第31話 太陽と月
静寂を破り、口を切ったのはセナだ。
「どういうことですか? 父上…。」
「まあ、落ち着け。少し…驚いただけでな、何も心配ない。
ニーナ、…いや…、カレデニーナ、こちらに。」
何が何だか分からないセナは困惑しきっている、ニーナは国王の横へ行く。
「アレデンセナよ…。 ここにいるのはカレデニーナ・ルナ・ファンデーヌだ。
私の娘であり、お前の双子の妹だ…。」
国王ははっきりとした口調で言った、これは冗談でもなんでもないらしいが、セナは混乱しきっている。
「…は?…な…何を…?」
「もう隠すことはしまい…、愚かな王は自分の娘を追放したのだ…。」
国王は、ベッドから出るとニーナの前にうつ伏した。
「…すまない…。カレデニーナよ…。私は…何てことを…。」
「…陛下…。 止めてください…そんなことをする必要はないのです…。だから…お顔をあげてください…。」
国王を落ち着かせてベッドに座らせる、セナも頭の中を整理しようと必死だ。
そんな中、ニーナは冷静になっていた。何度も何度も夢に見た…、何を言おうか?どんな顔をしようか?
いざその時になってみると拍子抜けと言うか…、一気に緊張の糸が切れたようだ。
「…いつかこの国に来てみたいと…ずっと思っていました……。私の名のつくこの国…、じじ様はよく言っていました…ファンデーヌはそれは素晴らしい国だと…素晴らしい王が納める国だとも…。」
「…ヴォーグルが…、そんなことを…。あやつは…。」
じじ様と言うのは、ファンデーヌにて執事をしていた…名をヴォーグルと言い、長年国王に仕えていたのだ。ニーナはそのヴォーグルに育てられた。
「国王は私に名を与え、じじ様に託したと…、こんな姿で産まれた私を助けてくださったんですよね…?」
「…私はね…、まだ若く愚かだっただけだよ…。皆がお前を亡き者にしようとしている中…ヴォーグルだけは冷静な判断が出来ていた…。」
「…思っていたより時間がかかってしまいました…怖かった…この国に来るのが…。でも来て良かった…こんなに幸せな気持ちになるなんて…。」
ニーナは涙を浮かべながらフワッと笑った。
「…あぁ…。やはり似ている、ミレーヌの笑顔だ…。」
ここまで、話を聞いてセナはまだ信じれずにいた。
「…父上…本当なのですか…?こんな話…にわかに…信じられません…。」
「そうだな…、頭の固いお前には時間が必要だな…。」
「…そんな…、ニーナが妹…?双子…?」
ぶつぶつとセナが言っている。それを見て笑うニーナ、国王は胸がいっぱいになる。
「…あぁ…、神に感謝を…!」
どのくらい時間がったのだろうか、ヘイヴンは今セナの執務室でただただ待っていた。
ドアが開きセナがニーナの手を取り部屋に入って来た。二人を包む雰囲気が何者をも邪魔が出来ないような…そして見つめ合う目つきの暖かさ。ヘイヴンは話し出すことが出来ない。
「待たせたな。」
「ありがとうございます。…セナ…様…?」
「では、またな…ニーナ…。」
ニーナは恥ずかしそうにセナを見上げる。セナは今までに見たことのない表情をしている、彼のこんな柔らかい微笑みは初めて見る。ヘイヴンは居たたまれなくなって何言えないままニーナを連れて部屋を出る。
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