第5話

 サンザンベル邸の敷地内にある小さな訓練所でリアが一つのスキルを見せてくれる。


「ジバシリ」


 地面を擦り上げながら木剣を振り上げると衝撃波のようなものが地面を走った。衝撃波はモンスター素材でできた太めの木の柱に当たり、バキッと大きな音が鳴った。


「おぉすげー」


「一つ目はこれよ。二つ目の方は教えるって言った手前こんなこと言うのもあれだけど、私は使えないわ」


「え、じゃあどうするん」


「一応見たことはあるの。だからなんとかあなたに叩き込めると思うわ。それよりもまずはジバシリを撃ってみましょ」


「分かった」


 木剣を強く握り構える。

 この木剣ですら重たいと感じてしまう。なんと貧弱な体だろうか。

 リアがやったように地面を擦りながら剣を振り上げようとしてみる。


「うぉぉぉジバシリ」


 しかし木剣は地面にガッと引っかかり剣を振り上げることは叶わなかった。


「まずは剣の扱い方からね」


「いやその前にやっぱ筋トレしないと。剣が重くてなかなか思ったように振れないや」


 一度二度剣道部の人達がする様に素振りをする。やっぱり思ったように振れない。腕が剣に持ってかれていくようなそんな感じがする。


「木の剣でそれって相当非力ね」


 リアは大きなため息をついた。

 ブンブンととりあえず適当に木剣を振っていると、一人の少年が訓練所へやってくる。少年はチラリと俺の方を見ると驚いた顔をし近づいてきた。


「おはようございます。ラウド様」


 リアは深々と頭を下げる。その声音はなんだか高いような気がした。

 ラウドは軽く挨拶を返すと俺の方を見た。


「珍しいなヤーナツ」


 ヤーナツ兄であるラウドは歳に合わない低い声で話しかけてきた。


「まぁね。いつかあんたも追い越すよ」


 兄との初めての会話。呼び方を間違えたりしてないだろうか。


「楽しみにしてるよ」


 なんか俺とは違ってイケメンだなー。


「もしかして君が弟に剣を?」


 続いてラウドはリアに話しかけた。


「恥ずかしながらわたくしがヤーナツ様に剣をお教えしております」


「少し私と手合わせをしないか」


「私なんかで良ければ喜んで」


 リアがそう返すと二人は少し離れた場所に移動し剣を構え対面した。

 なんとなく俺も「やれやれー」と適当にヤジを飛ばしといた。


「先手は譲るよ」


 ラウドのその言葉を聞くとリアは「では参ります」と言い距離を詰めた。

 カンカンカンと木剣のぶつかり合う音が軽快に鳴る。

 少しリアが押しているだろうか?しかしラウドも負けじと応戦している。その剣捌きは見事なもんでついつい弟と兄で出来が違うんだなと比較してしまう。

 そんなこと思っちゃ駄目だと首を横に振った。

 俺がそんな葛藤かっとうをしているうちに二人はどんどんヒートアップしていき、最終的にはラウドがリアの剣をカンっと吹き飛ばし勝負はついた。


「参りました。流石です」


「君名前は?」


「リアと申します」


「良かったらまた今度手合わせをお願いできないだろうか」


「勿論です。私で良ければいつでも」


 リアの転生ライフは順調そうだ。

 さてと俺も頑張りますか。

 とりあえず素振り百回。続けれそうなら百十、百二十と増やしていくか。それで部屋に戻ったら腹筋、腕立て、背筋、スクワットを三十回。これを週に必ず五回はするようにしよう。慣れてきたら回数を増やしていこう。

なんかやることを決めたら俄然がぜんやる気が出てきた。

 俺は勢いよく素振りを始めた。

 三十回程素振りをしたところで腕は上がらなくなった。

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