第21話 ついに手にする

 王都に着くと、まずはヘイヴンの実家であるフロンデース伯爵邸に行くとにした。

どこに行くとしても、ヘイヴンが女性を伴なっているとなると大騒ぎだろう。

 両親には新しい回復魔法士を連れて行くので、しばらく世話になると手紙で知らせていた。


 馬車が着くと使用人一同がもう出迎えている。 

そして、ヘイヴンが馬車を降り、続いて女性がエスコートされながら降りてくると一同は驚きを隠せない。そこへ、ヘイヴンの両親もやって来た。


「父上、母上。今帰りました、しばらくお世話になります。 こちらが手紙でお知らせしておいた回復魔法士ニーナ譲です。」 


淡々と話すヘイヴン。皆の視線がニーナに注がれていることは分かっている。


「ああ、長旅ご苦労だった。ニーナ譲、よく王都までいらしたね。ヘイヴンの父、ドレイク・フロンデース伯爵だ、こちらは妻のエリーゼ。まあ、まずはゆっくりと休んでください。」


ニーナはまるで王都にいるご令嬢のように颯爽とお辞儀をした、一同…、ヘイヴンも含めてその仕草に見とれてしまう。


「初めまして。ニーナと申します。しばらくお世話になります…宜しくお願いします…。」 


少しぎこちない挨拶に何故かヘイヴンはホッとする。


「いやあ! なんとも美しい…お辞儀をするね! ただの回復魔法士ではないのは確かだね~。」 


突然後ろから来たのは、伯爵家長男のアルベルトだ。後ろからヘイヴンに抱き着き体をジロジロと見ている。


「ヘイヴン!怪我をしたと聞いたが…?どこを怪我したんだ?」 

「兄さん!…相変わらずですね、挨拶くらいしたらどうですか?」

「アハハ!すまない。こんにちはニーナ譲。ヘイヴンの兄のアルベルトです。弟が世話になったようだ。あぁ、…これからもよろしく頼むよ。」


そう言ってアルベルトは意味ありげな視線をヘイヴンに向ける。



  ニーナには客室が用意されていて、その部屋の広さ、家具の豪華さにニーナは圧倒される…。もちろんこんな豪華な部屋は初めて見る。ヘイヴンに案内されながらおずおずと部屋に入る。


「…ヘイヴン…、こんな素敵な部屋…、私が使って良いの?」

「ニーナ、君は大事な客人だからね、遠慮なく使ってくれ。 それに、ほら…見てごらん!」 


 ニーナはヘイヴンの示す方に振り向く。

そして、そこにあるベッドに気付く。

豪華な天蓋が付いた3人くらい眠れそうな大きなベッド…、そこには白く盛り上がった布団がセットされている。それは見たこともない程盛り上がっていて…、まるで雲!ニーナの目は輝き、そのフワフワの中へすぐ飛び込んでいきそうだ。


「…あの…フワフワしているのが…羽毛…なの…?」

「ああ、ニーナのために用意させた。フフッ…寝てみるか?」


ヘイヴンがそう言うのと同時くらいにニーナはベッドに飛び込んだ、ボフンッと音をたててニーナは羽毛布団に沈んだ。


「うふふ…、本当…曇ってきっとこんなね。」

「どうだい?」

「こんなベッド…夢のよう!! もうここから出たくないわ!」

「それは困るなぁ…、ニーナに案内したい所がたくさんあるんだ、一緒に行ってくれるかい?」


「…う~ん…考えておくわ…。」

「…じゃ、しばらく休むといいよ。では、後で。」


もうウトウトし始めているニーナを後にヘイヴンは部屋を出る。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る