自分の髪をひと触りした。

 俺は「そう言うことじゃないんだ」と首を横に振った。


「?ではどういう状況なんでしょう?んー、そうですねーまるでカップルみたいとかですか?そ、その貴重な体験をしてしまいました。…ご、ごめんなさい。私みたいな気持ち悪い怪物とカップルなんて嫌でしたよね」


「いやその通りだ。今の俺たちはカップルみたいなんだ。これは非常に良くないと言ってもいいだろう」


「良くない理由をお伺いしても」


 アリスがゴクリと唾を呑む。


「君は兄の婚約者で俺にも婚約者がいる。つまりこれは不倫だ」


「ふ、不倫!」


「浮気と不倫の違いが分からないこの俺がはっきりと断言しよう。これは不倫だ!」


「浮気ではなく不倫!!」


 アリスも驚愕している。ことの重大さが分かったようだ。


「もしこの事が父に知られたら俺は殺されるだろう。だからなアリス今日のこの事は誰にも言ってはいけない。二人だけの秘密だ」


「ふ、二人だけの秘密…。本当に不倫をしてるみたいです」


「隠し事がまた増えちゃったな。とりあえずご飯にでもしようぜ」


 二人で別荘に置いてあった食べ物を食らい、リゾート生活を楽しみ一日目を終えた。

 二日目もアリスの体は戻らなかったので別荘にとどまり、そして三日目の朝アリスの体は人の姿に戻っていた。

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