第35話 身分差?

 ヘイヴンは悩んでいた。今やニーナはこの国の姫君で、自分はただの騎士。

身分が違いすぎるのではないか? このまま一緒にいていいものか。


 国王陛下の意向も分からない、ニーナを姫と認めるのか、そのまま身分を隠し回復魔法士として置くつもりなのか。そもそも…ないはずの存在がいきなり現れるのはどうなのだ? 今、城でのお茶会ことですでに噂話が出始めている、暇人どもはあれやこれやうるさい。このまま放っておくのか?

 問題は山積みだ、この国にいればいずれは真相は暴かれ、ニーナはまつりごとの犠牲になってしまうかもしれない…彼女が政略結婚など考えてもぞっとする。

うだうだと考えても無駄ということは分かっているが…。

 

 もし、彼女が帰ることを望めば自分は迷うことなく彼女と共に行こう。


「…ニーナの望むままに…。」



 いつも朝は早いニーナが今日はまだ起きてきていない、昨日の狩りで疲れたのか?

少し心配になってニーナの部屋に来てしまった。


トントン…

「…ニーナ? まだ寝ているのか?」


 返事はないが、なにやらガサゴソと物音がするので起きているのは間違いない。

女性の部屋をいきなり訪れるのはやはり良くないな…などと反省しているとニーナがドアを開けた。


「…おはようございます。」


 なにやら挙動不審だ、ニーナの目はチラチラとベッドを気にしている様だ。見ると

布団が異様に盛り上がっている。


「ニーナ?何か隠しているのか?」

「…それは…。その…ご…ごめんなさい…!」


と言いながらニーナがベッドの上に飛び込む、バフっという音と共に鮮やかな緑色が目に飛び込む。


「…だって!あまりにも気持ちよくて…!」


 それは昨日狩場で見つけた草、シーツの下に敷き詰められている。


「いつの間に…。」

「…ね!ヘイヴンも転がってみて!」

「…はぁ~、ニーナにはかなわないな。」


 そう言ってニーナの隣に倒れこむ、まるで草原にいる様だ。フワッと草の香りと共に薬草らしき香りもする。


「薬草も採って来たのか?」

「うふふ…、結構良いものがあったのよ…あの森。」

「この国の森は好きか?」


「好きよ、…でも…。」


「帰りたいか?」


 沈黙…。ベッドに顔をうずめてスゥっと香りを嗅いでいる、魔獣の森の匂いを思い出しているのだろう。

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