第16話
「アリスに回復魔法が通らないらしいんだけどお前なんか知ってるか?」
「先に状態異常回復うたねーと意味ねーぞ」
「だってさ、アリス」
アリスはその場で目を瞑った。
今魔法を発動してるのかな?全く魔法なんて使ったことのない俺には分からないや。
「調子が戻ってきたような気がします。ヤーナツ君を一人にするようで悪いですけど、その、シャワーを浴びて来てもいいでしょうか?」
やっぱシャワーもあるんだなこの世界。今まで水浴びだけだったから分からなかったや。
「俺の事は気にせんでいいよ。いってらっしゃい」
「ありがとうございます」と言うとアリスはスッと立ち上がり、髪をなびかせながら足早に去っていった。走っていった先には別荘と思われる立派な作りの屋敷があった。
ウツツと二人きりになった俺はウツツを仰向けに寝かせるようにして置き、ついでに自分も砂浜に寝転がる。
「なんでわざわざ俺に星を見させんだよ」
「いや、首の切断面が地面につくのが嫌かなって思って」
「確かにそれは嫌かもな。変な気使ってくれてありがとよ」
「メイちゃんツンデレだったのか」
「次向こうの名前出してみろ、ぶち殺すからな」
「ツンツンしちゃってかーわいー」
こんなくだらない会話はさておき、俺にはウツツに聞きたいことがいくつかあったんだ。
「それよりもさ、俺状態異常回復かけてもらってるよな?ピンピンしてるし。もしかけてもらってなかったら俺ヤバイ?」
「お前は大丈夫だろ」
えー何その自信。
「なんで言い切れるん?」
「他にも不思議に思ったことがあんだろ。それがヒントだ」
なんだなんだ、と頭を捻って考える。
そういえばずっと疑問に思っていたことが何個かある。
「悪魔のことはずっと不思議に思ってたね。悪魔って滅んだんじゃないの?」
「そういことじゃねーんだがな。まあいい、それは転生者に聞いたんだろ?教える代わりにそいつの事、教えろよ」
「分かった」
なんだか横になったら眠たくなってきたな。だから適当に返事をしてしまった。
「じゃあ教えてやるよ。確かに悪魔は人間との生存競争に負け滅んだとされている。でも僅かな生き残りが人と交わる事でなんとか種を存続させようとしてな。その結果、先祖返りっていうのか?闇属性魔法が使える人間がポツポツと出てきたわけだ。自分達が優れた存在だと思ってるそいつらは悪魔団を組織しいつか人間を滅ぼそうと企んでいる」
「闇属性魔法が使えるかどうかが悪魔の条件なの?」
「本来悪魔しか使えない闇属性魔法を先祖返り?で使えるようになってるだけだ。まぁその代わり回復魔法、正しくは聖属性魔法だけどそれが使えなくなっちまってる。でも基本みんな人間だぜ」
説明聞いてたらさらに眠くなっちゃった。
「ダンジョンの外っていうのも教えて欲しいんだけど…」
「ちょっと待てその前に転生者について話せや。おい聞いてんのか、こら。まさか寝てねーよな。おい起きろ、このままじゃ俺たち波にさらわれちまうぞ。おいおい冗談だろ」
何やらゴソゴソと体を弄られてるような気がし目を覚ますと、目の前にはアリスがおり目に優しい感じの赤い光を髪から放っていた。
「おぉアリスおはよう。なんかすげー綺麗だね」
「あ、ヤ、ヤーナツ君これは違うんです。ヤーナツ君の服が汚れてたから着替えさせようと思って」
何を言ってるんだと思い自分の姿を見ると、白ブリーフ一丁というなんとも滑稽な姿だった。
「うおっ、裸ん坊だ。わざわざありがとう」
アリスは「いえ」と言うと持っていた服で顔を隠した。
「そういえばウツツは?」
「女性の方が迎えに来たようで、もういませんよ。その方にこの姿見られてしまって、それにもしかしたらいるんですよね?私が化け物だって知ってる方が他にも」
「かもね。でもさ、俺がどうにかして隠し通すよ。それこそ脅しでも使ってね。秘密が周知しちゃったら俺を守る意味もなくなっちゃうしね。だからさ安心してとは言い切れないけどさ、安心してよ。ウツツの恥ずかしい秘密も握ってるしさ」
と言ってもただの本名だが。
アリスが「はい」と頷くと、急に髪が俺にまとわりついてきた。
「ち、違うんです、違うんです。何故か制御出来ないんです。何ででしょう、何ででしょう?!どうしたらいいんでしょうか!?」
「なんか暖かくてちょうどいいし、このまま寝ちゃおっかな。おやすみ」
困惑するアリスを尻目に寝た。一瞬で寝た。そのぐらいねむたかったのだ。
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