第22話 大きくなる悩みの種
ヘイヴンは少し休むと、家族と団欒してから書斎に行って少し仕事を片付けることにした。昼頃に着いたが、今はもう薄暗くなってきている。
まずやらなくてはならないのは…、例のツテに手紙を書くことだ。ヘイヴンの幼馴染であるがこの上なく厄介なのだ。
「いや…、あいつならもう俺が王都に着いたことくらい知っているか…。直接話すか。」
トントン…
「…なんだ?」
「ヘイヴン様…ニーナ様がお目覚めになりましたがいかがいたしましょうか?」
「ああ、風呂と身なりを整えるのを手伝ってやってくれるか? ドレスは適当に選んでやってくれ。」
執事が出ていくとヘイヴンは大きな溜息をつく。椅子の背に寄りかかり目をつむる。
ここ数週間、ゆっくり自分のことを考える暇がなかった。騎士としての仕事、鍛錬、やらねばならない事はたくさんある…、無理やり騎士の自分に気持ちを押し戻そうとする、しかしニーナが目に入るたびに心がかき乱され、他のことが考えられなくなってしまう。おかしくなりそうだ…。
トントン… しばらくしてニーナの部屋を訪れる。
「…もう、準備は出来たか?」
ドアを開けてニーナを目にしたとたんヘイヴンの心は確信した。もうこれは観念するしかない…。
「…ヘイヴン? なにか変かしら?」
「いや…、とても良く似合っているよ、顔色も良くなったね。」
「はい、お化粧をしてもらいました。初めてなので変な感じがします…、大丈夫でしょうか?」
いつもは白い肌で顔色がすぐれないように見えるニーナ、今は薄い頬紅に口紅をつけ整った顔立ちをより美しくしている。 髪の毛は奇麗に半分を上で結ってあり、髪色に合う髪飾りをしている。ドレスの選択も素晴らしい。ふとメイドを見ると、やりきりました!と言わんばかりスッキリとした顔をしている。うちのメイドは優秀だな。
「ニーナ、腹は空いてるか?夕食の準備は出来ている。…それとも、屋敷を案内しようか?」
「…実は…、先ほどおやつを頂きまして…、オホン…運動がてらお屋敷の中をお散歩したいのですが…。」
「フフッ…、何をそんなに食べたのだ?」
「…だって…、見たことのないお菓子がいっぱいで…かわいくて美味しくて…、つい止まらなくて…。」
「そうか、そんなに美味いなら今度俺も一緒に食べてみたいな。」
「はい!」
屋敷の中をだいたい案内してから庭を案内することになった。
「今はバラが見頃なはずだ、バラ園に行けば良い香りに包まれるよ。」
「楽しみです。…あ、もう香りがしてきました…。」
その時、執事が声を掛けてきた。何やら急事のようだ。
「…すまない、少しやることが出来た。メイドに案内してもらってバラ園にいてくれ、何か飲み物を用意させる。」
執務室に入ると、執事がそっと今届いたと言う手紙をヘイヴンに渡す。
手紙の刻印をみて思わず嫌な顔をする。
「…くそっ!セナのやつ!!…もう来るのか?もう少し待てないのか…、フゥ…。
王太子殿下を迎える準備をしておけ!!!」
王太子殿下、幼馴染であり、例のツテ。ファンデーヌ王国の唯一の後継者であるアルデンセナ・ソロ・ファンデーヌは、幼い頃からヘイヴンの遊び友達であり、城を抜け出してはヘイヴンの屋敷にふらっと来ることはしょっちゅうだ、自分の立場を理解してからは来ることを手紙で知らせるようになったが…、それでもいつも突然だ。しかも、面倒ごとが嫌いな彼はいつも裏門から入り庭を抜けてくる。
「くそっ! バラ園…。」
ヘイヴンは手紙を放り出し走り出す。
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