第40話 姫さらい

 今やヘイヴンは国王の前に跪いて頭を下げている。

自分でもなぜこんなことになっているのか良く分からない。


「国王陛下、私ヘイヴン・フロンデース、恐れながら姫殿下に結婚を申し込む許可を頂きたく…。」


 突然のことにニーナは呆然となっている…。

思わず手に持っていたお菓子を落としてしまう。菓子がお皿に当たってカシャンッと音を立てると、意識を戻したように席を立ちその場から逃げ出そうとする。

ニーナは温室から出て中庭の方へ向かう、一心不乱に走っていた、あの場から早く

立ち去りたかった。


 ヘイヴンはニーナを追いかけていた、なんて速さだ…ドレスを着ていなかったら追いつけなかっただろう。


ようやく手が届く!


「ニーナ!!!」


 ニーナはふいに手を取られて驚いて振り向く、ヘイヴンが息を切らしてニーナの手首を握っている。自分も息が切れて心臓がドキドキして今にも爆発しそうだ。

ヘイヴンに捉まれている手首が熱い、そこから全身に熱が回っていくような…。


「…ごめん。驚かせたね。」


 ニーナは首を振るので精一杯だ。

ヘイヴンはニーナの両手を握って逃げられないようにしている。

騎士らしいがっしりとした手、…捕まった。

ヘイヴンは真剣な顔で瞳に炎を宿し見つめている。まるで辺りが時が止まったように静まり返っている。


「ニーナ、俺の側にいて欲しい、これからもずっと…

どこであろうと君のことを幸せにすると誓う。

何があろうと盾となって守ろう。

剣を取り共に闘おう。

この命ある限り愛する。

結婚しよう、妻になってくるか。」


 ニーナは何も頭に浮かばない、これが頭が真っ白になるってことなの?

あとはもう自分の心に従うだけだ。


「はい、あなたの妻になります。私も命ある限り愛します。」


 ヘイヴンはニーナを抱き上げる、そのまま嬉しさのあまりグルグルと回り始める。


「…ヘイヴン! ちょ…。」

「あはは、ごめん…、浮かれすぎた。」


 ヘイヴンはニーナを下ろすとそっと口づけをした。

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