第26話 報告
王太子殿下の執務室で話を始める。
ヘイヴンはどのように負傷し、どのような治療法で、どのくらいの時間で治ったのかなどを報告する。詳細は書面にまとめていたのでそれを提出する。王子はさっと書類に目を通す。ざわつく胸の内を悟られないように一連の作業のように進めていく。
「それで?その娘、この国に留まるか? この治療法だと長く留まるのが必要だ。
しかし、面白い…。欲しいな。」
ヘイヴンはこの言葉にカッと熱くなる。
「…で?あの後どうなった?」
「…はぁ、もう体調は良いようです。 その…、何があったんですか?」
「何が…とは? ああ、顔色が大層悪かったな…倒れるほど体調が悪かったのか…。
…それにしても、美しかったな…。」
セナは感情を顔に出すことは滅多にしないが、この時口元がかすかに緩やかになったのをヘイヴンは見逃さなかった。
「ニーナと話がしたいですか?」
「フフ…。そうだな、まずは一緒に茶でも飲むか?」
セナは幼馴染のことを良く知っている。ヘイヴンがニーナに恋していることはお見通しだ、しかし彼自身は恋というものが分からない。自分には心自体がないのではないかと思う時がある。
あの日、バラ園でニーナを見た時瞬間、何かが胸を突いた、暖かいような、懐かしいような何か…。それが何かはまだ彼には分からなかった、もう一度彼女に会って確かめたいのだ。
この胸のつかえが何なのかを…、
彼女を知りたかった。
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