第41話 はだしのお姫様

 温室からの逃亡の後、すぐには戻らず近くの木の下で休むことにした。

走った後の疲れよりも、精神的疲労で動けそうにないのだ。


 ニーナはおもむろに靴を脱ぐ。


「よくこれで走れたと思わない? さすがに痛いわ…。」

「ん…。はしたないですよ、お姫様。」


「もう…、こうすれば良いの?」


 そう言ってニーナは髪の色を茶色にする。

国王とセナに会う時は白色になっているのだ。

最近は自分の色になっていることが多い。とは言っても王城で人が多い場所では気を付けている様だ。


「君自身のままでいいのに…。」

「だって、どこで誰が見てるか分からないじゃない、姫が生きていて王座を狙っている!なんて噂が出たら大変よ。」

「いいね、いっそのこと本当にしてやろう、セナを蹴落として女王…なんて。」

「プッ…、じゃぁ、ヘイヴンは?王様?」

「それは、嫌だなぁ。俺も自由に生きたい、君とね。」



「ニーナは心のままに進めば良いんだよ。まぁ、ここに来たのは俺のせいでもあるんだけど…。森を駆け抜けるお姫様なんて君らしくて良いじゃないか。」

「お姫様ねぇ、私になれるなんて思ってもないくせに…。」


「俺はニーナがここにいたいのなら、ここにいればいいと思う。お姫様が嫌なら回復魔法士なればいい。なんにせよ、俺はいつでも側にいるから。」


「まったく…。お父様も兄様も同じことを言っていたわ!ヘイヴンも分かってるでしょ!家族に会えたのは嬉しい、まだまだ一緒にいたい。でも自分を偽って生きることに意味はないわ。

もう…決めた! 帰りましょう…魔獣の森へ!!」


 ニーナは立ち上がってヘイヴンに向かって手を差し出す。

ヘイヴンは一瞬あっけにとられるが、ニヤッと笑ってその手を叩く。


 パチンという音が響き渡る。


「さぁ、帰ろう!!」

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