第28話 嫉妬の色

 あの茶会からニーナは元気がない。王太子という存在がそれ程恐ろしかったのか?

それとも他の理由…。あまり考えたくない理由にヘイヴンは頭を抱える。


「ニーナ、遠乗りに付き合わないか? 気晴らしにはちょうど良いぞ。」

「…そうですね。狩りも出来ますか?」


 

 二人はファンデーヌの森に行くととにした。

ニーナは久々に動きやすい恰好をして、弓矢を持つ。馬に一人では乗れないのでヘイヴンと二人乗りで行くことにした。しばらく森の中を狩りが出来ないか見て回ったが、今日は獲物にありつくことは出来なかった。


「…少しの間に腕が落ちました…。 ここの風景は素晴らしいですね、魔獣の森もこんな色をしているのかしら?」


「…帰りたいのか…?」

「……。帰りたい…のかしら? でも、今ここでの暮らしは楽しい…あぁ…ここで眠ったら…いつものすっきりした気分になれるかしら?」


 森を少し抜けた湖の畔で昼食を取るために休んでいた。

ヘイヴンが選んだこの場所は彼のお気に入りだ。ニーナをここに連れて来てこの景色を一緒に見たかった、一緒に美味しいものを食べて、一緒に寝転がりたかった…。これはもう揺るぎがない気持ちだ。


「ニーナ、ここに…、いや、俺とずっと一緒にいてくれ…。ここが嫌なら俺も一緒にどこへでも行こう…。」


 風と共に木々が揺れる音、眩しい緑、ヘイヴンの熱い眼差し。すべてがニーナの心を揺さぶる。


「…ヘイヴン、私にはすべきことがあります。…今はそれしか言えません。でも…、私を待っていてくれる?」 


 真剣なニーナの眼差し。ヘイヴンはそっとニーナの頬に触れる。



 ニーナに頼まれてセナに会う約束を取るべく手紙を出す。 ニーナは会って話をしたいとしか言わない…。

 ヘイヴンは会って何が話したいのかなど聞けない…、こんなに自分が臆病だったとは…。あの二人の目線が交わるのをあの茶会で何度も感じた。そのたびに心は乱れ、おかしくなりそうだった。感情が抑えられなくなり、ニーナを抱きしめてどこにも行かせないように…、あの白い髪に顔をうずめ、頬に触り、唇を…。そんなあさましい感情がニーナの色を侵し呪われた赤色にしていくような…、狂ったような感情…。

こんな自分をニーナはどう思うだろうか? 嫌うだろうか?




 登城の日はすぐに来た。 ヘイヴンのエスコートでセナ主催の友人だけのお茶会という形だ。

今日のニーナはじじ様配合の茶色の髪色だ。ニーナは色が分かるようになってから白色にしていない、自分が他の者とどれだけ違うのが知ってしまったからか?

 ヘイヴンも自分の瞳の色が嫌いだった。しかし、ニーナがこの瞳の色を美しいを言ってくれた。それだけで認められ、誇らしい気分になった。

白い色はニーナに一番良く似合う、白い髪をなびかせ森の中を思いのままに行く彼女は美しい。それこそがヘイヴンの好きなニーナなのだ。早くありのままの姿のニーナが見たい…。







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