乙女ゲー世界の最弱悪役キャラに転生したのでチートなあの娘を脅して生き残る〜脅してるはずが何故か惚れられてた件〜

わかめこんぶ

第1話

 夜、謎の寝苦しさを感じ目を覚ますと部屋全体が火に包まれていた。

 すぐに飛び起き部屋の扉に向かった。窓には格子が付いていたため正しい判断だと思っていた。が、袖で手を守り扉を開けた瞬間炎に襲われた。

 服に引火し肌を焼いた。なんとか叩いて消そうとしたが消えることはなかった。急いで服を脱ぎ捨てるとカーペットに火が燃え移った。

 どんどん火が広がっていく。

 扉の奥の廊下は相変わらず火の海だ。でもここを進まないといけない。

 意を決し走り出した。しかし無情にも床は崩れ足を取られた。そのまま火に焼かれた。

泣き叫んだし助けを乞うたが救いの手は差し伸べられなかった。

 いつのまにか意識はなくなっていた。





 ほわーと顔に温かいものを感じ目を覚ますと金髪の少女の顔が視界に写った。


「おわ、誰だい君」


 なんだかモヤがかかったように頭が重い。


「目覚められたのですね。では私これで失礼します」


 少女は質問に答える事なく立ち去ろうとした。


「ちょ、ちょっと待ってくれ。ここはどこなんだ」


 あたり一面、木々ばっかでここがどこだか分からない。そもそも外にいる事自体がおかしい。家で寝ていたはずだ。しかし少女は歩みを止める事なく離れていく。


「俺確か自宅にいたはずなんだが、それでそれで、確か───うわぁぁあぁぁぁ」


 自宅で起きた事を思い出し身を縮め震えた。さすがの少女も無視できず近づいてくる。


「どうしたんですか。まだ痛いところでも」


「俺は家で寝てたはずだ。起きた時にはもう火に囲まれててそれで俺は…」


 何を言っているのかさっぱり理解できず少女は首を傾げた。


「か、家族!家族に連絡したいんだ。スマホ

持ってないか?」


 少女は目を見開き信じられないといった表情で俺を見た。


「あなた転生者ね」


「?一体何を…。それよりもスマホを持ってないならごめんけど君の家まで案内してもらっていいかな。固定電話使わせてくれないか」


「残念だけどこの世界にそんなものはないわ。ついでに言うとあなたはあなたの知ってるあなたじゃないわ」


「君はさっきから何をいってるんだ?」


 少女は腰に下げた麻の巾着袋から手鏡を取り出し俺に渡す。


「論より証拠、自分の顔を見てみなさい」


 言われた通り鏡で自分の顔を見た。


「え」


 驚きのあまり言葉が出ない。手鏡を持ってない方の手で自分の顔をペタペタと触る。一分程経ったくらいでやっと


「誰これ」


 と言った。


「あなたはヤーナツ・サンザンベル。この乙女ゲーきっての最弱キャラよ」


「ごめん、全然理解が追いつかないや」

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