第29話 お茶会の飛び入り

 王城でのお茶会は伯爵家のと比べ物にならないほど豪華だった。

様々なお菓子がテーブルいっぱいに並べられているが、ニーナは緊張のためか菓子にはあまり手をつけていない、表情もどこか硬く何かを考え込んでるようだ。 

ヘイヴンはセナとニーナ二人の一挙一動を注意深く見守っている。

セナは自分自身の身に起こっている何かがまだ分からずにいて、それを知りたい。


 そんな中、一層空気がピリッとする。

「やあ、華やかな茶会が開かれていると聞いてね。 お邪魔しても良いかな?」


ガタッ!

ヘイヴンが慌てて席を立ち数歩引いて跪く、使用人達も一斉に頭を下げる。

セナは、はぁ~っと言いながら席を立つ。 ニーナも周りに従い席を立ち頭を下げる。


「…まあ、良い。座ってくれ。」

「…はぁ、父上、何用ですか?ややこしくなるではないですか…・」


「お前は本当冷たいな…、お前が友を招いて茶会とは珍しいじゃないか、見てみたくもなるさ。 ヘイヴン、久しいな。怪我をしたと聞いたが、もう良いのか?」

「はっ…、この通りでございます、陛下のご心配には及びません。」


「私はアルデンセナの父でアルフォンドと言う…、君は?」


 ニーナは何も言えない、小刻みに震えている…。当たり前だ、ただの町娘が今国王の前にいるのだから。

セナと同じ漆黒の髪に金色の瞳、その表情や声は穏やかだが圧倒される…、息苦しいくらいだ。


「…ご機嫌麗しゅうございます…国王陛下。私、ニーナと申します…。」


やっと言うことが出来たが、声が震えてもう何も言うことは出来なそうだ。


「息子から聞いているが、君の得意なことは実に興味深いね。色々と聞いてみたいものだ。」

「父上、いい加減にしてください。ニーナ譲が怖がっているではないですか…。」

「なんだ…、私は単にこの美しいお嬢さんの話が聞きたいだけだよ。まったく…、セナもヘイヴンも目の色を変えて…、ふふ…若いってのは良いものだな…。」

「何を言いたいか分かりませんが、茶を飲んだらお戻りください…、仕事が待っていますよ。」


「まったく…、ヘイヴンからもなにか言ってやってくれ。 相変わらずつまらんヤツだ。君もそう思わないか?」


 国王はニーナの方に優しい視線を送る。ニーナはふっと笑う。

その笑顔になぜか国王は目を奪われる。


「何か変わった治療法を使うとか…、師はいるのか?」

「…はぁ、私を育ててくれたじじ様に色々と教えて貰いました。」


「じじ様…? 名を聞いても?」


「父上! 何を? どういうことです?」


「お前はうるさくてかなわん…、そろそろ行くかな。

ニーナ…あちらに温室があってな、見せたい花があるんだが…どうかな?」


 国王が自ら町娘を案内するなど…、この異様な行動に皆が息をのむ。今や視線はニーナに集中している。


「…是非、ご一緒させてください…。」


ニーナの震えは止まっていて、その目はどことなく狩りに行くときのように鋭い。


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