第33話 ファンデーヌの森
バラ園での衝撃の告白の後に、混乱した頭を癒すべくファンデーヌの森へ行くことにした。
二人が森に行く準備をしていると、癒しの時間を打ち壊す元凶がやって来た。
またもや、知らせをせずにセナがやって来たのだ。
ニーナは笑顔でセナに駆け寄る、セナはわざとらしい仕草でニーナの手を取り優しい笑顔を向けている。
「どこかへ行くのか?」
「あ!セナ!!今から森へ行くのよ。」
「そうか…、それは楽しそうだな。丁度良い、私も行って良いか?」
「…何が丁度良いだ…?急に予定は変えられないだろ!王太子殿下!!」
キッとセナを睨みつける。
わざとヘイヴンを嫉妬させようとしているのは分かっている、昔からセナは人をからかうのが好きなのだ。仕返しをしたいところだが…もう少し付き合うか?どうせ何も良い考えが浮かばない。などど考えているとニーナが駆け寄って来た、つい笑顔がこぼれてしまう…にやける…と言うのか。
明らかに二人の間の空気は甘い。
「なんだ、もうバラているのか…。もう少し楽しめると思ったんだがな。」
「あいにく…、腹黒いお前とは違ってね。…昨日全部話してくれたよ。」
「それで?」
「それで…とはなんだ⁈」
セナはニヤニヤヘイヴンを見る、ヘイヴンの顔は真っ赤だ。
結局、森へはセナも行くことになり、護衛も含めるとけ結構な人数になってしまった。
「…こんなに大人数だとうやりにくいわね。」
「ニーナ、森に何しにいくのだ? 散歩かなにかじゃないのか?」
ニーナは少し困ったような顔をしている、見ると背中に弓矢を背負っている。
「え? まさか…?」
「ニーナは狩りが好きでな、面白いものが見れるぞ。」
しばらく森を進んで行く。ニーナを先頭に、ヘイヴンとセナがそれに続き、護衛達がそれについて行く。
「…近い…、クンクン…シカ肉…!!!」
そう言うと、そこからニーナは気配を消し慎重に動いていく、他の者もそれに習い同じように進んで行く。
そっとニーナが手を挙げる、止まれの合図だ。
ニーナは目をつむり、耳と鼻に全集中力を注いでいるようだ…、すると突然矢筒から矢を抜き弓にセットする、息を整えて慣れた手付きで弦を引き狙いを定めて矢を放つ。
静けさの中、矢はヒュッと飛んでいく…ドスッという音と共にうめき声があがる。
「…ヘイヴン! 止めを!!」
その声と共に静寂は破られ、ヘイヴンは音のした方へ剣を抜きながら走っていく。
皆も遅れまいとそれに続く。
「…あぁ…、まだ駄目ね、狙いがかすかに外れてる…。 ヘイヴンありがとう。
でも…もうちょっと小さな傷にならなかったの? …これだと毛皮に…。」
「…えぇ⁈ これでいいだろ、毛皮なんてここで取ってもどうしようもないんだし。」
「う~ん…、でも…、もったいないじゃない!」
この一連の会話を聞いていたセナは置いてけぼりを食らっている。しかも二人はせっせと解体の作業に移っている。
「セナ、どうした?」
「…いや、我が妹は…実にたくましいのだな…。」
「アハハ! こんなのはほんの一部さ!
俺が出会ったのはこのニーナだ、お前はドレスの美しいニーナしか知らないからなぁ…。」
セナはニーナの一部しか見えていなかったことがどことなく悔しかった。
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