第44話 初夜と羽毛布団
結婚式の後に必ず訪れる初夜。
夫婦になって初めて一緒に過ごす夜。
ヘイヴンは悩んでいた。今日確かに誓いを立てて夫婦になったのだ、だから今夜は初夜ではないか。しかし、キスさえも心臓は爆発しそうになり、体中から汗が噴き出るような思いだ。そんな…、そんな後の事など…考えるだけでも身もだえしてしまう。
しかし、ニーナが待っているかもしれない…。国王は特別室を用意してくれていた、そんな気遣いがヘイヴンは余計に追い詰められている様で辛さしかない。
もしかしたら国王はわざとやっているのか⁈
この特別室の扉の向こうに妻がいる、ああ…なんて重い扉なんだ…。
部屋に入って見渡す、いない…。
妻はいない。
ふと、ベッドを見ると…、いた!
いつものニーナだ、寝ている…。
そう、特別室の最高級ベッドの羽毛をふんだんに使った豪華羽毛布団セット!
フワフワの枕に埋もれてすでに夢の中だ。
「本当に…、気持ちよさそうだな…。」
ベッドに腰を掛け、がっかりしたような…ホッとしたような…複雑な気分だ。
ベッドに横になってみる。
「フッ…。この柔らかさは…即落ちるな。」
「…う~ん…、さいこう…。」
寝言を言いながらニーナが抱き着いてくる、ヘイヴンを抱き枕にする気だ!
いつも通りのニーナだが、初夜には残酷だ。
「…参ったな、これは眠れそうにない…。」
翌朝、ニーナは気持ちよく目覚めた。
起きて目に入ったのは横で寝ているヘイヴン。
まぁ…、なんてキレイな寝顔、でも…あの瞳が見えないのは残念ね…って、なに⁈ なんでヘイヴンが同じベッドで寝てるの⁈
あれ???
「そうか…夫婦になったんだもの…同じベッドで寝るのよね。…ん?寝るだけ??
あれ?確か、じじ様は…???…。」
ブツブツと言っているとヘイヴンが目を覚ました。
ヘイヴンはまだ寝ぼけている、それもそうだ…やっと眠れたのは明け方のことだ。
初めて見る寝起きのヘイヴン、髪の毛には少しの寝ぐせ、パジャマのボタンが外れ鍛えられた胸板が見える、そしてニーナの一番好きな赤い瞳はまだ半分くらいしか開いていない…。
男の人に対して初めてニーナは可愛いという感情を抱いた。
もうだめだ…、色々と耐えられそうにない。
この破壊力から逃れるべく布団に潜り込む。
ヘイヴンは不思議に思って布団をはぎ取ろうとする。
「…え?…ニーナ、どうしたの?」
「ダ…ダメー!!」
布団の下でバタバタしている…。ヘイヴンはハッとする、もしや…これは…先に寝てしまったニーナへの仕返しのチャンスでは?
「ニーナ…。可愛い…僕の奥さん…顔を見せて?」
ニーナは布団の中でヘイヴンの聞いたことのない甘い声に余計に足をバタバタさせている。恥ずかしくてどうして良いか分からない…もう一生布団から出られない!!
するとその時ヘイヴンも布団に潜り込んできた。
「君が出て来ないなら、僕が行けば良いだけだよ。」
ニーナはまたもや発せられる甘い声に抵抗して背を向ける、ヘイヴンも負けない、背後から腕を回し抱きついてくる。
ひゃっ!!と言う変な声が出てしまう。今やヘイヴンはがっちりとニーナを包み込んでいる。
さらに続く攻撃。
「うかまえたよ、どうする?」
耳元で囁かれてもう限界だ。死にそう…。
「…む…無理です…。」
「ぷっ、無理って…面白いな。
それにしても、抱き枕がこんなにも心地よいとは…ああ、特別だからか…ちゅ。」
ヘイヴンはニーナの頭にキスをしてそのまま動かない。
もちろんニーナも動けない、心臓は物凄い速さで鼓動していて、部屋中にその音が響き渡っている様だ。
でも、ヘイヴンの優しい手…体温…なんて心地よいのだろう。後ろから回された手にニーナも手を重ねる、ヘイヴンは一瞬びくっとしてさらにニーナを強く抱きしめる。
「なんて幸せなんだろう…。」
「…私も…。」
二人は静かに流れる甘い時間を過ごした。
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