第2話

「つまりここは18禁乙女ゲーム『恋とダンジョンは迷路のように』の世界って事。それであなたは主人公達の前に現れては邪魔してくる嫌われ最弱キャラなの」


 あれから小一時間程、彼女の説明を聞き続け今だ半信半疑であるが、なんとか自分の置かれている状況は理解できた。どうやらここは3Dダンジョン要素のある乙女ゲームの世界らしい。そして俺はゲームキャラになってしまったらしい。


「つまり俺はヤーナツ君の体を乗っ取ったって事?」


「その解釈で問題ないわ」


「君はそのゲームしたことあるの?」


「まぁかなりやったわね」


一体現実世界では何歳なんだと疑問に思ったがここで直接聞くほど無粋ではない。


「現実世界に帰る方法本当にないんだ」


もしかしたら向こうの俺は死んでるかもしれないが生きてる可能性だって捨て切れない。出来ることならもう一度家族に会いたい。


「絶対とは言い切れないけど今のところ見当もつかないわね」


「もしかしてこの世界、命儚い?」


「モンスターとかもいるし日本よりは間違いなく儚いわね」


モンスターとかいんの?蜂ですら怖いのに現代っ子舐めんなよ。


「やべーじゃん。強くならないと。もしかして魔法とかってある?」


「あるけど。あまり強くなる事に期待しない方がいいわ。何度も言ってるように貴方は最弱キャラよ。魔法使いの主人公が一発殴っただけでバタンキューするようなクソ雑魚キャラなの」


「え、やばくね。もしお強いようでいらしたら僕のこと守ってくれませんかね」


物腰低く媚を売るように上目遣いで頼み込む。


「嫌よと、言いたいところだけど私も鬼じゃないわ。一つ頼みを聞いてくれたらとっておきの情報を教えてあげるわ」


 このゲーム世界を生き抜く為のとっておきの情報といえばチート装備とかその辺だろうか。ならば乗らないてはない。


「頼みって何をすればいい」


「受けてくれるのね。やったわ。まさに渡りに船」


 喜んでなかなか頼みについて話さない少女にもう一度「頼みって」と聞いた。


「あなたのお家で私をメイドとして雇ってくれないかしら」


「もしかして俺いいとこの坊ちゃん?」


「そうよ。しかもあなたのお兄さんは攻略対象キャラで私の最推しなの」


 だから雇ってほしいのか。


「オーケー分かった。頼むだけ頼んでみるよ。まだ見ぬ親に」


「ホントに!ありがと!メイドとして働けるようになるまで教える気無かったけどサービスで教えてあげるとっておきの情報」


「よ!姉御太っ腹」


「誰が太っ腹よ!」


 少女にバシンと頭を叩かれる。

 もしかして太っ腹に反応したのは前世が関係しているのだろうか。

 少女は照れ隠しをするようにコホンと一つ咳払いをした。


「それでとっておきの情報だけど、実は主人公達の同学年つまりあなたの同い年にチートキャラがいるのよ。しかもその娘私の最推しであるあなたのお兄さんと婚約関係にあるの」


 なんだか思っていた情報と違い露骨にガッカリしてしまう。


「なんか思ってた情報と違うや」


「本題はここからよ。その娘実は人間じゃないの、悪魔という事になってるの。ある日その事が悪役令嬢にバレてしまうの。でも悪役令嬢はそんな彼女にも変わらず接した。だから彼女は悪役令嬢の言う事ならなんでも聞いたわ」


「ごめんちょっといいか。この世界の悪魔ってやばい奴ら?」


「めんどくさいから詳しい事は省くけど悪魔なんていないと思っていいわ。人に負けて滅んだのよ。それで続けるけどあなたが悪役令嬢の代わりに彼女を従えればいいのよ。あなたが彼女を制御すればこっちとしても都合がいいわ」


 なるほどそれで彼女に守って貰えばいいと言うわけか。でもなんか目の前の少女にいいように使われてるような気がしなくもない。


「もうちょいその娘の詳細を聞かせてくれないか。本編で彼女はどうなるのかそう言うのを教えてくれ」


「いいわ。その娘はアリス、て言うの。悪役令嬢と常に共にいてよく主人公達に突っかかっていたわ。悪役令嬢の言う事はなんでもした。主人公の上靴に画鋲を入れたりいきなりバケツの水をぶっかけたりそんな古典的ないじめも全部彼女が命令されてしていた。悪役令嬢が落ちぶれても彼女だけは離れなかった。そんな時彼女が悪魔だと言う事が周知してしまうの。主人公達は彼女に手を差し伸べたわ。だけど名誉挽回を図ろうとした悪役令嬢によって背後から首をチョンパされるの。

ルートによって細かい違いはあるけどこの結末に大きな違いはないわ」


「なんか思ったより重いなぁ。それにチート能力があるような娘にも思えん」


 何よりこの世界の悪魔は滅んだのにその娘は悪魔と言われている。んーさっぱりだ。意味わからん。


「彼女がとても強いのは確かよ。多くのプレイヤーが彼女に悩まされたわ。でどうするの?彼女を味方にするか、それとも放置か」


 うーんと顎に手を当て考え込む。

 なんか騙されてるような気がしなくもないんだよな。もう少し根掘り葉掘り聞いてみるか?素直に答えてくれるといいが。


「あぁついでにアリスは巨乳よ」


「ほいじゃあいっちょアリスちゃんに守られるとしますか」

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