第27話 カラフルなお茶会

 今、フロンデース邸のバラ園を望むガゼボではお茶会が開かれていた。

 

 このお茶会には、

当伯爵家三男のヘイヴン、シンプルな服装で、整った顔立ちに赤い瞳、銀色の髪は瞳を少し隠すように顔にかかっている。

 隣国からやって来た回復魔法士だと言うニーナ、人間離れした美しさ、今日は美しい金髪の髪をそのまま垂らし、ウエーブがかった髪は光に当たり輝いている。

 そして、漆黒の髪、金色の瞳、間違いなく王族の血を示す色をまとっているセナ、ヘイヴンと同じく服装はシンプルだ。とは言え彼のたたずまいは気品溢れ、顔立ちは彫刻のようだ。このシンプルな服装が形式ばったお茶ではないと示し、挨拶もそこそこにお茶会が始まった。

 しかし、この顔ぶれである…、使用人一同と護衛の者はこの世と思えない光景にウットリとしている。


「ニーナ、これを…。」 

「…ありがとう…。」 


 ヘイヴンがニーナの髪に赤いバラを差す。ヘイヴンの優しい笑顔にニーナは頬を染めている。


「ニーナ殿、この前と雰囲気が違いますね。ああ、このは私のために?」


 セナがの瞳を優しく輝かせる、そしてヘイヴンに向けニヤッと笑う。

ヘイヴンは思わず舌打ちをする。

こんな二人の幼い駆け引きにもちろんニーナは気付かない、目の前のお菓子に目を奪われている。


「もう体は大丈夫なのか? 旅の疲労からと聞いたが…。」

「…はい、ゆっくりと休みましたので…。」 


 顔を上げると、金色の瞳がこちらを見ている。あの日見た瞳だ。その輝きに目が離せなくなる…。何かが心に直接入って来るような感覚に陥る。

 セナの方もニーナから目がそらせない…胸が搔きむしられる感覚、流れ込んでくる得体が知れない何か、…頭が混乱する、逃げたいが逃れられない…。


 二人は見つめ合う、まるで時が止まったように…。

ついにニーナが目をそらし、金色の瞳が見えないようにテーブルに並んでいる色とりどりのお菓子に目を向ける。セナのほうもハッとして目をそらす。

 ヘイヴンは体中で何かを察知している、これは嫉妬なのか…?


「…で、セナ。今日は茶を飲みながら世間話ということだな。」

「う~ん…、そうだな。まだ様子見といったところだな。」

「はぁ、王城に呼ぶのは少し待ってくれ、彼女はまだ何も分かっていないんだ。」

「難しい所だな、気が変わられても困る。お前はどうしたいんだ、ヘイヴン?」


 答えが出ないまま取り留めもない話をする、その間にニーナはほとんどのお菓子を食べつくす勢いだ。


「…さ、俺はそろそろ行くかな。 

ニーナ譲、今日は楽しかった。また近いうちに会おう。」

「はい、ヘイヴン様のお友達に会えて楽しかったです。 セナ様?」


「セナは家族や親しい友人が呼ぶ愛称だ。 

私の名は、アルデンセナ・ソロ・ファンデーヌと言う、

お見知りおきを、お嬢さん。」


「…ファンデーヌ…? …この国の…?」


 ニーナは驚きを隠せないでいる、ファンデーヌの名を持っているのだ、驚くのは当たり前だ。それにしても、過剰なほどにニーナは全身はガタガタと震えさせ、今にも倒れそうになっている。


「ニーナ、大丈夫か?」 


 ヘイヴンが心配になって聞くがニーナには聞こえていない。ただただ、下を向いて震えている。セナも心配したが自分がいない方がいいだろうと思いその場を後にする。

 セナが帰ると、ニーナは席を立ちガゼボから駆け出し部屋に戻ってしまった。ヘイヴンの心配する声には振り向きもせず…。


 ヘイヴンは胸騒ぎと大きな不安の波に押し流されそうになっていた。




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