第34話 美しいだけではない姫
大きなシカの解体は女のニーナには時間がかかる、ヘイヴンと護衛のものがせっせと働いている。セナとニーナは休憩だ。
「ニーナは狩りが好きなのだな、楽しそうだ。」
「えぇ、今日はついてたわ、ちょうどシカ肉が食べたいと思っていたの。」
「…そうか…。なんだか…今までの印象と違っていて…少し驚いた。」
「あぁ…、じじ様に高貴な人の前ではきちんとするように言われてたから…、ドレスも素敵だけど…きついし、色々邪魔だし…。私はこっちの方が良いわ!」
「そうだな、この方が良い。」
今日のニーナはなにか吹っ切れたように表情が明るい。
セナはそれを見て安心した、昨日までの彼女は何かに締め付けられているような…、
そんな彼女を自分が守らねばなどど勝手に考えていた、しかしそんなものは必要ないらしい、彼女は強いのだ。
「セナ…、私ね、この国に来るまで色々想像してたの、家族のこととか、自分がどう思われるか…とか。
物凄い勢いでこんなことになって…、心が追いつけなかった…。
でもね、彼が…ヘイヴンが引き戻してくれた…。」
「そうか…、奴が君の側にいて良かった。これからも…いてくれるんだろう?」
「…フフッ…。」
シカの解体をしていたヘイヴンが手を止めてやって来ると、ニーナは満面の笑みを浮かべた。
「ヘイヴン! 私、あっちに良い場所を見つけたから寝転がって来るわ!」
「あぁ、後でいくよ。」
「アハハ!…寝転がるってなんだよ⁈」
「あぁ、言葉通りさ、転がるのに良さそうな場所があると我慢できないらしい。
ニーナは心のままに動く、危なっかしい時もあるが…、それが羨ましくもある。」
「良く分かっているんだな。
心のままに…か。俺はニーナに出会ったあの日から自分の中で何かが変わっていくのを感じていた…ニーナが色を取り戻したように、俺も心で感じる…ことが分かってきたような気がする。」
セナは厳しい王太子教育を受け、感情というものが良く分からなくなっていた。
もともとあまり感情というものを持ち合わせていないような…、そんな彼は氷の太陽とも言われていた。
しかし、今ここにいるのは大声で笑い、悩みを友に打ち明ける普通の青年のようだった、ヘイヴンは友のこの変化になんだかホッとする。
二人でニーナを探しに行くと、木の下の草が生い茂る中に丸くなって寝ている。
「…あれ、気持ちいいのか?」
「どうだかな…。」
風に揺られて草がニーナの鼻をくすぐる。
「…くしゅんっ!」
二人は大笑いをしてニーナを起こしてしまった。
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